見出し画像

Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【5月18日㈬~5月24日㈫】

5月17日から始まったカンヌ国際映画祭も後半戦に突入。28日の最終日に向けて、そろそろコンペティション部門の受賞結果の予想が話題にのぼる時期になりました。今のところ下馬評的には『オールド・ボーイ』(’04)で審査員特別グランプリ、『渇き』(’09)で審査員賞の受賞経験があるパク・チャヌク監督の『Desicion to leave』、日本でも人気の高い、ポーランド映画祭でお馴染みのイエジー・スコリモフスキ監督『Eo』、『4ヵ月、3週と2日』(’07)でパルムドール受賞経験のあるルーマニアのクリスチャン・ムンジウ監督『R.M.N.』辺りの評価が高いようです。これから上映のケリー・ライカート、是枝裕和、クレール・ドゥニ監督作辺りがどう評価されるのか、興味津々…。

ではありますが、私は当通信でも前に書いた通り、今年も参加を見送り、日本でお留守番。現地で連日映画を見まくっている元東京国際映画祭ディレクター 矢田部吉彦さんのnoteや、パリ在住の映画ジャーナリストの日本の方が発信するツイート、バイヤーとして参加している同業の方々のFacebookの投稿などを見たり読んだりして、映画祭の雰囲気を遠い東の空からちょっとだけ味わっている感じです。

現地で試写出来ない代わりに、オンラインでのスクリーニングも実施されているのですが、通常の業務をしながらなので、なかなか集中出来ません。加えてオンラインマーケットの登録をしたバイヤーがオンラインで作品見放題なのかというと、そうでもなくてセールスしている会社にいちいちリクエストメールを出さないと見せてもらえない作品が多いのが現実。NETFLIXamazon primeの、気が向いた時に観られるSVODのシステムに慣れてしまっている身には、メールして許可をもらって、指定された時間に観なくてはならないのは、不効率に感じられて面倒臭さ炸裂です。

が、そんな愚痴は言っていられません。現地に出向いているバイヤーの皆さんもオンライン組の皆さんも、来年以降の配給作品を見つけるべく、せっせと現地で、またはPCで試写して、作品買付けを進めているのでしょうから、私も頑張らなくてはなりません。でもこの膨大なDMの量。どこから手をつけていいのやら途方に暮れています…。どなたか「うちではやらないけど、これはザジ向きでは?」という作品を見つけたら、ご一報頂けると嬉しいです。ヒットしそうなのをお願いします。他力本願なザジフィルムズです。

日中のカンヌのオンライン試写はまともにやっていないのに、夜は家で連日配信で映画を観ている今日この頃。週末は『8番目の男』(’19)という韓国映画を観ました。『三姉妹』の次女役ムン・ソリが裁判長に扮した法廷ドラマ。2008年から韓国で始まった国民参与裁判で、陪審員に選ばれた8人の一般市民の話で、パク・ヒョンシクという人気若手の初主演映画。私は不勉強でノーチェックの作品だったのですが、これがシドニー・ルメット監督の傑作『十二人の怒れる男』と、三谷幸喜脚本の『12人の優しい日本人』を足して二で割ったような、笑って泣けるヒューマニズム溢れるコメディで、3年前の公開時に映画館で観ていたら、確実にその年のベストテンに入れていただろうと思います。ムン・ソリ、安心安定の演技です。

画像1

もう1本、ムン・ソリ目的で観たのが『ザ・スパイ  シークレット・ライズ』(’13)。『ペパーミント・キャンディ』(’00)、『オアシス』(’02)で共演しているソル・ギョングとの3度目の共演作なのですが、前2作とは180℃趣の異なる100%エンタテインメントなスパイ・アクションで、シリアスな演技で定評のある主演の2人が弾けまくったコメディ演技を披露していて驚愕。「何もこんな役を引き受けなくたって…」と思えるほどの王道のドタバタ演技ですが、楽しそうに演じているので観ているこちらも楽しくなります。未見の方がいらっしゃったらぜひ観てみて下さい。

で、ムン・ソリと言えばやはり伝説の『オアシス』(’02)の渾身の名演技。3年前にHDリマスター版が劇場公開されたのも記憶に新しいですが、『三姉妹』の公開を記念して、filmarksさんが公開前夜祭として6月16日にヒューマントラストシネマ有楽町で、1回限りの再上映を企画してくださいました。チケットが売れたら実施が決定する仕組みで、現時点(締切8日前です)で、あと23席を残すのみとなっています。この機会にスクリーンでご覧になってみたい方、ぜひご参加ください!

『三姉妹』公開まで、残すところあと3週余りとなりました。今週末には上映劇場で新ビジュアルのコメントチラシも配布開始予定です。俳優さん、作家さん、各界の皆さんの熱のこもったコメントがドッと集まりました。来週の当通信でご紹介出来ると思いますので、楽しみにしてて下さいね!

texte de Daisuke SHIMURA


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?