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昔の声優を過大評価していないか

令和のこの世、アニメはドラマと変わらないほどの市民権を得ている。一昔前とは大違いである。アニメを観、ゲームをすることを堂々と言える世の中になった。喜ばしいことである。

それに伴い、アニメやゲームに欠かせない存在である声優についてもクローズアップされる機会が増えた。俳優・女優と同様にテレビに出演し、「声優の○○さんのファンです!」と後ろめたさを感じずに発言できるようになったこと、90年代のアニメ作品や声優が青春だった私には驚きを隠せないが、これも喜ばしく思っている。

私と同年代の人は時々口にする。「昔の声優は凄かった、今の声優は〜」と現在の声優について批判的な意見。だが私は昔の方が優れた声優であるとは特段思っていない。今の声優の方が演技力も優れていると考えているほどだ。声優ファンは、昔に夢を見すぎていないか。過大評価しすぎていないか。

「今の声優は声に特徴がないから、誰が誰だかわからない。昔はわかったのに」とはよく耳にする批判だ。昔の声優の第一条件は「声に特徴があること」だったのではと私は考えている。

つまり、声に特徴さえあれば声の仕事に就けた時代なのだ。今とは違う。今は特徴がある声は確かに減った。だがその分、声優の演技力は全体的に上がっている。昔の作品を観ていると、「声に特徴があるだけで、演技は別に上手くない」という声優がいることに気づいてしまった。今は聞くに堪えない下手な声優の演技というのには遭遇しない。今の声優の演技力をもっと評価すべきではないだろうか。

では、演技力が全体的に上がっている理由とはなんだろうか。
昔の声優業は、俳優が片手間に声の仕事もしているのが発祥だった。悪く言えば、俳優崩れ、俳優になれない人間が仕方なしにするのが声の仕事だったという。そこにアニメを愛する心があるのだろうか。世界観や物語を真摯に研究する心意気があっただろうか。オタクが見下された時代背景もあり、声優の仕事をしている人間本人がそもそもアニメを見下していた、というのも多かったのではないだろうか。見下して、片手間に演じているものをしっかりと掘り下げられるだろうか。

インタビュー記事などから察するに、昔の声優は今の声優に比べて、作品の研究を行なっていない。作品やキャラクターについてインタビューされた昔の声優の、頓珍漢な回答に肩を落としたことがある。研究すれば必ずしも演技が上手くなるというものではないとは思うが、その態度がファンからすれば軽んじられているように見られてとても悲しい。

声に特徴があるだけで過去仕事にありつけ、作品を深掘りすることもないベテラン声優が、今の高い競争倍率に立ち向かっている真摯な声優に偉そぶって声優の心得なんぞを語っているかもしれないと思うと、なんとも腹立たしい。若手に偉そうにする前に、もっとアニメと真剣に向き合って研究してほしい。

声に特徴が見当たらないから、演技力を磨く。出演が決まった作品を研究し、役を真摯に作り込む。今の声優が昔の声優により明らかに優れているのはここだ。

今の声優さんたちは自信を持って欲しい。あなた方の心がけは立派だ。「昔の声優の方が良かった」などという批判に負けないで欲しい。真摯な今の声優を最近知って感激した者がここにいる。

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