イノセント・デイズ

※この本は絶対にネタバレせずに読んでほしいので、未読の方は読み進めないでください



呼吸をするのが苦しくなるほどの後悔をしたことはありますか?

イノセント・デイズ  早見和真


物語は、放火殺人の容疑者、田中幸乃の死刑判決が下る場面から始まる。

覚悟のない十七歳の母のもと――――。
養父からの激しい暴力にさらされて――――。
中学時代には強盗致傷事件を――――。

判決文のそれぞれの言葉が章のタイトルになっており、実際の田中幸乃が幼少時代から今に至るまで、どの様な人生を歩んできたかが明らかになってゆく。読み進めるほど、世間のイメージや判決文と、過去の彼女の姿が乖離していく。
実際の彼女は純粋すぎるがゆえに傷つけられ裏切られ続け、死にたくても死ぬ勇気が無く、たまたま降ってきた死へのチャンスをつかんだだけだったのだ。
だが、そこまで世の中に絶望してしまった彼女を救おうと、一部の人たちが動き出す。
実刑の日が近づく中、とうとう真犯人が明らかになり、彼女を救う一筋の光が見えたところで刑が執行される。



とてもこんな数百文字のあらすじでは物語の深い部分を表現しきれない。

「彼女は死ぬことを願っていたから、これは救いの話なんだ」と受け取る人もいるようだが、自分はとてもそんなふうには思えなかった。

あと少しで助かる、もう少しで悪いことばかりだった彼女の人生が好転する、彼女を救おうとする人たちの努力が報われるはずだったのに、それが叶わず、彼女は死を迎える。

登場人物も、読者も、彼女を生かしたいのに間に合わない。

この時の虚無感、絶望はライブ後のあの気持ちと同じだ。


僕が一番嫌いな感情、「後悔」


アーティストのデビューしたての姿を知っていて、そのうえでステージで輝いている姿を見ると、その間の日々に思いをはせ、どれだけ努力したのだろう、そして、自分はなぜ努力しなかったのだろう、同じだけ努力していたら同じくらい成長していたはずなのに、、、
でも過ぎた日々はもう戻らない、、、

というアレ(どれ?)。


今回の物語は、傷つけられ続け裏切られ続け、でも今度こそ彼女を本気で思う人がいて、そのための努力があって、何よりも自分は、彼女に幸せが訪れてほしくて、世の中にはもっと楽しいこともたくさんあると知ってほしくて、報われてほしいと願った。でもそれがあと少しで届かなかったとき、起きてしまったことと、もっとがんばれたはずの、もう取り戻せない日々に後悔してしまう。

実際小説の中にできることは無いのだけれど、そういうときの気持ちを思い出させられて苦しい。


結局後悔しないためには、後ろを振り返っている暇なんてなくて、一日一日、一瞬一瞬を全力で生きるしかないのだろうけど。

最近サボっているけどそろそろビジネス書読まないと。
後悔しないためにも!


自分が書く感想文っていつも物語内の暗い部分を抜き出して自分の人生と絡めて、最後には前向きな言葉で締める形になっている。しりとりを毎回同じ言葉にもっていくアイドルの特技みたいだなと思った海の日でした(笑)。

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