見出し画像

つまり、そういうことだ➀

私は大切なことを思い出した。
今から、分かるやつにだけ分かる話をする。
なるべく端的に話す。
興味が持続する所まで聴いてくれ。

おまえは男か女かそれ以外だが、男も女もそれ以外も、おまえではない。
おまえは貧乏か金持ちかそれ以外だが、貧乏も金持ちもそれ以外も、おまえではない。
おまえは既婚者か未婚者かそれ以外だが、既婚者も未婚者もそれ以外も、おまえではない。
おまえは美しいか醜いかそれ以外だが、美しさも醜さもそれ以外も、おまえではない。
おまえは働いているか働いていないかそれ以外だが、働いている者も働いていない者もそれ以外も、おまえではない。
おまえは健康か不健康かそれ以外だが、健康も不健康もそれ以外も、おまえではない。
おまえは人間かそれ以外だが、人間もそれ以外も、おまえではない。
おまえはタンパク質と水分とそれ以外の成分で出来ているが、タンパク質も水分もそれ以外の成分も、おまえではない。
おまえは、おまえでしかない。
その他の飾りやラベル、記憶や歴史、能力や障害……それらをすべて剥ぎ取っても、おまえはおまえのまんまだ。

これを踏まえて、今から「おまえ」に話をする。

これは実際にあった話だ。
ある男がいた。彼は、その国で一番の金持ちだった。
もっと金を増やしてやろうと、株の空売りをしようとして大失敗した。
大損してしまったんだ。
ほうぼう金策に走ったが、不調に終わった。
その国で一番の金持ちでなくなることを悟った男は、なんと自殺してしまったんだ。
さらに悲劇的なのは、自殺の後で資金の貸出を承認した銀行があったと分かったことだ。
金策の問題は解決していた。
なのに、それを知らずに死を選んでしまった。
ほんの僅かな時間でも、金持ちでなくなる自分に耐えられなかったんだ。

つまり、男は、金持ちだったからって、「金持ちが自分だ」と思ってしまったということだ。
金持ちでない自分など、自分ではないと信じ込み、生命を絶ってしまった。
金持ちじゃなくても、人は生きていける。両手両足を失っても、生まれたときから何を持っていなくても、人は生きていける。
何を持っているか、持っていないかは、おまえの存在とは無関係の流動的な条件なんだ。

おまえは、自分を「何」だと思っている?
何が自分だと思っている?
それは、おまえじゃない。
ブランドのロゴや宝石や永久脱毛したワキがおまえでないように。
おまえは、おまえでしかないんだ。

意味が分からないかもしれない。
それでも興味があるなら、つづきを聴いてくれ。

(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?