「本の読み方」が知りたい

小説を読んで、自分が感じた印象と、あとがきや解説で述べられている内容が違うことがよくある。自分の理解が浅すぎるせいなのだが、もっともっと著者が書きたいことや文章の一つ一つをよく理解したいと思う作品にまた出会った。


遠い山なみの光 カズオ・イシグロ


もうすぐ子供が生まれる悦子は、近所に引っ越してきた母娘:佐和子と万里子と関わるようになる。
到底信用できないアメリカ兵に自分と娘の未来を託す佐和子。
戦前に国に尽くしたことを誇りにしている義父と、その父を疎ましく感じる夫:二郎。
時代の変化に戸惑いながらも、懸命に生きた人々を描いた作品。


というように、皆が苦しみながらもなんとか自分の存在や生き方を正当化しようとしている中、主人公はお腹に子供がおり、現状に幸せを感じていてまともな感覚をしているように感じていたのだが、、、
解説を読むと、どうもそういうことでもないらしい。

日本で家庭を築いた悦子は、他者から見たら明らかに信用できないアメリカ人とともに海外で暮らそうとする佐和子に反発する。本当に信用できるのか、子供の万里子はどうするのか、幸せなのかと。

だが数十年後(現在)、悦子は海外で暮らしており、最初の夫:二郎とは離婚し、最初の娘を自殺で失っていたのだ。

あの時の佐和子がしようとしていた生き方を悦子はなぞり、子供はどうなるのかとの心配通りに、自分の子供を失っていた。

全く気付かなかったー!
悦子と佐和子が対応していたなんて。

ほかにも、全く意識はしていなかったが、物語の裏には多数のテーマがあったらしい。

・女性の自立
・価値観の変化による典型的な犠牲者
・激変する時代に抗する希望
・フェミニズム、あるいは母娘関係

こういうのって、どうすれば気づけるのだろう。そもそも気づくべきことなのだろうか。
解説するときの小説の読み方と、楽しむときの読み方は違うのかな。

別に解説は著者の思いと同じとは限らないし、正しいのかもわからないけれど、解説的な読み方ができることでより作者の意図が正しく理解でき、物語を楽しめるのならぜひ身につけたい。

「本の読み方」が乗っている本、オススメを教えてください!

ちなみに、あくまで解説が正しい前提で書いたが、著者は本当にそういう意図で書いたのだろうかと疑問に思う部分も多くあったし、希望の物語らしいが、どちらかというと恐怖を感じる場面が多かった。

万里子がずっとおびえていた女は誰だったのか。
その女が子供を水につけて殺し、それが万里子のトラウマになっていたわけだが、佐和子は最終的に、万里子がかわいがっていた子猫を、女と同じ格好で殺し、万里子に再びその光景を見せることになる。
また、万里子はなぜ暗闇であった悦子におびえていたのか。
悦子は万里子に会ったときに何を手に持っていたのか。

僕はホラーやミステリーのような感覚を抱いたけれど、著者が本当はどんなつもりで書いたのだろうか。
まさかとは思うけれど、本当はミステリーのつもりで書いたものが、別の部分の評価が高まってそういうことにしているなんてことも、、、



無いか。

でも、もしも会う機会があればぜひ聞いてみたい。

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