『あしたはうんと、遠くへいこう』角田光代 (読書感想文)

一風変わった恋愛小説。
ある一人の女の子の15年間の恋愛遍歴を追った作品。

解説で穂村さんも書いているけど、人生の全てをかけて振り回されるその恋の模様は、さながら激しい戦争のようで、しかも見事に全戦全敗。

恋心にぶら下がるようにして生きて、やれドラッグだ浮気だストーカーだと、どうしようもない失敗ばかり。
恋が終わるたびに今度こそと誓うのに、何度でも同じことを繰り返す。
「私はまたすぐ誰かを好きになる。
性懲りもなく恋をする」
そういえば恋愛って、こんなもんだったかもしれない。

主人公は最後、異国の地へ男を追いかけて旅に出る。
「好きになった男抜きでは、自分は語れない。」
この言葉に不思議と悲壮感は無く、清々しい感じすらする。

確かに自分が好きだった男を追いかけて、あるいは自分自身を取り戻しに、フルスピードの電車に乗って、
「明日はうんと、遠くへいこう。」

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