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縦走登山

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山登りには、ピークハントで登る単体の登山と、いくつもの山頂を踏みながら行く縦走登山があります。ここでは、縦走登山に絞ってその楽しさを分かち合えたらと思います。
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屋久島縦走(回想)

屋久島石楠花を甘やかに潤す雫は、みなもとの一滴 それはまた、山中を轟かす怒涛の流れの始まりでもある。 今年もまたソロの山旅が始まる。 心細さはなく、むしろ一人を楽しむ気持がまさる。 私の心に飛び込む風景は、水の調べと木々の静かな語りと、そして雨の色。 屋久島の雨は微かにけむるモスグリーン。 その雨は静かにゆっくりと私にまとわい、そしてゆっくりと離れる。 宮之浦を出たバスは山中深く切れこむ白谷川を見下ろしながら、気がつけばその流れは目の前に広がる。 梅雨時のそれは一筋の竜

奥多摩、小雲取谷~雲取山~長沢背稜~タワ尾根縦走(回想)②

5月5日、ビバーク地から富田新道に入り、小雲取山を経てここは気持ちのいい登山道だ。生憎の曇り空だが、飛龍山や遠く霞むのは甲武信岳だろうか。 登山道が開けると目の前に雲取山避難小屋への急坂が迫ってくる、が、さほどの距離ではない。避難小屋でトイレを借り、ふと小屋を覗くと缶ビールが2本、”飲んでください”とあったので遠慮なくいただく。ご馳走様でした。 山頂から雲取山荘に向かう。山荘手前には、奥秩父の父「田部重治」のレリーフがある。日本が誇る渓谷の美しさを最初に唱えた方だ。雲取山

奥多摩、小雲取谷~雲取山~長沢背稜~タワ尾根縦走(回想)①

近年の風水害によって、奥多摩の山々も例外なく被害に見舞われ、 支尾根の登山道や林道は未だに通行止めな箇所も多い。 私達がかつて歩いた大ダワ林道は、激しい崩落によって登山地図からも地形図からも今姿を消そうとしている。小川谷林道も復旧の足音は虫の歩みだ。 そんな現状の中、かつて私達が縦横に歩いた、奥多摩、雲取山周辺の登山記録をここに記しておこうと思う。 まだ世の中には地図アプリなんてなく、地図上をトラッキングできるのは、ガーミン社の高級なGPSだけだったと思う。 この時代、道な

鳳凰登山(回想)

南アルプス、鳳凰三山(薬師岳、観音岳) またとない晴天に恵まれての山行となった。 鳳凰は7年ぶり、その時は夜叉神峠の森から三山を縦走して、高嶺~白鳳峠に下ってバスで夜叉神峠の森まで戻った。子供たちも3人一緒に付き合ってくれたが、今回付き合ってくれるのは長男だけ。 11月下旬の鳳凰なので、まだ降雪はさほど期待できないけれど、雪に覆われた白峰三山の展望を楽しみに、芦安の駐車場にて長男と待ち合わせをする。 車1台にて夜叉神峠の森Pに向かう。ここで朝食を済ませて、さあ出発!

一切経山と岳温泉(回想)

東北山巡り二日目の今日、沢を諦め安達太良山の駐車場を追われるように後にした。 <前回のnote> 急遽どこに行こうか思案した結果、一切経山(1948.8m)に決定。 地理不案内なため安達太良山から西福島まで大回りして、磐梯吾妻スカイラインに入った。 高湯料金所のはるか手前から渋滞が始まってしまい、浄土平Pまで2時間もかかってしまう。こんなに混むとはちょっと認識不足だった。 浄土平は1000台も車が停められるらしい。 広々とした駐車場からは、吾妻小富士に登っている人の列や

安達太良山で山中の温泉に浸かる(回想)

くろがね小屋 あれが阿多多羅山(あたたらやま) あの光るのが阿武隈川。          智恵子抄より 10月連休前夜仕事を終え、ガラガラの東名と首都高を抜け東北道に入った。雨の高速に明日の天気はだめかなぁと、半分あきらめの気持ちも。 途中黒磯PAで力尽きて仮眠。 朝は弱雨から上がりそうな雰囲気、今日の行程はたいしたこともないので、 ゆっくりと支度をして、奥岳登山口に車を走らせる。 この時点では、東北の名だたる紅葉の名山までの道のりが渋滞するなどとは思いもよらずのんびり

唐沢鉱泉から南八ヶ岳縦走(回想)

子育て時期真っ盛りの時のお話です。 週末ごとに丹沢の山々を歩き回り「そろそろ八ヶ岳に行ってみたいな」 という会話を相方と。 この時には体力にはまあまあ自信があったし、子供たちもスポーツをしている頃、歩くのに不足はなかった。 ただ、今ほどには登山情報が少なかった時代、同じことを今の時代したら無謀とネットで叩かれたかも。。。 ちゃんとした登山靴を履いていたのは、この年高校に入って山岳部に入部した長男、相方と私は靴流通センターで買った靴床のソールが薄いもの、 二男と三男に至っては運

