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麦酒の宴・ミュンヘンオクトーバーフェスト

今年もこの季節がやってきた。
いや、昨年と一昨年は中止になっているので、正しくは3年ぶりにこの季節がやってきた。というべきだろう。

今週からドイツ・ミュンヘンで世界最大規模のビールの祭り、オクトーバーフェストが始まるのである。

そこで今回は、過去のオクトーバーフェストにおける狂乱の様子を取り上げたい。

オクトーバーフェストとは

ミュンヘン自体の記事はいずれ書くことになるであろうから、ミュンヘンの紹介はその時に譲る。

そして、オクトーバーフェストについても今や日本でも各地で開催される人気のイベントであるので、説明は不要かもしれないが一応取り上げておく。

オクトーバーフェストとはドイツ南部バイエルン州の州都ミュンヘンで開催されるイベントであり、元は新しいビールの醸造シーズンの始まりを祝って始まったものとされる。

現在の原型となるオクトーバーフェストが初めて行われたのは1810年のこととされており、当時のバイエルン王国の皇太子であったルートヴィヒ2世の結婚を祝って競馬などのイベントが行われたのが始まりだそうだ。

今では競馬は開催されなくなったが、ビールの祭典だけは今も変わらず、むしろスケールアップして開催されている。
そして今年2022年は9月17日から開催されるのである。

さて、ここで疑問に思った人もいるかもしれない。
まだ9月じゃないか」と。

実際のところ、オクトーバーフェストの会期は最終日を10月の第1日曜日とする計16日間と規定されており、今年の場合10月3日には終了するので、期間はほぼ9月である。

今年の第1日曜日は10月2日だが、第1日曜日が1日か2日の場合、ドイツ統一の祝日である3日まで会期が延長される。

じゃあセプテンバーフェストじゃないか!と憤る気持ちを抑え、改めて考えてみてほしい。

"皐月"賞は四月に開催されるし、
新"東京"国際空港は千葉にある。
"台湾"ラーメン"アメリカン"は名古屋の名物だし、
"伊藤"園の創業者は本庄正則・八郎兄弟である。

そう考えればオクトーバーフェストの会期の大部分が9月であるなどということは実に些細な問題であり、むしろオクトーバーフェストなんだから10月にやっているはずだという発想自体が安直なのではないかとすら考えられ、10月に一部会期が残されている分むしろ誠実ですらあると言えるのではないだろうか。

細かいことは大した問題にはならないのである。

なお、なぜ会期のほとんどが9月になったかについては、
・気候的に少しでも暖かい時期に開催するため
・10月に新しくビールを仕込むために、早い段階で樽の中身を空けるため
などの説があるそうだ。

Oktoberfest 2016

イギリス在住中、時は9月下旬。
オクトーバーフェストを迎えた週末、友人たちと週末を利用してミュンヘンへと赴いた。
同僚に週末にミュンヘンへ行くといったところ情感たっぷりに「Jealous! (羨ましい!)」と言われたことが思い出される。

ロンドンから約2時間のフライトでたどり着いたミュンヘンの街は、既にオクトーバーフェスト一色であった。

オクトーバーフェスとの会場であるテレージエンヴィーゼ(Theresienwiese)までは、中央駅から10分強である。

友人の同僚であるミュンヘン在住のドイツ人と合流して会場の中へ。
会場内には大小様々なテントが並ぶ。

また露天も出ているので、食べ歩きも可能だ。

オクトーバーフェスト期間中だけで45万羽を超えるチキンが丸焼きにされるそうだ。

にぎやかな通りを横目に、地元民オススメのテントへ。
各テント間にもそれなりに民度の差があるとかいう話であった。
やってきたのはシュパーテン(Spaten)のテントだ。

まだ昼過ぎというのに、テント内は満員御礼。皆大きなジョッキを手に盛り上がっている。

席を確保してくれていたようですんなりと着席できた。
早速ビールを頼んで乾杯だ。

シュパーテンはミュンヘン6大醸造所の一つであり、日本で最もポピュラーなラガービールの元祖として知られる。
オクトーバーフェストのビールは基本的にワンサイズであり、1Lの巨大ジョッキ一択である。
そうそう何杯も呑める代物ではないので、ちびちびと呑み進めていく。

また、テント内では料理の注文も可能であり、食事とともにビールを楽しんだ。

会場内も盛り上がってくると、浮かれポンチたちも出てくるものである。
そうした盛り上がりを肴にビールを飲み進めていった。

現地の同僚とはここで別れ、一旦チェックインのためにホテルへ向かい、一息ついて再度戦場へ。

夜のオクトーバーフェストはライトアップがされて一層明るい雰囲気に包まれる。会場には遊具もありさながら一大移動遊園地の様相である。

そんな中向かったのは日本でもメジャーなビール銘柄であるレーベンブロイ(Löwenbräu)のテントだ。

写真は日中撮影したもの

入り口には人だかり。

どうやら満席のため入場制限がかかっているようだ。
テラス席もあるのだが、生憎の雨である。9月のミュンヘンの夜は冷え込む。いかな酔っぱらいと言えども、みんな濡れながら呑むのはゴメンなようで、入り口では「入れろ入れろ」の大合唱であった。

それに混じってなんとか潜入を試みる。
「日本からわざわざ来たんだよー(嘘)。入れておくれよー」
そんな安い同情には乗せられてくれない。現実は非情である。
いくつかの入り口をウロウロしていたところ、たまたま何組か出ていったタイミングで、運良く中に入り込むことができた。
ようやく第2ラウンドスタートである。

