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湯の町 下諏訪

私の工房「椅子張り店 Zatowa」がある下諏訪町は温泉の町。
至るところに町や区が管理する温泉がある。
-10℃が当たり前の諏訪の冬。古いお家にはお風呂がない。
でも温泉に入るといつまでもぽかぼかあたたかい。そして、お風呂がない人のためにも毎日入れるほど、とてもリーズナブル。
大体が280円~400円。シャンプーやタオルは置いていないから、購入するか、みんな持参する。

色々な形のお風呂があるけど、私はこの丸い形のお風呂が好きだ。
カランが7つ、シャワーが3つ。
3人入っていれば、「今日は混んでるね」なんて言って笑い合い、日々一人で作業し、誰とも話さないという日がほとんどの私は、唯一、お風呂で人と話をする。どこのお医者さんに行けばいいかから始まる町のこと、人生の先輩たちに色んな悩みを聞いてもらい、時には女子高生の悩みを聞いて、たくさんの笑いと元気をもらった。
このお風呂と風呂仲間のおかげで多くのことを乗り越えられた。

2019年に閉鎖した「みなみ温泉」

けれど、どんどん入る人は減り、老朽化と経営不振により3年間通ったお風呂は2019年に閉鎖してしまった。

私が毎日通ったくらいでは、このお風呂を守れなかった。

「風呂は友との語り合いの場」

こんな文句をかかげるこの町が素敵だと思っている。

「みなみ温泉」の壁にはってあったルール

毎日お風呂に行けば会える風呂仲間。

久しぶりに行けば、
「しばらく来なかったね、どうしたの?」
と声をかけてくれ、
「今日もいいお湯だよ!ごゆっくり」
なんて挨拶もして、
時々、誰もいなくて温泉独り占め、なんて時もある。

「はー、今日も一日終わったな~」
「今日の仕上げだね。」

別の温泉に行き出して、小さな露天風呂からお月さまを眺めながら、風呂仲間と今日も温泉に入れた幸せをかみしめ、ため息をつく。

私の借家にお風呂は無いけど、
お風呂があったとしても、きっと温泉に通う。
いつも約束しているわけではないけれど、温泉に行けば、誰かがいる。

「こんばんは!ねえ聞いてよ、今日はこんなことがあったよ!」
「あれ?疲れてる?」
「前言ってた○○どうだった?」
「今日は(お湯が)熱めだよ!」

時には、その日あったことをフンフン話して、水に流して、笑いにかえて、
夏は、お風呂上りに風呂仲間の子供たちと近くの川に蛍を見に行ったり。
時には風呂仲間が連れてきた、赤ちゃんの着替えを手伝ったり。泣かれたり。

なんてことない日常だけど、尊い日々だ。

知らない顔して、お湯につかって、体洗って、出ていくことも出来るけど、

扉を開けて
「こんばんわ」
出ていくときは
「お先に、ごゆっくり、おやすみなさい」
そんな声かけをすると、この町の人は応えてくれる。

「こんばんは」
「おやすみなさい」

たったそれだけで、お風呂で絆が生まれる。

「風呂は友との語り合いの場」

いつまでもこの風呂文化が続いてくれることを願っている。


#ウェルビーイングのために

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