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運動会の朝に

6時、土曜日の朝。
まだ鳥の声しか聞こえない住宅街に空砲が響く。近くの小学校で今日は運動会が開かれるらしい。

練習の成果を発揮させ、時には闘い時には協力しながら、子どもたちが汗と魂をぶつけ合う。見守る大人たちの声援にも熱が入り、会場はますます盛り上がりを見せる。

朝からそんな想像をして、心が和んだ。

賑やかで、華やかな運動会。

まわりの人たちの話を聞いてみると、コロナ禍で失っていた光景を少しずつ取り戻せているようでよかったと思う。


私は運動が苦手で、運動会が毎年憂鬱な子どもだった。
でも思い出に残っている景色は、結果にとらわれた悔しさや嫌な感情ではない。

団体競技を頑張れたこと、お弁当を食べたこと、友達と笑い合ったこと。

青空、響き渡るアナウンス、色とりどりの旗やゼッケン、大玉やカラーコーン。

クラスメートを応援し、友達が出れば手を振った。同じチームの知らない学年の子にも声援を送った。

普段は教室にあるはずの固い木の椅子が校庭の砂の上に並べられている景色に不思議さを感じたり、靴に何度も砂が入り込んで友達同士で肩を貸し合ったり、校庭いっぱいに吊された手描きの旗やスローガンが書かれた白い布が、青空の下で風にゆらめいて、何だか綺麗だなと思ったり。



憂鬱な思いで朝を迎えた子どもたちへ。

勝負の結果なんて気にせず、全力を尽くすことに集中して、終わったら思いっきり自分を褒めてほしい。

頑張っている姿を誰かが見てくれている。
全力を出せた、ということが間違いなく自分の自信につながって成長の糧になる。

それに、運動会の景色は競技だけじゃないよ。

だから安心して行ってらっしゃい。
熱気を、緊張を、達成感を、存分に楽しんで来てね。
あなただけの運動会を、心に切り取ってね。


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