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イギリスの門前町・カンタベリー

さすがは世界遺産。

旅をする中で世界遺産を訪れた時、そう感じさせられた経験は少なくない。
今回取り上げる街・そしてその世界遺産は、中でも特に強くそう感じたことが未だに思い出される。
そんな今回の舞台はイギリス・カンタベリーである。

カンタベリー(Canterbury)は、イギリス南東部に位置する人口15万人の街である。
カンタベリーには旧石器時代から人が住んでいたことが確認されているが、1世紀ごろのローマ人の入植によって本格的な街が形作られる。その後街は一時衰退した時期もあるが、6世紀末にイギリスにおけるキリスト教布教の拠点となると、街は再び活気を取り戻し、キリスト教の巡礼地として長く栄えて今に至っている。

私がカンタベリーを訪れたのは2月の初頭のことだった。
日が短く陰々としたイギリスの冬だが、残り少なくなってきたイギリスで過ごす週末を有意義に過ごすべく、イングランド南東部を攻める週末プランを立て、カンタベリーへと立ち寄ることとしたのであった。

先にも述べた通り、カンタベリーの歴史は古く、今も街には歴史のある建築物が残る。

街の西の玄関口であるこのウエストゲートタワーは百年戦争時に侵略から守る目的で作られたというから、その歴史は6世紀を超えることになる。

そこから街中に入っていくとよくある地方の街、といった様子のストリートが出迎えてくれる。

それでも随所に街の歴史の古さを感じさせてくれるのがカンタベリーらしい。

14世紀末に建てられた教会の一部だったという時計塔や、

16世紀の織物業が営まれた建物が再利用されているレストランなど、歴史を随所に感じさせる。

ひとまずサンドイッチの昼食をとって、この街のメインスポットといえる場所を目指そう。

近づいてくると、否応なしにその存在感が目に飛び込んでくる。

カンタベリーを代表する観光スポットであり、街のシンボルともいえるのが世界遺産・カンタベリー大聖堂である。
街中に突如現れる立派な門がその入口だ。

門をくぐるとその巨大な姿の全景が現れる。

このカンタベリー大聖堂のルーツは597年にまでさかのぼる。
ローマ教皇の命を受けてイングランドへやってきた聖アウグスティヌスが布教の拠点として教会を建立したのがここカンタベリーである。その後11世紀に再建されると、その後幾度かの改築を経ながら現在に至っている。

私が訪れたときは写真の通り、改修工事の最中であった。
しかし、歴史的建造物と横浜駅というものは常にどこかが改修されているものであり、この程度のことで落ち込んではいけない。
中へと足を踏み入れよう。

流石の規模感だ。

しかし、それ以上に印象に残るはステンドグラスの美しさだ。

ここカンタベリー大聖堂では古いものでは12世紀後半のものから近年新たに設置されたものまで延べ1200㎡分のステンドグラスが覆っているそうだ。

良く言えばシンプル、悪く言えば大味なデザインのステンドグラスに覆われた教会も少なくない中で、その緻密さは極めて印象に残っている。

特に私が訪れた午後時間帯で、ちょうどステンドグラスに後光が射していたものが神秘的であった。

大聖堂内をさらに歩んでいく。

すると剣を模したオブジェが飾られた部屋が目に入る。

厳かな大聖堂にしては物騒なこのオブジェは、1170年にここで大司教トマス・ベケットが暗殺されたことを示している。

カンタベリー大司教であったベケットは、政教分離を巡ってイングランド王ヘンリー2世と対立しており、その結果12月29日の夕方、4人の騎士によってカンタベリー大聖堂で暗殺されてしまう。

その遺体は礼拝堂に埋葬され、その場所には今もロウソクが絶えることなく灯されている。

ベケットはその後聖人として祀られ、多くの巡礼者がカンタベリー大聖堂を訪れることになる。
また、これをきっかけにヘンリー2世はローマ教会に譲歩・屈服を余儀なくされ、運命を大きく変える出来事となったのである。

また、カンタベリーで世界遺産と認定されているのはカンタベリー大聖堂だけではない。

この地を治めたケント王と、カンタベリー司教を埋葬するために作られ、全盛期にはカンタベリー大聖堂をその規模を競い合ったといわれる聖オーガスティン修道院の遺跡と、

現役の教会としてイングランドおよび英語圏最古の教会とされる聖マーティン教会も、カンタベリーの世界遺産を構成している。

せっかく訪れるのであれば、これらにも併せて足を運び宗教的拠点として栄えたカンタベリーの繁栄を感じるのがよいだろう。

カンタベリーのマグネット

カンタベリーのマグネットがこちら。

シンプルに大聖堂の全景を描いた逸品だ。
それ以上でもそれ以下でもない、という潔さが良い。

と思って購入したが、
今になってよくよく見てみると、大聖堂の全景だとこのような姿にはならない。

大聖堂の背後の右にはウエストゲートタワーが。

左側には大聖堂につながる門もしっかりと入り込んでいる。


改めてカンタベリーを訪れた数年前のことを思い返したときに、まず思い出されたのは大聖堂のスケールと美しさであり、「さすがは世界遺産」と思わされたその記憶を思い返しながら記事を書き始めたのだが、
書いていくにつれ様々な歴史や事実が「大聖堂だけと思うなよ」と私に語りかけてきた。
そんな気がする。



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