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人をコケにして

のんきに昼寝などしていたら、急に雨が降ってきた。わりと大雨だったのでびっくら飛び起きて干しっぱなしの洗濯物を引きちぎるように取り入れた。正直ちょっとちぎれていたのかもしれないが、そんなことは気にせず勢いのままに取り入れてみた。しかし予報ではそんなこと言ってなかったように思うが、いかんせん女心と秋の空なんて言葉がいにしえから伝わるくらいなのだから、急な変化も受け入れねばなるまい。私の心は秋空のように広いので、そんなこともいともたやすく受け入れてしまえる。しかしながら私はこのような広い心の持ち主であるという輝かしい事実が、世間の女性には伝わっていないように思える。なぜなのだろう。私は急な雨にも臨機応変に対応できる男だというのに、そんな崇高な部分に世間は目もくれず、やれだらしがないだの、感動的な映画ですぐ泣くだの、食事の栄養バランスが偏っているだの、そんなことばかり言われてしまう。はてさてどうしたものか。私という人間の、比較的良い部分が日の光を浴びるためにできることはなんなのだろうか。賢明な読者諸君はお気づきだろうが、そんなことを考えている時点で世間に評価される日は到底来ない。耐えがたきを耐え、忍び難きを忍ぶ。自身の環境に不平不満を言わずに日々コツコツと成長できる、日が当たらないところこそ生きる、そんなコケのような人間であるべきなのである。そんなわけで、今日も暗いところからジメジメと文句を垂れ流すコケのような男が、私なのである。

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雨の日をたのしく

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