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なぜ、未亡人は美しく見えるのか? Chapter 2 「会社・お店・施設」の驚きの「色」仕掛けを解明する(6)

人は見た目が8割7分

人はほとんどを見た目で判断している

次の数字が何を表しているか、おわかりになるでしょうか?

視覚………87%
聴覚………7%
触覚………3%
臭覚………2%
味覚………1%


これは人の五感がどのような割合で使われているかを調査した数字です。
実は人間の五感というのは、どれも平等に20%ずつ使われているわけではなく、「危険」「安心」「美味しい」などさまざまな判断を行う上で、「視覚」に依存する割合がとても大きいのです。
その割合は実に87%。他の感覚と比べて視覚だけが飛びぬけて大きく、他は補助的なものである、といえるくらいの大きな開きがあります。
それにしても臭覚2%、味覚にいたってはわずか1%。
ワインのテイスティングの作業など、このわずかに合計3%の感覚を使って味の判断をしているのですから、よほどの集中力や才能が必要な作業である、ということがうかがえます。
反対に考えると、視覚の要素が大幅に介入してきたら、その情報の大きさの前に私たちの味覚からの情報や判断などひとたまりもない、ということになりそうです。
たとえば、高いお金を払って購入したワイン。視覚的にはもちろん「色」の要素があるでしょう。しかしこの場合ですとラベルの内容がきっとモノをいっているはず。
この年のこの地域で作られたワインは美味しさの保証付き!
しかも立派な値段が付いていて!
といった視覚からの知識が入り込み、その情報の上で、「やっぱり美味しいワインというのは、グラスに入れて透かしてみると色が深い(ような気がする)よね」
などといいながら(もちろんわかる方はわかるのでしょうが)ワインを楽しんでいます。こうして飲むワインは確かに美味しくて。でも本当はテイスティングの人にいわせると、あまり美味しいワインではなかった…、といったことも、五感の割合を見れば充分に考えられます。テレビの本物当てクイズなどでも、こんな意地悪なテストがよく登場しますが、大変な難問だったわけです。

ウイスキーを使った視覚と味覚の実験

たとえばこんな、ちょっと意地悪な話があります。
登場するのは、ジョニーウォーカー。スコッチの名品です。
この銘柄には高級ランクで値段も高いジョニーウォーカー「黒」と普通ランク(というのでしょうか)のジョーニーウォーカー「赤」の二種類があります。
どっしりとした黒のデザインのラベルに配されたジョニ黒。色彩学的にも重さ、高級感、大人の落ち着きを漂わせることを狙った色です。一方赤は、ちょっとした高級感を匂わせながら、元気でカジュアルな感じを与えます。
当然、色の重厚、実際に高価なジョニ黒の方が美味しいはずです。
さて、この二つを飲み比べてもらいました。本当のところはどちらが美味しく、どちらが好きと感じるか。ただし、中身だけを入れ替えて。ジョニ「黒」のボトルに「赤」、ジョニ「赤」のボトルに「黒」を入れて出されました。
結果は、多くの方々がジョニ黒のボトルに入ったジョニ赤を美味しいと判断することとなりました。
これはジョニーウォーカーを飲み比べた皆さんの味覚が今ひとつ、と言うことではなくて、正常に五感が機能していたということなのです。つまり視覚が美味しいと判断したため、味にも影響が生じたために起こったこと。視覚が味に非常に大きな影響を与えていることの証明です。

食品業界も見た目が8割7分

視覚から入る情報には、知識の情報とともに、もちろん色が持つイメージの情報も含まれています。たとえば食品業界でもこんな話があったと聞きます。
まったく同じ味付けを行った二つのハンバーグ。これをレトルトの形でパッケージし、皆さんに試食してもらいました。ただし片方のパッケージには濃い、強い色を配し、片方は白を基調とした明るい色に。
その結果、味の評価には大きく差が出ることとなりました。
濃い色のパッケージは、味が強く、ちょっと油が強い感じとの評価。一方、白基調のパッケージの方はちょっと薄味、油も控えめ。そんな評価が多く上がりました。まったく同じハンバーグがパッケージの色でここまで差が出る、ということです。
こうした視覚、特に色を中心に表現された商品は実際、皆さんの身の回りにもたくさん存在しています。
たとえばコンビニに出掛けて行ったとき、ちょっとカップ麺のコーナーを覗いてみてください。コッテリ味を自慢する商品はまず間違いなく、オレンジ色や赤、あるいは黒などが基調となったラベルのデザインがされているはずです。濃い、重い、油っぽい。その商品の特徴をまず色だけで伝えるための配色です。
それを買うこちらにしても、コテコテ背油のラーメンがさわやかな白いパッケージに入っているとなると、あまり買う気持ちにはなりません。何か気が抜けてしまいます。逆にさっぱり味を望んでいるときには、無意識のうち、オレンジ系のラベルにはあまり目が行かなくなるはずです。長い年月の上で出来上がった売る側と買う側の色に関する「お約束」ともいえるでしょう。このカップラーメンの世界で、先ほどのジョニーウォーカー逆転の実験などしたら、果たしてどのような結果となるのでしょう。

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