秋田駒ケ岳から乳頭山縦走、そして大釜温泉へ

神話と現代の中間位なお話です。 山仲間と7月の秋田駒を目指したのです。 私達は夜行バスで、友人は新幹線組とマイカー組に分かれて8合目バス停で落ち合う予定でした。 行ったメンバーが私を含めて、そそっかしいとか何やら問題を抱えるとか、一波乱も二波乱も絶対あるだろなと思わせる面々。 一人は寝坊して新幹線に乗り遅れ、もう一人は車が故障して動かないので、レンタカーを急遽借りる。「この際だから山形ナンバーの新車にしちゃおうぜ」とツッコミも忘れない。もう一人は前日からキャンプ場でキャンプし

奥岩手縦走、最後にご褒美として待っていたお宿

休暇村岩手網張温泉 1日目、後ろ髪を引かれながらも後生掛温泉から、小雨の奥岩手縦走路をひたすら先へと歩を進める。 雨に震え、熊に震えこの日会ったのは2パーティだけ。。。 2日目はたった一人の避難小屋で漆黒の闇と一人ぼっちの寂しさに耐える。 けれど、不思議と怖さは感じない。怖さよりも山登りの疲れでいつとはなしに眠りについた。 3日目も雨だった。。。 三ツ石山荘で最後の決断を迫られる。岩手山に突っ込むか、明日大松倉山を経て犬倉山分岐より網張温泉に下るか。。。 地元の人が、大

八甲田、往復夜行バス現地テント一泊で格安温泉巡り

酸ヶ湯温泉 猿倉温泉 谷地温泉 蔦温泉 紅葉の八甲田山に登る、そして翌日は八甲田の温泉巡りをしようと計画。 東京駅八重洲南口バスターミナルにて車中の人となる。 翌朝いい時間に青森駅に到着、八甲田山の登山だけなら路線バスも出ているが、翌日の温泉巡りのためレンタカーを借りる。 八甲田山登山口には10:30で登山者駐車場はすでに満車だが、酸ヶ湯キャンプ場に宿泊予定なのでそちらに駐車、これはとてもありがたかった。 薬師神社登山口から地獄湯ノ沢という硫化水素が一杯の所を歩いて山頂に

室堂から薬師岳縦走(回想)

夏山へ、喧騒の立山駅に降り立った。 朝から照りつける太陽はジリジリと強烈で、早く高山の風に当たりたい。 抜けるような青空の室堂は清々しく立山へ劔へそして周辺の観光へと、思い思いの旅人の交差点でもある。 私達は、浄土山へのルートを目指す。 相変わらず長男と相方は私を見捨ててさっさと行ってしまう。薄情者。。。 登り途中では、後ろから5歳位な男の子が私にプレッシャーを掛けてくる。 そのたびに父親らしき人が「もっとゆっくり」と声を掛けている。 別に競うわけではないけれど、さすがに

九重から阿蘇へ(回想)

九州の山へ、そして出来る事ならミヤマキリシマの時期に・・・そして坊ガツルでテン泊してみたい。 それは密かな、でも実現不可能な事がらとして長年心の中で思い描いていた夢だった。恐る恐る相方に尋ねると難なくOKが出た。 そして初めての単独テン泊山行を実現したその記録です。 羽田から大空に放たれれば もうそこは一人の気楽さとその先に待っているだろう初めての九州への期待で一気にしがらみから解き放たれる。 とは言うものの飛行機に乗るのはうん十年ぶり、正直怖い。 滑走路を回っていよいよ加

穂高岳縦走(大キレット越え)(回想)

上高地~氷河公園~南岳~北穂高岳~奥穂高岳~前穂高岳~岳沢小屋テント場~上高地 いつかは歩いてみたいと温めていた大キレット、思えば西丹沢のとあるバリエーションルートで出会った小さなキレット越えから、その芽はひそかに育っていたのかもしれない。 その後、南八ヶ岳キレット、八峰キレット、不帰キレットとこれらのキレットを従えた難ルートを歩き、満を持しての大キレット越えとなった。 なんだかコレクション集めのようだが、飛騨山脈という日本の屋根のとんがりを歩ける幸せは、今まで縦走してき

北ア、残雪期表銀座縦走(回想)

燕岳~大天井岳~常念岳~蝶ヶ岳 私はどちらかと言えば体力もないし精神力もそんなに強い方ではない。 なので雪山縦走と聞いただけで、初めに思い浮かぶのは私には無理、 ということなのだが、幸いにも相方と長男というパーティに恵まれ、 今回に関しては予報上では4日間の晴天というこれ以上望めない程の好機で 残雪期北アの縦走チャレンジとなった。 1日目 前回もGWに燕~常念までを計画したが、悪天予報に阻まれ燕岳のみで断念。中房温泉テン場で雷雨の中やけ酒という顛末だった。 好天の予報