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『間宮兄弟』 北川景子、沢尻エリカもいいが、モノポリーを色仕掛けで進める常盤貴子が面白い。

評価 ☆



あらすじ
間宮徹信は小学校の校務員。兄の明信はビール会社の商品開発研究員。2人は仲が良く、大人になっても同じ家で暮らしている。休日、間宮兄弟は一緒にご飯を食べに出かける予定を立てる。徹信は、勤め先の小学校で教師をしている葛原依子が兄と気が合うのではないかと考え、ふたりを引き合わせようとする。



映画はもちろん娯楽商品なんだけど、その一方で、監督の作品という要素がある。ただし、どちらを中心に考えて映画を作ろうか? という監督の迷いはそのまま映画の迷いとなるし、それは確実に観客に伝わる。




『間宮兄弟』は監督の迷いが伝わる映画だった。2006年に公開された森田芳光監督の作品。出演は佐々木蔵之介、塚地武雅など。監督の迷いのせいで面白さが半減したのだろう。観客も大手を振って声援できない部分がある。



かつて森田芳光監督は、『ライブ・イン・茅ヶ崎』という、文字通り、椅子から転げ落ちるほどに面白かった8ミリ映画を作って『の・ようなもの』で鮮烈にデビュー、『家族ゲーム』という稀に見る傑作で地位を築き上げた。しかし、ここにきて彼らしいと評価できる映画を彼自身が作り上げていない気がする。



『失楽園』のヒットを経たくらいから彼がどこに行こうとしているのかがわからない。日本の現代を描こうなんて考えていると、伊丹十三監督的な地獄を見ることになる。市川崑監督のように飄々たる映画を撮影するには独自の映像スタイルが必要になってくるが、まだ確立されていないようだ。



全然話が違うけれど、市川崑が演出したNHKの時代劇ドラマ『逃亡』を観た。すごい。市川演出全開。こういうのを見せられると、やっぱりね。困ってしまう。




スタイルがいま一歩確立しないままで森田監督はヒット作の担い手として日本映画を背負ってしまった。迷いつつ、なんとか前進しようとしている。結果として自己模倣をしているのが『間宮兄弟』である。



『の・ようなもの』ではなく『家族ゲーム』や『メイン・テーマ』に向けての自己模倣。ところが『間宮兄弟』にはかつてあったオリジナリティ部分が欠落している。それが何かはよくわかりません。とにかく、簡単に言えば「あまり面白くない」ということです。



ただし、俳優たちは興味深かった。特に常盤貴子は良いですね。モノポリーを色仕掛けで有利に進めようとするなんてのも笑える。こういう女性がいたら思わず笑ってしまいます。沢尻エリカも可愛かった。北川景子も出てますね。



毎年新作を出し続けている森田監督はすごいなぁと思いながらも、もうちょっとブレイクするような何かを求めちゃいます。だって森田芳光監督ですよ。次回作に期待しましょう。



初出 「西参道シネマブログ」 2008-02-25



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