手頃な席を見つけて着席。早速ビールを頼む。
またしても巨大ジョッキで乾杯だ。

時間的な問題なのか、民度的な問題なのか、どうも先程のシュパーテンと空気感が異なる。

まず、なぜか基本的にみんな立っている。
着席という概念がない。

それも椅子の上にである。

椅子は座れる、というアフォーダンスがこの場で認識されることはない。
浮かれポンチたちのテンションは上がる一方である。

そんな空気につられて、開けられていくジョッキ達。

この頃になるともはや記憶が不確かになってくる。
翌朝カメラを確認すると、近くのテーブルに座っていたと記憶している、確かオーストラリアから来たと言っていたヒゲモジャの男性と笑顔でジョッキ片手に肩を組んでいる写真が残されていた。

浮かれポンチは私であった。

ほうぼうの体でホテルに帰り着いた頃には日付も変わろうかという時間となっており、倒れ込むように眠りについたのであった。

別の友人も合流して迎えた2日目。再び戦場へ。
この日最初に向かったのはパウラーナー(Paulaner)のテントであった。

この時時刻は朝の9時30分。まだまだ落ち着いているとは言え、この盛況ぶりである。

モーニングメニューなどという甘えたメニューは存在せず、朝から1Lジョッキである。

「なるほど、これがモーニング・グローリーか。」私はひとりごちた。
目つきの悪いイノシシを眺めながら酒を飲み、肉を食らう。

ところで1Lのジョッキは、そのサイズもさることながら、かなり分厚く頑丈に作られているため、ビールが入るとかなりの重さになる。
しかし、スタッフのおばちゃんたちはそれをいかにも簡単そうに5杯6杯、場合によっては2段に重ねて10杯単位で運んでいく。

その手首はどれだけの鍛錬を積まれた屈強なものなのだろうか。腕相撲で私が勝てることはないだろう。

正午を前に場所を変え、最後に訪れたのはホフブロイ(Hofbräu)だ。

このテントはとにかく規模が大きい。総座席数は1万席超えと言われ、オクトーバーフェストでも最大規模のテントになっている。

これがまだ午前中であるということが俄には信じがたい。
中央のステージでは楽団による生演奏が行われている。

普段は民俗音楽的な演奏を行っているが、30分に1回ほどの頻度で「アインプロージッ、アインプロージッ♪」と歌い始めると皆が急に色めき立つ。

これはオクトーバーフェスト名物の乾杯の歌(Ein Prosit)なのである。

Ein Prosit, Ein Prosit, der Gemütlichkeit
乾杯 乾杯 いい気分
Ein Prosit, Ein Prosit, der Gemütlichkeit
乾杯 乾杯 いい気分
Eins, zwei, drei, g'suffa! Prost!
1,2,3 飲み干せ!乾杯!

これがかかり始めると、それまで音楽など気にもとめていなかった面々が一斉に歌い出し、近くの知らぬ人ともグラスをぶつけあう。
いわば公式のコールである。

そんなことをやっているとどんどん酒も進んでいく。
帰りの飛行機の時間だからと会場を後にしたのはまだ14時前頃のことだったが、そこにいたのは数体のビアライヒェン(Bierleichen:ビール死体。オクトーバーフェストに居る酔っ払いを指す)へと変わり果てた男たちであった。

Hard Rock Calling!

私はハードロックカフェのピンバッジコレクターでもある。
ミュンヘンにもハードロックカフェがあり、当然そこにも訪問をしている。
ハードロックカフェを訪れたのは卒業旅行で数時間だけミュンヘンに滞在したときであったが、特筆すべきエピソードがないのでここで合わせて記す。

2002年にオープンしたミュンヘン店は、国営ビアホールとして名高いホフブロイハウスの近くに位置する。

夕方頃に電車で到着し、夜発の夜行列車でベネツィアへ向かう予定であった我々には数時間の滞在時間しかなかったが、ハードロックカフェに向かうためだけにスーツケースを引いてハードロックカフェへと向かったことが思い出される。

ミュンヘンのマグネット

ミュンヘンのマグネットがこちら。

オクトーバーフェストバージョンである。
私は通常1都市につき1つのマグネットしか保有しない。キリがないからである。
ミュンヘンの通常バージョンは保有していたが、せっかくオクトーバーフェストに来たのだから、とオクトーバーフェストらしいデザインのものを購入した。屋台にビール樽に重いジョッキをらくらくと運ぶおばちゃん。
実にオクトーバーフェスト感があって良い。

ミュンヘンのピンバッジ

ミュンヘンのピンバッジがこちら。

蓋付きのビアマグがデザインされた一品である。
かつて14世紀にヨーロッパでペストが大流行した際、ハエがペストを媒介すると考えられていたため、ハエがビールに入ることを防ぐために蓋がついたことが始まりとされているそうだ。

今ではガラス製のジョッキが一般的となっているが、これもいかにもミュンヘン感が感じられる。


今や日本でも各地で行われるオクトーバーフェスト。
しかしその本場の盛り上がりは、また一味違う空気を持っている。
またいつかあの狂乱に再び身をおいて、巨大なジョッキを乾かしたいものだ。

そして、フランス人の同僚に「俺は1日で10杯は呑んだぞ。5杯じゃお前もまだまだお子様だな」と謎のマウントを取られた借りを返したいものである。


最後までご覧いただきありがとうございました。

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