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「コミュニティ」


「Community」を「コミュニティ」と訳すべきなのか「地域社会」はたまた「地域」「地方」とすべきなのか、悩むことが多い。


『小学館 ランダムハウス英和大辞典』は

community (n)
(1)(しばしば文化的・歴史的遺産を共有する)地域共同体[社会],生活共同体;市町村(などの自治体),コミュニティー(の人々),むら(群,村)
(2)((1)のような共同体のある)地域,地方,土地

…と説明している。


「コミュニティ」というカタカナ語もかなり浸透しているとは思うのだけど、読者層によっては抵抗が大きい場合もある。

ウェブ辞書の『デジタル大辞泉』は

「コミュニティ」
居住地域を同じくし、利害をともにする共同社会。町村・都市・地方など、生産・自治・風俗・習慣などで深い結びつきをもつ共同体。地域社会。

と定義している。

こちらのほうが、「利害をともにする」という点が明確にされている点でランダムハウスの英和辞典よりも精確ではあるけれど、たとえばオンラインのコミュニティといった居住地域にむすびつかない集団までは含まれないようだ。

英英辞典Merriam-websterのオンライン版の定義には、まず簡潔に
a unified body of individuals (個が集まって一体となった集団)
とあり、それがどのような集団であるかについてa)からf)までの説明がついている。

Definition of community
1 : a unified body of individuals: such as

a) the people with [common](https://www.merriam-webster.com/dictionary/common) interests living in a particular area
b) a group of people with a common characteristic or interest living together within a larger society
c ) a body of persons of common and especially professional interests scattered through a larger society
the academic community the scientific community
d) a body of persons or nations having a common history or common social, economic, and political interests the international community
e) a group linked by a common policy
f ) an interacting population of various kinds of individuals (such as species) in a common location

a) 特定の分野に共通の利害関係・興味をもつ人間
b) より大きな社会の中で、共通の特徴や興味の対象を持ち、共同生活をしている人間集団(高齢者用住宅、修道院など)
c) より大きな社会の中で、共通の職業的専門分野などを持つ人間のグループ(科学界、各学界など)
d)共通の歴史または社会・経済・政治的利害/関心を持つ人間または国の集合
e) 共通の政策により結びついている集団
f) 共通の地域に存在し、相互に関与しあうさまざまな個体の集合(動植物種など)

この定義をみると、「community」がかなり幅広く複雑な言葉であることがわかる。

地域・地方といった場所
利害関係・興味・信条
特徴

…などを共有する集団であり、人間だけではなくて国などのメタ集合や動植物の集合にも使われることがあるのだ。

上記のMerriam-websterの定義を見ると、集団の成員をつなげる要素は、地縁よりも利害や特徴のほうが強そうだ。

つまり、「コミュニティ」のなかには、はっきりとした意思をもった「個」がより集まっている

そのような集団をあらわす言葉は、やはり、日本語にはないのだ。

「村」「くに」「さと」といった集団は、土地や血縁にむすびついたもので、それもコミュニティの一形態ではあるが、一形態にすぎない。

文脈によっては「地域社会」とするほうが良い場合もあるけれど、「地域社会」では「場所」にひもづけられた集団という意味あいが強くなり、「コミュニティ」の構成員がもつ個々の意思と、積極的なかかわりあいのニュアンスが薄められてしまう気がする。


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