115【課題を言語化できない経営者】地方在住経営コンサルタントの思索
写真はJR岡山駅前地区にある、昔ながらの食品市場、岡ビルです。時代の流れには逆らえず、再開発の話が進んでいるそうです。
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はじめに
私は地方都市で年商10億円規模までの中小零細企業オーナー経営者を対象に、財務面を軸とした独立系経営コンサルティング会社を経営しています。
日本経済が地方経済の集合体であると考えるなら、地方の問題は日本全体が抱える問題と言えます。
大枠の話に終始しても総論的で概念的な内容になると思いますので、ビジネスの最前線である現場に出ている、いち支援家(実務家)として気付いてきたことをできる限り具体的にきちんと述べようと思います。まずはざくっと地方経済が抱える問題をあらわにしてから、今後、支援家が目指すべき方向性を述べたいと思います。
きっとどの地方においても適用できる内容です。
先ににちょっとだけ言えば、弊社の業界は計り知れない可能性を秘めた業界と言えます。大袈裟に言えば、日本経済の盛衰に直結する業界とも言えます。もし良ければ最後までお読みください。
実は圧倒的に不足状態の中小零細企業支援者
せっかちなので、あえてちょっとだけ結論じみたものを早速言えば、上記の表題です。
「地方の特に年商10億円規模までの中小零細企業が永続していく上での本当の意味での支援者となり得る人材は著しく不足しているのが現実。」
「そんな訳ないでしょう。」と思われる方々も多いと思います。
しかし、勘違いされてもいけないので適切に表現するとすれば、
中小零細企業の支援者として思い浮かぶのはどういう組織や人材でしょうか?
顧問税理士さん、商工会議所・商工会の経営指導員さん、中小企業診断士の先生、金融機関の職員、よろず支援拠点のコーディネーターetc…。
多くの組織・人材がそれぞれの専門分野をもっており、その知識と経験を活かして、エリアの中小零細企業が抱える悩みを解決していくのはよくある道筋です。そして皆その道のスペシャリストです。
しかし、ここで大きな盲点があります。それは…
支援者がもつ専門分野はそれぞれで、経営計画策定から関与し、該当企業の全体像を正確に掴み、戦略と戦術を全て理解し、全体最適を考えた上で、その分野のコンサルテーションを部分最適として実施するというケースはほとんど存在しない、という点です。
そうならざるを得ない背景を論じるとするなら、
①補助金助成金獲得ありきの発想が経営者の根底にある
②専門家派遣制度による単発スポット的なコンサル
③企業の行く末に本当は責任を持ちたくない個人的心情(人によっては)
④自己のサービスや商材を購入してもらうことが実は目的
等々が挙げられます。
そして何よりも、経営者自身が部分が改善されれば良い!と考えに陥ってしまっていること。もう少し踏み込んで言えば、理想的な全体像をきちんと描かないままに、顕在化した問題に場当たり的に対処しているというケースが経営相談の大部分であるからです。
たとえば、
「資金がどんどん減っていく。増えるのは融資の時だけ。どうしよう。」
「とにかく人材不足。現場が回らない。どうしよう。」
「気が付けば経営者である自分もそれなりの歳になった。後継者はいない。従業員の生活はどうなるのか。この会社をどうしよう。」
「とにかく売上が減っている。原因が分からない。どうしよう。」
といった具合に、それぞれのもやもやに解決策がありさえすればOKと思ってしまう経営者が多いということです。
場当たり的にではなく、根本的に何が最重要課題かということを把握し、言葉にできないまま相談に行ってしまっている方が大半という実情ではないでしょうか。
悩みと課題を言語化するのに必要なもの
財務コンサルの事業に従事するようになって、今までおぼろげなイメージだったものが確信に変わったことがあります。それはどういうことかと言いますと、
「日本の中小零細企業経営者は自社の悩み・課題を的確に伝達するスキルが不足している。」
という点です。
特に地方において、年商10億円規模までの中小零細企業の経営者においてこの傾向は顕著ではないでしょうか。
