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『チームバチスタの栄光』 キャストがテレビドラマっぽい。薄氷のような医療技術の上に生命が乗っている怖さ。

評価 ☆



あらすじ
東城大学付属病院の不定愁訴外来に勤める若き心療内科医、田口公子。彼女が同大学病院院長の元を訪れた際、第一外科の助教授である桐生恭一がやってきた。彼は心臓移植手術である「バチスタ手術」を26回も成功させていたが、最近失敗が続いていた。



2008年公開の『チームバチスタの栄光』。監督は中村義洋。出演は竹内結子、阿部寛など。この映画を犯人探しのモノとみなすとつまらないかもしれない。医療に対するリアリティの表現は微妙だし、全体にオーバーアクションが鼻につく。草野球のバットシーンみたいに(観たひとはわかりますよね)。



バチスタチームなんでしょ? あんなにオペの手際悪かったり、問題がある医者だったりしてもいいのでしょうか? とつっこみどころも満載。



むしろ、この映画の面白さは、薄氷のような医療技術の上に我々の生命が乗っかっていることの怖さを認識させられるところだろう。医者が「ほんの数ミリ手元が狂った」だけで死に至らしめることのできる恐怖が常にあることを我々は忘れているかも? という主張である。



手術をすればみんな病気が治るわけじゃないんだよな、ということもわかる。残念ながら映画じゃなくて原作の力だ。



映画としての出来はどうか? 僕が好きなのは犯人が「なぜ人を殺してはいけないのか?」と聞き返すところだろう。悪くない。この問いをこういう表現で演じる役者はこれまでいなかった。



マンガのような微笑みぶりはなかなか不気味である。小山ゆうのマンガみたいな顔である。多分、監督の中に「なぜ人を殺してはいけないのか? 」という問いに対する基本的な解答が見つけられなかったんでしょう。



監督の、製作者たちの迷いがいっぱい出ている作品である。なかなか、難しい問いだけど、自分なりの答えを見つけることはやはり必要な気がする。それができるか、できないかで、この作品は大きく変えたかもしれない。



物語に何らかの答えは必要なのだ。それが「わからない」という結論であっても、そのこだわりが作品を支えているはずなのに。



初出 「西参道シネマブログ」 2009-03-17



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