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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【6月28日㈬~7月4日㈫】

先週の当通信で触れた通り、6月28日に羽田空港を出発し、ローマ経由でイタリアのトリエステに出かけ、29日からの3日間、CINE CITTA主催による“イタリアン・スクリーニング”というイタリア映画の新作ショウケースに参加して来ました(トップの画像は“カナル・グランデ”と呼ばれるトリエステの観光名所の一つです)。

“イタリアン・スクリーニング”の概要や主旨については、去年の同じ時期に当通信で一度書いているので、ご興味のある方はそちらを読んで頂ければ、と思います。2年毎に開催地を変えて今回が20回目。私は6度目の参加となりますが、バーリ→ナポリ→ナポリ→レッチェ→レッチェと、南イタリアばかりだったので、「たまには北に行きたい!」などと去年の通信で文句を言ってたのが主催者に伝わったのでしょう(それはない)、今年はイタリア北東部、ヴェネチアや、ファー・イースト映画祭で有名なウディーネにほど近い、アドリア海に面した街トリエステでの開催となりました。トリエステに行くのが決まってから、1998年に亡くなった随筆家・翻訳家の須賀敦子さんが書いた「トリエステの坂道」というエッセイ集を20年ぶりぐらいに読み返したりして気分を盛り上げましたが、忙しさにかまけてその他には何も下調べせず。ほぼぶっつけ本番で現地に入りました。

日中の試写会場は、ホテルから徒歩10分ほどの街中のマルチプレックス

試写会場はご覧の通りの街のシネコン(というにはちょっと古い)。6クリーンを使って、朝9時から上映が始まります。1日4マスで3日間、12本の映画を観るのが、CINE CITTAからの招待を受けて参加した我々バイヤーに課せられた使命。中には1マス、2マス分サボって観光に出かける人もいますが、基本的には皆マジメに試写します。

クローズドな催しなので、今年も具体的に観た映画の内容をここでは書けないのですが、翌月以降開幕するロカルノ映画祭ヴェネチア映画祭に出品が内定している作品を観せてもらえたり、そうした映画祭に出品されるような、いわゆる映画祭向きの映画とは異なる、ごく普通のコマーシャルなイタリア映画も多く含まれます。去年の上映作のことなら書いても構わないですよね。前者で言うなら、ヴェネチア映画祭に出品前のジャンニ・アメリオ監督の最新作『蟻の王』(5月のイタリア映画祭で先行上映。秋公開)は、何の予備知識もなく、この催しでいち早く観て感動し、速攻で買付けを決めたのでした。後者なら、やはりイタリア映画祭で上映された豪華キャストの群像ドラマ『はちどり』『乾いたローマ』なども上映されていました。

初日の夜はお城の中庭で懇親ディナー

1日4本の映画を観て、その日の“お勤め”が終わると、毎晩懇親ディナーが催されるのは例年通り。今年は一夜目は、大型バス2台に分乗して海岸線を30分ほど走った場所にあるお城の中庭で、二夜目はやはりバスで10分ほど、街はずれの高台にある老舗のトラットリア(肉料理が自慢のようでした)を貸し切りで、三夜目は徒歩圏内、埠頭の突堤にあるシーフード・レストランのバルコニーでブッフェ形式で、と毎回趣向を変えたディナーがセッティングされていました。人を楽しませることが大好きなお国柄なのか、CINE CITTAのスタッフが優秀なのか、企画力の高さには敬意を表するしかありません。

毎晩顔を突き合わすので、各国バイヤーとも自然に会話を交わすようになり、国それぞれの配給事情を知れるのも楽しみの一つ。例えばバスで隣り合わせたルーマニアの配給会社の男性は、3年前に大手から独立して自分の会社を立ち上げ、“イタリアン・スクリーニング”には今回が初参加。何の話からか、ルーマニアにおけるジャパン・アニメーションの立ち位置などを教えてもらったり、デンマークやスウェーデンのバイヤーからは、5月のカンヌで観た是枝裕和監督作『怪物』の感想を聞いたり。アートハウス向けのイタリア映画を配給している、という共通項があるので、英語力に自信のない私も、アルコールの力を借りつつ、ある程度コミュニケーションを取ることが出来るのでした。あぁ、でももうちょっと英語力どうにかしないと!(と、いつも思うのに、のど元過ぎれば…を繰り返しています)

“イタリアン・スクリーニング”ラストナイトは恒例のレッツ・ダンス!

前述の通り、三夜目のディナー会場は、埠頭のシーフード・レストランだったのですが、“イタリアン・スクリーニング” ラストナイトは、ダンスタイムになだれ込むのがお約束。あれ?今年は踊る場所ないの?と思っていたら、ブッフェエリアの階上には、しっかりDJブースを備えたダンスエリアが用意されていたのでした。英語力で劣るなら、レッツ・ダンス!ボディ・ランゲージで勝負ッ!とばかりに体をゆすって温め始めましたが(笑)、同行の日本人チームが「明日は朝早いから、そろそろ…」というので、単身残って踊るほど、実際ダンスが得意なワケではないし(むしろ不得意)、3曲ほど踊って私も早々に退散しました。

トリエステとスロベニアを結ぶサイクリング・ロードからの風景

翌日、仕事を終えて大部分の参加者が帰国の途に就きましたが、せっかくの機会なので私は一日延泊。スクリーニングの3日間には出来なかった観光めいたことに充てることにしていました。ぜひやりたかったのが、隣接する国スロベニアの国境まで走って行くこと。ホテルのフロントのお姉さんに聞くと「自転車で行く人はいるけど、走って行く人は…」と言われましたが、まあ時間はたっぷりある。けど、フロント係のお姉さん、地図を広げながら「確かこの道かな?いや、これかな?」と、いまいち要領を得ず…。まあ行ってみりゃ分かるだろ、と出発。ん~、もうちょっとちゃんと調べてからにすれば良かった…と諦めかけた頃、Giordano Cottur Pathという整備されたサイクリング・ロードの入口を発見、キロ7分ペースでコツコツ走り始めました。

が、8キロほど走ったところで未舗装の山道に…。フロントのお姉さんは「国境までは4、5 キロかしら…」と言っていたのに…とだんだん不安になってきて、「こんなところで迷ったら大変」と引き返すことにしました。後でネットで検索したら、あと4キロほど行けば国境に達することが出来た模様。ん~惜しい!って言うか悔しい!“イタリアン・スクリーニング”、来年ももし招待してもらえたなら、私はもうさんざん参加させてもらっているので後進に道を譲るつもりでいました。だが、しかし、“スロベニア国境まで走る”というミッションを完遂しないままでは終われないかも…(笑)。

texte de Daisuke SHIMURA


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