見出し画像

教わる日々に

冷蔵庫に貼られた「おてつだい表」には30個程度の種々多様なお手伝いが書かれていて、11歳の兄と7歳の妹は、それらと睨めっこをしながら、今月はいくら稼ごうかと算段をしている。

洗濯物を畳めば1ポイント、ご飯を炊くのも1ポイント、トイレ掃除は3ポイント。子供たちが自立してなんでもできるようにと、妻が導入した「お小遣いポイント制度」の話である。

毎日15分程度のお手伝いをしていれば、小学生でも1000円程度のお小遣いは稼げる仕組みだ。
親である我々も助かるし、子供の自活力もつく、そして稼げるのだから一石何鳥やねんと、よくできていて感心する。

とはいえ、導入時から全てうまくいったわけではない。格差問題である。当然、4つも歳が離れた兄と妹では、やれることが異なるからだ。

兄は料理の手伝いをして複数ポイントを稼げるが、妹は「空いたティッシュ箱の交換」「キッチンのタオル交換」「乾燥機から洗濯物を出す」など単発で1ポイントずつ稼ぐしかない。

また、「朝にリビングのカーテンを開ける」などは常に取り合いで、やれ「ボクが先にやる!」「わたしが先にやろうと思ってた!」などと朝から小競り合いすることがしばしばあった。

朝から小遣いのためにケンカなどされてはたまったもんではない。
「それであれば、このお小遣い制度ももう限界ですな」
「いい制度だと思ったのが口惜しいですな」
などと妻と芝居がかった会話をすると、「いやいやそれは困ります」と兄妹二人で作戦会議を始める。

さてさて翌日から何が起こったか?

たとえば兄は、朝が強い妹に「リビングのカーテンを開ける」を妹に託す。妹は、器用な兄に「洗濯物を畳む」をお願いした。

複数ポイントを稼げる「料理のお手伝い」は、野菜を洗う、卵を割るなどの作業を妹が、味付けや手がかかる下拵えを兄が行い、ゲットしたポイントを分け合う。ここで分担制が爆誕したのだ。

これには親である自分も目を見張った。月末には、それぞれのポイントを数えながら「今月も頑張ったよね!」「来月も頑張ろうね!」と二人で声を掛け合い、小遣いの金額に満足いった際は、二人でホクホク顔で「今月もありがとうございました。来月もよろしくお願いします」と二人で頭を下げ合うのだ。

「お小遣いを稼ぐ」という共通の目的のもとに、お互いの強みを活かし協力し合う姿は、見習うべきことだった。何より、「ありがとう」と感謝して励まし合う様は、我が子ながらに眩しく尊い。

結婚して15年、気がつけば自然と、夫婦の家事分担もできていて、それなりに喧嘩もせずにやってきたけれども、それが当たり前になってはいかんなと思う。「ありがと、って声に出さなあかんわな」と、一人ごちて、今日も妻をはじめ、家族みなに感謝する。そして今日は、いつもより多めに「ありがとう」と言う。

相変わらず、子供に教えてもらうばかりの日々を送っていて情けない。さて自分はいつ立派な大人になれるのだろうかと嘆くのだが、その反面、こうやって家族に感謝する機会は、絶えることがない。これはこれで、ありがたい。


#家事分担の気づき

お蕎麦屋さん開きたい。