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「きみの存在を意識する」で共感した学校生活

「きみの存在を意識する」梨屋アリエ を読んで

個人的に、最近読んだ本の中でだいぶ感化された部類の本だと思う。
舞台は中学校二年のクラス。登場人物のほとんどが中学二年生。
様々な人物の目線で進んでいく物語で、対象としている層も中高生(多分)だからかすごく読みやすかった。

本を読むのが遅く、ディスグラフィアに近いひすい、ジェンダーに疑問を持つ理幹、書字障害の心桜、養子でひすいの弟拓真、いい子になりたがる過食になりかけた小晴。ほかにもカースト上位のとりまきで人をいじる梅田や、ひいおばあちゃんが外国人と知られたくない聡美、考え方が古く偏っている角野先生、過敏症で香りに敏感な別室登校児瑠美名、などが登場する。

それぞれがそれぞれの悩みを抱えていて学校で生活している、ということを読みながら感じた。

親に反抗したり、「成績が下がる」「高校行けなくなる」といった台詞、周りに気を遣ったり周囲の目を気にして過ごしている姿が、「いかにも中学生だな」と感じた。梅田のように、誰かに「かまってムーブ」出しまくって、上位カーストの取り巻きとして過ごしている奴もいたな、と思ったり。

中学の頃、今よりジェンダーに悩んだ時期があたり、友達がジェンダーで悩んでいたり、人混みがだめで別室登校だった同級生もいたし、学校に配慮を求める子もいた。
実際私も保健室登校をしたりカウンセリングを受けたりしてた時期もあったし、ストレスで摂食障害になった友達もいた。そしてそれらが親や学校に理解されない子がいたのも事実だ。私の中学生時代に似たものを読んでいて感じた。

私の中学の時や、当時の友達を見ているようだった。それでも、私は親や学校の先生方、事情を知る友達に理解を得ることが出来ており、出にくい授業やクラスの雰囲気が悪い時には保健室に逃げたり、スクールカウンセリングの予約も入れさせてもらうことが出来てたりした。友達も、「カウンセリング行ってらっしゃい」と言ってくれた。今思えばそれも大きな配慮で、私は人に恵まれていたんだなとこれを読んで思うこともあった。

それぞれの立場が違うから、一人を見る目線や抱く印象が章ごとに違うことにも気づいた。一人は理解していて、一人は理解したうえでなんとも思っていない。一人は理解が出来ない、みたいな感じ。

自分のイメージ気にするし、親とも喧嘩する。先生にも言いたいこと全部ぶつけたいけど、成績や内申点に響くかなと思ったり、感情がまるでジェットコースター。これを文章にリアルに書ける作者がすごい。

そして心桜のように、ネットの住人に愚痴言ったりアドバイスもらったりするようなことも過去に私もあった。人間不信になって、でも誰かに言いたくて、理解されたくて、見てほしくて、私もだいぶネットや掲示板に籠っていた時期があった。相手がどんな人かもわからないし、プロフィールは偽りかもしれない。でも、悩んでいるとただ悩みのはけ口がほしくなる。知らない人だからこそ話せることもあるし、聞いてさえくれれば何でもいい。それすら共感できた、凄い。

そして相手を理解したり配慮したりするのは本当に難しいことだと思った。理解も配慮も、捉え方や伝え方、行動を間違えると差別やいじめになることもある。よかれと思って、やったことが、相手にとってはとてつもなく嫌かもしれない。私はそういう経験をしたし、友達がそれらの対応で悩んでいて話を聞いたこともある。

ジェンダーや障害(目に見えるものだけでなく、心や性格といったものも)、不登校、養子の制度についても、これから少しずつ、大人だけでなく子供も理解していく社会になってほしいと思った。「一人」のことを排除せず、「皆と違ってもいいよ」って言える学校や、噂や偏見、それによるいじめがない空間、子供が悩んでいるときに受け止めて話を聞いてくれる親や教師、大人、そういったものや人が増えたらいいなと思った。

小さな悩みと思っても、本人はとても気にしている大きな悩みだったりするし、周りが「大騒ぎしている」と嗤っても、本人にしたら大騒ぎや癇癪を起すくらい大きな問題だったりする。この本は、そういった目に見えない悩みや事情、障害、困難があること、悩む人がいること、理解することなどの大切さを改めて考えさせられる話だった。

私自身も、私の周りの友人も、そういった人の一人で世の中に隠し事をしている人もいる。大人も子供も読んでほしいと思った一冊だった。
また、個人的には教師をしている人や志す人にも読んでほしいと思った。

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