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詩集#4

19
第四詩集です。
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記事一覧

【詩】解離

着たい服を着て、小洒落た食事に出掛け 目の前の愛する友に、やわらかく微笑みかけながら 頭の…

【詩】薔薇の花束

かつて、私の肺には薔薇が咲いていた 赤いのも、白いのも、黄色いのも咲いていた 世界の美を吸…

【詩】トロッコ問題

線路を走るトロッコ一台 制御不能のトロッコ一台 トロッコの行く手に母親ひとり 分岐の先には…

【詩】耳栓

「最近は、乾杯のときにビールを強制しちゃいけないらしいよ」 「めんどくさい世の中になった…

【詩】海の彼方

なぜ、そうまでして”これ”をせねばならぬのか なぜ、そうまでして”ここ”に居続けねばなら…

【詩】清明

一夜ごと 一夜ごと 花は咲き 花は増し 空を 木々を 世界を 幻想の色に染め 白昼を 宵闇を…

【詩】少女

少女はひとり 夜明けの緑の丘を駆ける 薄衣の 花柄のドレスで 緑の丘を駆ける 駆ける 群青の空は 下方から オレンジ色に燃え始め その日の最初の光が 世界を覆ってゆく 少女はひとり 町を見下ろす丘の頂で 胸に手を組み か弱き声で 歌う 誰にも知られず 誰にも聞かれず か弱く細い その歌声は 夜明けの光に包まれる 熱せられゆく緑の丘 大地を踏みしめる両の足 声はしだいに 体の奥から溢れ出し 溢れ出す声は 力を帯びて放たれる 少女は目を閉じ 体じゅうのエネルギーを 歌声

【詩】わんこそば

わんこそばを楽しめるのは 本当にやめたくなったらやめられるからだ 給仕が隙を突いて蕎麦を…

【詩】青

ある日 壊れた町の上空に 美しい戦闘機が飛んできた 鮮やかな青の戦闘機は 澄み渡る青空に 真…

【詩】分岐点

土曜日の帰り道 小学校の前の下り坂 車椅子を押している手が わざと離され やめて! 危ない!…

【詩】ごみ箱を空にする

記憶があるから生きていける けれど、記憶は平穏な生の邪魔をする あたたかく幸福な記憶は 時…

【詩】今日も最前列で

教室の一番前の席は、教師の視界に入りづらいという 一番後ろの席のほうが、目に入りやすいと…

【詩】拍手

卒業生は、ひとりひとり名前を呼ばれ アイザワショウゴくん はい! エンドウアキラくん はい…

【詩】出でよ神龍!

今年は辰年だから、神龍が大活躍するだろう こんなにも悲惨なことが多い世で それでも、きっと神龍が出てきて 願いを叶えてくれるだろう 小学校一年生の、休み時間の廊下で 男の子たちが、かめはめ波を打っていた わたしたちはみな地球人だから スーパーサイヤ人にはなれないけれど スーパーサイヤ人でさえ一人では打ち勝てない苦境のとき 必要とされたのは、名もなき我々ひとりひとりの力だった ヒーローに憧れ ヒーローになれずとも ひとりひとりに掛け替えのない小さなパワーがあると知り そし