『盲目的な恋と友情』辻村深月 (読書感想文)

二人の女の恋愛と友情について、ほぼ同時系列の生活を二人の一人称でそれぞれ描く。その構成が見事。

他人からしたら些細で平穏に見えるかもしれないその日常は、極めて狭い彼女らの視点に絞って見れば激動で、まさに「盲目的な恋と友情」のタイトルにふさわしい。

辻村深月さんは一番好きな作家さんだけど、読むたびに辛い。
誰もが経験したことがある、でも敢えて誰も言葉にしてこなかった、女の「イタさ」を、拡大して抉り出して、丁寧に文章化する。
劣等感からくる肥大した自意識や嫉妬心があまりに生々しくて、読んでいられない(読む)

「『好き』って気持ちはそんな、何もかもより一番偉いの?それは蘭花ちゃん自身の快楽と欲だよ。」

誰もが意味を理解できるこの言葉を、理解しながらも尚、蘭花は逃れられない。
情熱的な恋というものは、毒だ。
心を蝕み女を盲目にする、甘美で官能的な毒。

私はこの人に選ばれた。
こんな素敵な人と隣にいる、見て欲しい。
羨ましいでしょ?
それは盲目的でありながら、客観的な視点なしでは成立し得ない自己陶酔。
執着と優越感が、恋愛や友情の本質なのだと思わされた。

煌びやかに語られる大学生の「恋」や「友情」を、辻村深月はこんな風に描くのか。

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