これは、経済の大前提の変化が要因として根底にあります。
大手が引っ張ってきた昭和~平成の経済においてはさしたる問題にはなりませんでした。それはなぜかと言うと、人口増加による市場の拡大・安定的な分厚い需要が存在しており、何よりも労働力に困ることがなかったことが大きな理由です。
アバウトな言い方をすれば以下の流れになります。
一度できた商流を大きく変化させることなく微修正していき、資金の管理体制がアバウトな経営であったとしても充分に企業は拡大や存続が可能であった経済環境だったとも言えます。
そして、その企業毎の事業内容のみを学べば、「経営学」的な分野の学びはなくともどうにかなった社会だったとも考えられます。先人達に失礼なもの言いになりますが、あまり考えなくとも人間関係のみでどうにかなった時代だと思います。
さらにもう少しかみ砕いて言いますと、財務会計的な知識はなくとも、営業面だけこなしていれば、何とかなった経営環境だったということになります。
ではどうするべきか
現時点で考える処方箋は以下です。
①会計リテラシーの再教育。
②理系のように文系学部と中小企業の密な連携状態を作っていくこと。(人材供給体制となること。特に地方の大学文系学部において。)
③財務を軸とした個別指導型コンサルタントの育成・組織化(若い世代と現役支援機関の人員の両面で)
シンプルに言えば、だーれも中小企業の社長を責任もって教育してこなかったという大罪が日本経済にはあります。教育に哲学を有する伝統企業はきちんと経営者として何が必要かを理解して、後継者を育ててきたことでしょう。今なお、安定的に経営が行われているのはそういった企業でしょう。
言い訳にも聞こえるやも知れませんが、かく言う私自身が一度、経営者として無知なまま討ち死にしました。飲食事業の失敗・負債150M・金融機関債務は大部分がサービサーへ移管という大敗です。(破産はしておらず、少額ながら返済中です。)めちゃくちゃ偉そうに持論をのたまわっておりますが、実は大失敗して多くの方々に迷惑をけたことは痛恨の極みです。後悔先に立たずですが、飲食事業経営時代に財務コンサルの今の知識の3分の1でもあれば、きっと結果は違うものになったことと考えてしまいます。
やはり何よりも大半の企業に経営計画が存在しないというのは大問題だと考えます。
弊社はこの日本全体の課題(仮説)に、ゲリラ戦的に局地戦を重ねて小さい勝利を重ねていきます。
きたるべき、むしろ現在進行形で待ったなしの中小零細企業大再編に支援家として貢献できるように、自らの仮説を元に信念をもって活動していきます。
地方経済、大きく言えば産官学連携のコンダクターという大役も担える、企業と金融機関の通訳としての財務コンサルタント業に邁進していきます。
しかし、そもそもなぜこんな混沌とした地方経済になってしまったのかは、問題の深層はさらに深く、永遠のテーマと捉えていますが、壮大過ぎるので今回はこのあたりでペンを置きます。
まとめ
上記の文章では触れられてない点もありますが、重要なポイントを列挙します。
・悩みを言語化できない経営者にならないためには、相談できる体制作りと経営計画の策定がまず必要。
・根本的な解決は経営者への再教育。特に生命線となるのが会計分野である。ここには果てしない財務コンサルティングニーズが存在する。
・なんといっても経営計画が必要。これを策定するにあたっては金融機関が理解、判断しやすい事業性評価融資の審査材料となり得るカタチが理想的ではないか。
・中小企業大再編時代が進行している現在、この前提に立った、ニーズをくまなく拾う、個別面談型のコンサルテーションは再編の起点となる無限の可能性がある。
・お題目として計画倒れになる表面的な「地方創生」で終わることを防ぐためにも、支援家分野の組織や人材が果たす役割は大きいので、中堅・大企業からのUターン転職での人材育成と確保も必要ではないか。
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株式会社なかむらコンサルタンツ
代表取締役 中村徳秀
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