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なぜ、未亡人は美しく見えるのか? Chapter 1  世の中は「色」仕掛けに溢れている(9)

ピンクヘアーのご婦人の理由

好みは年齢で変化する

街を歩いていますと、たまに驚くような色に出会うことがあります。
ケバケバしい電光看板の色などではなく、すごい色に髪を染めたご婦人の頭の色です。
何ともいえない紫色ですとか、ピンクにレインボーカラーのメッシュですとか。
そんなご婦人の多くが、虎の顔が全体に描かれ、目がこっちを向いて光ってるTシャツを着ていたりしています。
不思議なことに、そんな、ある意味一線を越えてしまった髪型や服装をしている方に若い人はまずいません。
必ず50歳後半くらいから上の人がされています。
そのような環境、ファッションセンスの時代に育ったのでは?
私もそう思ったりしたのですが、考えてみますと、こんな50歳後半の女性の現象は、もう20年も30年も前から見ているような気がします。
しかし、今から30年前も、やっぱり20歳代や30歳代の女性は、そんな噛み付きそうなTシャツを着ていなかったし、インコのような髪もしていなかったと思います。
そうなると、考えられることは一つ。年齢がそうさせるのではないか。
それまでごく普通のファッションで暮らしていた方々が、ある日を境にそれでは満足しきれなくなり、髪の毛を紫にせねばどうしても収まりがつかない、そんな衝動に駆られてしまったのでは…、とも想像してしまいます。
冗談のような話なのですが、実は色の世界には充分にありえることなのです。
色の好みは、個人の趣味としての好き嫌いとは別に、年齢で好みが変化していくのです。
たとえば、0歳から1歳くらいまでの乳幼児はどんな色が好きなのでしょう。
これは何となく想像がつきそうです。
黄色、赤、あるいはピンク。いわゆる「カワイイ」色です。洋服やおもちゃもこうした色が多いように思えます。きっと子どもが喜ぶから、洋服やおもちゃもカワイイ色に配色されているのでしょう。
事実、子どもの好きな色は、さまざまな調査によっても、
「黄色」
「白」
「ピンク」
「赤」
といった色がいつもベスト4となっています。
理由はやっぱりカワイくて、気持ちがウキウキするから?
確かにそんな要素もあるのでしょうが、実はこれ、一番大きい要素は色の明るさ(明度)が最大の要因となっています。
とにかく幼児は「明るさ」を求める傾向があります。何色、というより、とにかく明るい色が好きなのです。よく新生児や乳児を窓のそばに寝かせておくと、「明るい窓の方ばかり向いてしまい、頭の形が心配…」といった話を聞きます。これは幼児が、光が大好きで、そちらを向こうとする本能があるからなのです。
これは脳の発達、さまざまなモノを目から認識できるようになっていく過程の中で登場する「光」「形」「色」の要素の中で「光」が一番優先順位が高い、あるいは最初に獲得しなければいけないベーシックな部分であるということを表しています。
別の項で哺乳類は夜行性の生活の中で、光、白黒でモノを見る能力を伸ばした、とご説明しましたが、そんな生き物としての過去も関係しているのかもしれません。
その年齢の人間にとって、一番必要な色。幼児の場合は、光に通じる明るい色を自然に「好き」と感じて、より多く見たくなるように人間の身体ができている、ということなのです。

シルバー世代が本当に好きな色

では、話は中間年齢層を飛び越えて、先ほどの、髪をピンク色に染め、虎のTシャツを着られている55歳以上のシニア、シルバー世代に目を移してみましょう。
まず見た目で判断してみますと、55歳以上のご婦人の周りには(これは男性も一緒ですが)、年齢を重ねた大人なりの黒、茶色、灰色、紫といった渋い色が多く目に付きます。そうであれば、好きな色もこうした色なのでは、と思いがちです。
しかしこれが大間違い。色に関する調査によると、このシニア、シルバー世代が一番好きな色、一番身に付けたい色はなんと「ピンク」なのです。
ピンクには、精神、肉体の両面で、若返りの効果もあり、幸福を感じることのできる色でもあります。「足りないもの」を色で補充する、といっては失礼ですが、そんなことを考えれば、シルバー世代以上の方々にこそ、ピンクが一番必要といえます。

しかし、実際には、渋い色ばかりになってしまっています。その理由は、
「自分にはこんな渋い色が似合うのでは」
「ピンクなど着たら、派手だといって笑われてしまう」
「着こなすのが難しい」
といった照れや常識が邪魔しているためなのです。好き好んで地味な色を着ているわけではなかったのです。
そんな中で、遠慮や照れを捨て、自分の好きな色に髪を染める!
と自分の好みに正直に行動した人が、冒頭に登場したピンク髪のご婦人ということになるのかもしれません。
そのようにキッパリと自分の意思に従う積極はであれば、服装も攻撃的であって当然。まさに攻撃的な虎の顔のTシャツを着こなすのも、ごく自然な気持ちの現れといえるでしょう。

20歳代が心の底で好きな色

ところで、幼児よりだいぶ年齢が上がった、20歳前後の若い人についても考えてみましょう。この世代はどのような色が好きなのか。
何か40歳代の私などが想像しますに、20歳くらいの若い人といったら、色彩に敏感で、センスもあって、とにかく派手な色、地味な色取り混ぜて、楽しみながら微妙なバランスで着こなしている、そんな気がしてならないのですが。
しかし、これが驚くことに、あるアンケートの結果、20歳代の彼らが一番好きな色は「黒」とのこと。そして無彩色といわれる「グレー」や「白」も非常に人気が高い色です。世の中で一番暗い黒。黒と白が混じったグレーと、色そのものがない白。若者は派手好きと思っていただけに、とても意外な結果です。
しかし、これにも、彼らなりといいますか、世代なりのきちんとした理由があるのです。
先ほどの幼児やシルバーのケースですと、成長や若返りのため、その世代が必要としているものを色に求める、という理由がありました。
実は20歳代の若者の場合も同じなのです。ただ足りないものではなく、足りすぎているものを「中和」する意味で「黒」やグレー、白が必要とされているのです。
若者に足りすぎているもの。それは「元気」です。

冗談で申し上げているのではありません。若者の、持てあますような、爆発寸前といえるような元気を、自分でなんとか沈静化させる。その意味で本能的に無彩色を求めるように精神が欲求するのです。
もちろんファッションで、青や赤やピンクを着ている20歳代の方というのは多いと思いますが、幼児が明るい色を求め、シルバー世代が若い色を求めるように、心の底では地味な色を心のバランスとして求めているのです。
ジャ○ーズ系の歌手の皆さんも、そんな同世代の人たちの気持ちを知ってか知らずか、必ずコンサートの衣装の中に無彩色のものを取り入れているといいます。

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