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脚質とは血である

ロードレーサーを脚質という括りで一纏めにすることは、人の定型化のようで好きになれません。

これは、出力を選手の価値のように扱うことも同様です。

人は意思次第で如何様にでも変われます。

これは、トラック競技のメダリストたちが、世界一過酷なツールドフランスを制することで明らかとなりました。

今回は、以前ロード競技を『誰にでもできることがある』と説いた上でそれぞれがもつ脚質とはなんたるかを考えていきましょう。

稀有な体質

選手のパフォーマンスを測るプロトコルは、数多存在します。

我々の測定プロトコルは、AIS(オーストラリア国立スポーツ研究所)と同様のものを用いています。

詳しい説明は省きますが、ステップ負荷でワンステップ5分、ケイデンス指定、インターバルはありません

血中乳酸値2mmmol/lをLT、4mmmol/lをOBLAとします。

特別なことはなにもなく、ごく普通のものです。

ただ私の場合、スタートの乳酸値がすでにLTに近似しているパターンが多く、測定ポイントをずらす手段がとられます。

これを疲労とみるか、体質とみるかは難しい判断が求められます。

測定のなんたるか

基本的に自転車エルゴメーターを用いる測定がほとんどならば、自転車選手である以上、動作特異性の問題はさほど考慮されません。

スピードスケートの領域では、同一強度(%VO2MAX)では自転車駆動よりもスケート滑走の方が高い血中乳酸濃度を示すことが報告されており、競技成績は本来の動作における無酸素性機構の発現する出力と関係することが示唆されています。

指標として、LTとOBLAをトレーニングに用いることは、非常に賢明な選択です。

しかし、それらの指標を選手の価値のように捉える指導者を私は信用していません。

乳酸カーブが示すもの

前置きが長くなりましたが、以上をふまえて一般的に認知されている『脚質』というものに当てはめていきましょう。

クライマー

非常に高いLT出力とOBLA出力を示すように思います。しかし、OBLAを超えると間もなくオールアウトがやってくるようです。その際の最大血中乳酸値も低い値を示します。

スプリンター

個人的には、スプリンターには様々な可能性が隠されているように思います。オールアウトまでのパフォーマンスはそれぞれですが、最大血中乳酸値が非常に高い値を示すようです。

パンチャー

イメージ的にはスプリンターに近いですが、VO2MAXの領域が優れている、あるいは無酸素域が非常に強いこともあります。測定上はOBLAを超えてからも数ステップ粘れる、最大血中乳酸値も高い傾向にあるように思われます。

ルーラー

高いLT出力とOBLA出力を示しますが、体重比からクライマーと区別されているように思います。TTスペシャリストはTT動作でも高いパフォーマンスを維持するルーラーの様なものと捉えられます。

脚質というステレオタイプ

人を限られたパターンに別けようとすることは、人間の本能なのでしょうか。

少なくとも私たちがわかっていることは、スプリンターが登りでクライマーのハイペースに耐え抜き、最終的に打ち負かすことがあるという事実です。

あえて自分を型にはめてみたり、型破りを演じてみたりするのも、また自転車の楽しみ方なのかも知れませんが。

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