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編集者・ライターの役割を次のステージへ┃【Vol.0】これからの編集者・ライターに求められる力


「編集」「ライティング」は教えられない?


はじめまして。ビジネス書出版社で編集・ライタティングをしている久保木といいます。このnoteでは、情報が溢れる社会の中でも価値を持つコンテンツのつくり方について、僕なりに考えていきます。

編集者やライターと言えば、書籍や雑誌をつくる人を想像すると思います。僕も以前はビジネス書の編集や著名人へのインタビューライティングをしていましたが、いまは少し違います。

僕たちが提供しているのは「企業内編集部」というサービスで、ざっくり言うと企業の情報発信を支援しています。書籍だけではなく、オウンドメディア、ブログ記事、SNS、メルマガ、ホームページの「代表者メッセージ」、広報誌や社内報などの制作です。

書籍にしてもその他の媒体にしても、人の想いや考えを世の中に伝えるために必要なのは、しっかりとした編集力・ライティング力です。ただし、業界の慣習として、こうしたスキルは「経験して覚えるもの」という意識が強く、体系立てて教えるシステムが確立されていません。僕もそうして育ちましたし、新人に教えるときにも「とにかく、やってみて」となってしまいがちです。

でも、改めて考えてみると、「教えられない理由もないな」と思いました。せっかくやる気や適性はあるのに、教え方が悪いせいで成長できない、あるいは別の道へと進んでしまう人がいれば、業界全体の損失です。

そこで、自分なりにマニュアルを作ることにしました。編集・ライティングという広い概念のすべてを網羅することはできませんが、人の考えていることを引き出してコンテンツにするということなら、ある程度は体系立てることができる。ビジネス書・実用書の編集者やインタビューライターのための、実践的な内容を書いていこうと思います。

編集者とライターに求められるスキルは同じ


具体的なノウハウについては以降の記事で書いていきますが、今回はそのスタートに、そもそも編集者・ライターの役割は何かを考えていきます(前述のように、ビジネス書やインタビュー記事を想定しています。漫画や文芸、動画や音声の編集、それに「作家」と呼ばれる人たちの執筆では、また別のノウハウや考え方があると思います)。

まず、編集者とライターの違いについて。書籍やメディア記事をつくる上で、よく「編集者とライターの違いは」「編集者が自分で書くと客観性がなくなる」「ライターが文書を書くなら編集者は何をするんだ」と言われます。結論、僕はどちらも求められる力は同じだと考えています。正確に言えば、同じになってきています。

語弊を恐れずに言うと、「編集」は誰でもできる仕事です。書籍の場合であれば、ライターさんや著者さんの書いた原稿の誤字脱字をチェックし、デザイナーさんにデザインを頼んで、DTPの方にゲラを組んでもらい、印刷所に渡せば本になってしまいます。

杜撰な編集の本が世の中に出ても、読者の評価が編集者に直接届く機会は多くありません。自分のつくっているものがどれだけの品質なのかもわからず、反省する機会も少ない。そうして、本質的な編集力を持たないままベテランになる編集者もいます。

「これからはAIが編集してくれる」という考え方もありますが、出来上がったコンテンツの目利きができなければ、やはり商品にはならないでしょう。それに、現状、「調べて書く」タイプの文章はAIでもそれなりの品質のものができますが、インタビュー記事の場合は、まだまだ不十分です。見た目はそれっぽく上がってきますが、読みづらい。AIを活用する・しないに関わらず、読者の興味を引く導入、明確な論理展開、重複の削除、自然な文脈など、ルール化し切れない部分でのライティングスキルが必要です。

一方で、「書くだけ」のライターは、早晩仕事を失います。テープ起こしをそのまままとめたようなアウトプットは論外として、例えば「1文を短く」「指示代名詞を少なく」「同じ単語を繰り返さない」といった細かなスキルもAIに指示できます。プロの書き手として必要なのは、構成力やコンテンツを引き出す力、読者の興味を知る力へと変わっています。

いまはライティングに膨大な時間が必要なため、「編集」と「ライティング」は切り離されていますが、AIの登場でその差はなくなっていくと思います。効率の問題もありますが、情報が溢れる中で、「ただ書かれた文章」は価値を持たなくなっていく。ライターが不要ということではなく、「編集力」+「ライティングスキル」によって生み出されたコンテンツにしか、価値はなくなっているということなのかもしれません。

AI時代だからこそ価値を持つスキル


では、編集者やライターにとって、これからどのようなスキルが必要になってくるのか。定義するならば、次の3つだと思います(書籍などでは「企画」といった側面もありますが、ここでは活用範囲を広くとらえ、コンテンツ制作全般について考えます)。

①本人も気づいていない価値あるコンテンツを引き出し、
②適切に整理(分解・分類・順番)し、
③飾り付けをする

①について、著者やインタビュイーは、必ずしも自分の頭の中にあることが他人にとって面白いことだとは思っていません。あるいは、自分の考えていること自体を自覚していない場合もあります。編集者・ライターは、社会との接点を見極めながら、「この人だけが持つ、世の中の人が知りたい考えや想い」を引き出していきます。

②は構成力の部分です。日本語は間違っていないのに、なぜか読みにくい文章があります。さまざま原因がありますが、そのほとんどは整理が不十分だからです。聞いたこと、書かれた文章をそのままコンテンツにするのではなく、細かく分解し、取捨選択し、内容ごとに分類し、論理破綻を起こさない順番に並び替えます

③は、主にタイトルや見出し、「はじめに」、リードの部分です。これらだけでも本文の内容が把握できる程度の要約の役割を持たせつつ、読む人の興味を引き出すための飾り付けを考えます。

この3つを一言で言えば、「価値あるコンテンツをわかりやすく世の中に届ける」です。これさえできれば、自然と読む人にとっても面白いコンテンツになると考えています。それらのつくり方について、次回から具体的にお伝えしていきます。

まとめ


・編集者もライターも必要な力は同じ
・コンテンツを引き出し、適切に整理し、飾り付けをするスキルを覚える
・それができれば、読む人にとっても面白いコンテンツをつくれる




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