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YOSHIKIともう一人のロック・スター/プロフェッショナル仕事の流儀を見て。

先日放送されたNHKの番組『プロフェッショナル』のYOSHIKIスペシャル、なんとなく見始めたらものすごく前のめってしまう番組でした。

YOSHIKIさんという人にも、番組自体にも思わず拍手を送ってしまう1時間強の視聴体験でした。

「”本当のYOSHIKI ” を探し、1200日撮影」を続けたそうですが、本当のYOSHIKIさんが見つかったどうかはどうでも良くて、ウイルスによる行動制限にも取材対象者の気まぐれにもめげずに1200日撮影し1時間ちょっとにまとめ上げた内容は本当に素晴らしかった。

というのも、数日前に見た映画『ジョン・レノン〜音楽で世界を変えた男の真実(原題:Looking For Lennon)』が脳内でチラつくことが多くて。
わたしの中でずっと二人のロックスターが交錯してました。
ジョン・レノンとYOSHIKI。

To the Toppermost of the Poppermost

世界の頂点を目指したジョンとYOSHIKI。
愛する人にことごとく取り残されるジョンとYOSHIKI。
音楽に救われ音楽に生かされるジョンとYOSHIKI。
ジョンが生前語っていた「音楽はコミュニケーションの手段」というのもYOSHIKIを体現してると思った。

YOSHIKIさんは、ジョン・レノンを思い出させるだけに止まらず、わたしの愛するバンドそのものの姿をしているように思えました。

病弱だった幼い頃にピアノを始めたのは入院中にドラムに出会ったリンゴに似ていて、KISSに出会いロックに救われたっていうのはジョン、母がドラムを与え全力で応援してくれたエピソードはジョージ、そしてX JAPANで完璧を求め価値観を押し付けてしまったという姿はまるでポール…。

会話を重ね心を委ねられる存在だったHIDEを失い、一度は音楽の世界から遠ざかったYOSHIKIさん。
母の言葉に背中を押され、天皇の即位10年の奉祝曲の披露で再び戻ってきた後、喪失を埋めるかのように必要以上にストイックに”一生懸命”に音楽と向き合う姿は、ビートルズを失った時の、そしてジョンを永遠に失った時のポールの姿とも重なって見えました。

自分に惜しみない愛を注いでくれていると思っていた父親を失い、共にバンドを築き上げ最も信頼していたHIDEさんを失ったYOSHIKIさん。
それはまるで、父に捨てられ、母、そして「もう一人の自分」だと語ったほどの親友スチュアート・サトクリフを立て続けに失ったジョンを思い出させました。

そんな彼を生かしたのは音楽でした。
そしてYOSHIKIさんも。

「世界を獲りたい!世界を獲るんだ!」
それが人生のすべてになったというYOSHIKIさんが、世界を目指すバンドの為に必要だと思ったギタリストがHIDEさんでした。
そんなエピソードも、ジョンが逡巡しながらもポールを自分のバンドに迎え入れ、本気で音楽に向き合うようになった経緯を思い起こさせました。

「HELP!」 と叫びながら狂気の世界を走り続けたビートルズがライブ活動を止め、途方に暮れたジョンを救ったのはヨーコ。
「いつかは孤独じゃなくなる時が来るのかな?」と話すYOSHIKIさんは?誰かに救われる日が来る?

ジョンもYOSHIKIも愛を歌っています。
そして彼らの音楽に救われる人がいる。
YOSHIKIは「悲しみが深いほど美しい音楽を奏でられる」と言ったけど、ジョンは自分の悲しみと音楽をどんな風にリンクさせていたのかな?と二人の孤独なロックスターに想いを馳せました。

YOSHIKIさんは、「自分はプロフェッショナルではない。永遠のアマチュアでいい」とおっしゃっていましたが、その音楽に身を捧げる姿がプロフェッショナルと言えなくて一体何をプロと呼ぶのだろう?と思いました。

烏滸がましくも、「そんなに一生懸命じゃなくていいんですよ…」と言いたくなったラストでした。
ジョンもだいぶ怠惰な人間だったし。

きっと昔からX JAPANやYOSHIKIさんを追っている方とは随分見方や感じ方が違うと思いますし、ToshIさんについて全く言及されていないことへの違和感は拭えませんでしたが、良いタイミングでなかなかの良作に出会えたと思います。

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