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【一般公開】財務分析初心者と中級者の違い

本記事は、ザイマニ財務分析ゼミで共有したレポート「第35話 財務分析初心者と中級者の違い」のコピーです。ゼミ参加検討者に向けて、レポートの雰囲気を掴んでいただくために特別に一般公開しました。無料で最後まで読めますのでぜひご覧くださいませ。

問題です。

財務分析初心者中級者の違い(初心者が中級者になるための条件)とは、いったい何でしょうか?

もちろんこれは絶対的な正解のある問題ではありません。以下ではザイマニが考える財務分析初心者と中級者の違いについて解説していますが、ぜひ本文を読み進める前にあなた自身でも考えてみてください。

例えば、財務三表(BS・PL・CF)の構成や各項目を理解しているだけでは初心者でしょうか?はたまた、ROEや自己資本比率など財務指標の計算式を数十個ほど記憶していれば中級者でしょうか?さて、あなたはどう考えますか?

いつも通り結論から始めます▼

【結論】財務分析初心者と中級者の違い

--通常、ゼミメンバー以外はここまで読み進めることが可能です--

ザイマニが考える初心者と中級者の違いは、以下で解説する「財務分析のプロセス」のような財務分析の体系図が理解できているかどうかです。

つまり、実務等で財務分析を活用する流れが理解できていれば中級者、特定の財務指標の定義など、枝葉の理解に留まっている間は初心者、と考えています。上記の定義をもとにした初心者と中級者のざっくりとした特徴が以下の通り▼

初心者|具体的なデータ収集や分析ができる
中級者|分析全体のマネジメントもできる

では、初心者の乗り越えるべき壁となる財務分析を活用する流れとは一体どのようなものなのでしょうか?共通するプロセスがあるのでしょうか?

もちろん、すべての財務分析が完全に同一のステップで行われている訳ではありません。しかし、多くの財務分析で見られるプロセスとそのエッセンスを凝縮したものが以下の図解です▼

以下ではこの図解に基づいて各ステップをひとつずつ解説していきます。なお、ステップ❷は初心者も得意なステップであり、ステップ❸は実行のみとなるため、具体的な解説は❶と❹が中心となります。

上記画像を保存しておくだけでも価値があると思いますが、本レポートを最後まで読み切ることで初心者が中級者に成るために不可欠な知識をまるっと手に入れることができるでしょう。ぜひ最後までご覧ください▼

ステップ❶ 分析目的の設定・明確化

「なぜ財務分析を行うのか?」そして「分析の結果、どのような意思決定を下すのか?」を明確化するステップです。システム開発で言うところの要件定義であり、後続のすべての工程に影響を与える最も重要なステップです。

さて、あなたは最近どんな財務分析をしましたか?
また、なぜその分析を実施したのでしょうか?

改めて考えると、実務上で財務分析を活用する場合、その分析結果は重要な意思決定の判断材料として機能するシーンが圧倒的に多いです。

今回の財務分析の結果が良好なら…
・この企業へ投資する!
・あの企業に融資を許可する!
・就職先(転職先)の第一候補にする!
・この指標を自社のIRページに掲載する!

ただ、上記に列挙したように意思決定の種類は多岐に渡り、それぞれの意思決定に必要な情報(決定要因)は異なります。つまり「最終的にはこの意思決定を行う。その意思決定にはこの情報が必要」といったケースバイケースでの分析内容の精査、認識の共有が求められます。

個人での分析なら何も問題ありませんが、チームや取引先を巻き込んでの分析となれば「なぜこの指標が今回の決定要因となるのか?」について説明を求められるでしょう。この辺りが分析担当者の腕の見せ所です。

また、この段階で分析の実現可能性(その決定要因を実際に算出できるのか?)の確認と分析リソースの確保が必要となるでしょう。決定要因となる財務指標が定まっても収集可能な財務データで算出できなければ意味がありません。また、実際に分析を行う人手がなければやはり意味がありません。財務分析がひとつのプロジェクトであると捉えると分かりやすいですね。

今回は以下の設定で分析を行うと仮定します。

・財務分析担当者は上場企業X社の経営企画所属
・事業拡大による新規取引先の選定が求められている
・最終候補はA社とB社。どちらか1社を選択する
・長期的に取引を続けたいため財務安全性が高い方が好ましい
・両社の過去5年分の財務データで倒産予測分析を実施する
・分析結果を元に優先して交渉取引先を決める

