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20070503 磁石で動く硬貨(2)

 下敷きの上に硬貨を置いて、下敷きの下で強力な磁石を動かすと磁石にくっつかない硬貨でも磁石の動きに反応して動く$${^{*1}}$$。硬貨の種類によって動き方が違う。一円玉はよく動く$${^{*2}}$$が、百円玉は殆ど動かない$${^{*3}}$$。この違いは何か。

 そもそも何故、磁石にくっつかない硬貨が磁石の動きに反応$${^{*4}}$$するのか。磁石の動きによって硬貨の内部に電流が流れ、その電流によって磁界が発生して硬貨自体が電磁石のようになり磁石に反応する$${^{*5}}$$のである。金属の近くで磁石を動かすとその金属が動く。この現象はアラゴーが発見した$${^{*6}}$$。その原因を金属に電流が流れることによる。これはファラデーが発見$${^{*7}}$$した。今から約百八十年前のことであった。

 磁石を動かすと言うことは金属にかかる磁気の量が変化する$${^{*8}}$$ということである。磁石を金属に近づけて置いておくだけでは何も起こらない。動かすことが必要$${^{*9}}$$だ。磁気の変化の仕方が激しければ激しいほど金属に高い電圧が発生して電流が沢山流れる$${^{*10}}$$。

 磁界が変化すると金属に電圧が発生する$${^{*11}}$$と考えられている。この電圧によって電流が金属に流れ出すと考えればいいだろう。電流が流れると磁界が発生する。電流の方向は、その電流で発生した磁界が外部の磁界の変化を打ち消すように流れる$${^{*12}}$$。金属の電流によって発生した磁界が元々あった磁石の磁界に作用して硬貨自体が力を受けて動き出す$${^{*13}}$$。

 同じ磁石で磁石の動かし方も同じならば、硬貨に発生する電圧は同じ筈だ。ところが硬貨の額面によってその大きさが異なるので同じ電圧が発生しても電流の流れ方が変わる。発生する電圧が同じであっても硬貨の電気抵抗が違えば流れる電流の量が変わる。電流の量が変われば発生する磁界の大きさが違ってくる$${^{*14}}$$。

 硬貨の素材は額面によって異なる$${^{*15}}$$。素材が変わると電気の通りやすさも変わる$${^{*16}}$$。銅は電気が通りやすい。十円玉は殆ど銅でできているので、電流が発生しやすく大きな磁界が発生する。従ってよく動く$${^{*17}}$$。アルミは銅に比べて1.6倍電気が通り難いが、十円玉の1/4.5倍の重さなのでよく動く。百円玉には銅の4倍電気が通り難いニッケル$${^{*18}}$$が25%含まれているので磁界が発生しにくいのだろう。金貨はどうか。金とアルミとは電気の通りやすさが殆ど同じである。実験した金貨の重さは8g弱$${^{*19}}$$なので十円玉や百円玉のほぼ二倍である。それでもよく動いた$${^{*20}}$$。

 どうも硬貨の重さよりも素材の電気の通りやすさで、動きやすさが決まるようだ。

*1 20070502 磁石で動く硬貨
*2 al_coin.mp4
*3 white_coin.mp4
*4 2006年5月20日(土)愛知工業高校での例会の記録です。
*5 [NGK] 実験説明ページ
*6 アラゴの円板 - NeoMag用語集
*7 永久磁石の歴史と磁気科学の発展 | 発電機とモータの進化
*8 渦電流でアルミの1円玉が動く
*9 まめ知識(アラゴの円盤)
*10 【実験】誘導起電力と磁石の運動
*11 ファラデーの電磁誘導の法則
*12 No.3 燃料電池を生んだ電気化学|電気と磁気の?(はてな)館|TDK Techno Magazine
*13 moving coin
*14 2-3-2 電流がつくる磁界
*15 ぞうへいきょく探検隊 貨幣のデザイン: 独立行政法人造幣局
*16 日本財団図書館(電子図書館) 通信講習用船舶電気装備技術講座(電気理論編・初級)
*17 copper_coin.mp4
*18 ニッケル
*19 三菱ゴールドパーク|金貨
*20 gold_coin.mp4

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