以上がステップ❶の解説です。財務分析初心者の場合、自分が携わり始めた段階ですでに分析目的の設定が完了しているケースが多く、最初は認識することが難しい工程でもあります。

ただ、重要な分析の裏には必ず目的が存在します。次回以降の分析では「なぜ今回分析を行うのか?」「何を基準に意思決定が下されるのか?」を意識してみましょう。


ステップ❷ 分析準備・実施・共有

実際に手を動かして財務分析を実践するステップです。データ収集→分析の実践→結果の視覚化及び資料化が一般的な流れとなります。

上述したステップ❶で分析の実現可能性が確認されている場合、分析結果を導くまでは特に問題なく進行するでしょう。一方で、視覚化(グラフ化)及び資料化については分析結果に応じて微調整が必要となりますが、こちらもステップ❶で決定要因が確定している場合は特に迷うことなく進めることができますね。

なお、上記の図解中に登場した「倒産診断エクセル」はこちら。各社の倒産危険度を効率的にチェックしたい時に重宝します▼


ステップ❸ 意思決定とアクション

分析結果に基づき意思決定具体的なアクションを行うステップです。例えば「A社とB社の財務を比較すると、A社の方が財務安全性が高いと評価できたため、まずはA社と取引できないか優先的に交渉する」といった形です。

ステップ❶の要件定義とステップ❷の分析がスムーズに進んでいればあとは実行するだけ。以下では「A社との交渉が無事に完了し、取引を開始した」と仮定して話を進めます。


ステップ❹ 意思決定の検証

意思決定及び具体的なアクションを実行した後には、検証(効果測定)のステップが欠かせません。今回の例で言えば「取引先は本当にA社でよかったのか?」を定期的に検証するイメージです。

最低限押さえておきたい検証項目は以下の3点です。
・逆の意思決定をしていた場合どうなっていた?
・意思決定の決定要因は適切だったか?
・アクションまでの時間をさらに短縮できないか?

具体例も見ておきましょう▼

「A社を取引先と選んだ」場合の検証項目例
・A社とB社のその後の経営状況はどう推移しているか?
・決定要因は財務安全性が最優先でよかったか?
・分析や資料化スピードをさらに短縮できないか?

これらの検証結果をしっかり共有・アーカイブしておきましょう。とは言え「今回の意思決定が正しかったか?それとも誤っていたか?」の検証結果は責任問題や人事評価に影響することも少なくないため、多くのビジネスマンにとってやりたくない部類の仕事に入ると思います。

ただ、緻密な検証作業は将来的な財務分析プロジェクトのスピードアップや意思決定の精度向上に寄与すると期待できるため、中級者以上がしっかり管理するべきです。そしてこれが財務分析上級者(プロ)になるための条件だと考えています。最後に、この点に触れて本レポートを閉じたいと思います▼


財務分析上級者(プロ)の条件

ザイマニが考える財務分析上級者(プロ)の条件は以下の通りです▼

・具体的なデータ収集や分析もできる
・財務分析プロジェクトのマネジメントもできる
・自社の財務分析プロセスを断続的にアップデートできる
・意思決定及びアクションで成果を出し続けられる

まずは初心者が中級者になるための条件である財務分析プロセスの理解・マネジメント能力は上級者にも欠かせません(再掲)▼

加えて、財務分析プロセスにおける各ステップの効率を改善し、意思決定の精度を向上させ、自分自身や自社に利益や価値をもたらす人材こそ財務分析のプロ(上級者)と呼ぶにふさわしいと言えるでしょう。

そしてザイマニ財務分析ゼミでは、特にステップ❶と❷のアップデートにつながるコンテンツを集中的に提供しています▼

財務分析レポートを読み込めば分析視点や分析手法の拡張につながり、データセットとツールを活用いただくことでそのままステップ❷の効率化となるでしょう。ぜひご活用いただき上級者を目指していただけますと幸いです。

財務分析初心者と中級者の違い|まとめ

本レポートではザイマニが考える財務分析初心者と中級者、そして上級者の特徴について解説しました。簡単にまとめます▼

・初心者|具体的なデータ収集や分析ができる
・中級者|分析全体のマネジメントができる
・上級者|分析プロセスのアップデートができる。成果を出し続けられる

本レポートをここまで読み進めたあなたは、財務分析中級者に必要不可欠な知識を手に入れました。合わせて過去のレポートやデータセット、そして各種ツールもご活用いただき、会社で財務分析の中核を担うような存在、財務分析上級者として活躍いただければ嬉しいです。期待しています!


P.S.
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