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【読録】「戦前」の正体

実際の所。
「戦前」のことは、ふわーっとしか把握できてないのが昭和戦後生まれ(昭和30年~63年あたり生まれ)の人々なんじゃあるまいかと思うのです。

いや、確かに学校で教わった先生方には戦前に教育を受けた方もしくは戦前生まれの方達もおられるわけです。ただ、耳にするのはその方達がその方達の立場で経験した「戦前」なわけで。

概観…ではないんですよね。

本作、戦後77年が経った現在と。明治維新以降(1868年)、敗戦として迎える事となった昭和20年までのタイム・スパンがほぼ同じになったことを期して。「果たして我々が触れる『戦前』ってなんなんでしょう?」ということについて、著された新書でございます。

歴史として語るべき攻勢終末点とでもいいますか、損益分岐点とでも言いますか。。タモリ氏が仰っておられましたでしょ?「今は『新しい戦前の始まり』でしょうかね」的なハナシ。

大台ヶ原・神武天皇像でございました。

維新のためには王政復古を持ち上げる都合上、記紀の神話に肇國淵源を求めるしかなく。(なんせ尊皇攘夷っすからね)日清・日露以降、やはり神話の拡大解釈から世界に打って出る為に「八紘一宇」を旗印に置く。

その為に、神話や「神武天皇」が利用されていた時代…が「戦前」という時代の概観。といった切り口でした。

多様化を求めても、拾い上げることのできる情報って新聞とかラジオ。あとはせいぜい地域地域の口コミ・伝聞、回覧板…程度であれば。当時の一般市民さんにとって、国を挙げてのキャンペーンモードに踊らされるのは至当なハナシ。

現代に観る「女系天皇と女性天皇の違い」だとか、ググればすぐにわかるハナシでも。「國体の精華」における「國体」ってなぁに?的なことすら…。「戦前」であれば。

一方的な解釈と、マウンティング史観でさ。「なんだ、そんなこともシランのか」的に(おしつけられ…いや)ご教示戴く仕組みだったのが、なんとなく想像できるわけです。

このあたりは、嫁いびりだわ…図式として。

丹波元伊勢宮御本殿でございます。

知ってる、知ってないはさておき。

本書では、色んなモノが利用されたり曲解・引用・敷衍されて「戦前」は構成されていたんだということが、諸文献・歴史的な推移を例示戴きつつ、アリアリと分かる仕組みになっております。

わかりやすく概観できるんですね。

今現在、新しい問題として提起される事柄。
国会で三原じゅん子女史が「『八紘一宇』の精神を今一度大切に…云々」と嘯く姿勢に、麻生元総理が「アンタ、そんな昔のこと(言葉)。よく知ってんねぇ~」と苦笑しながらコンサバティブに褒めてみる…の図とか。

都合の良いところだけ引っ張り出してできあがる、「昔はやってたでしょ?国威発揚キャンペーン。だから、もっと国民が自国に自信をもてる精神性を取り戻しましょうよう」運動?の正体はきちんと知っておこうね。的な事とかでしょうね。最も危惧されるトコロ。

著者は1984年生まれの方。
なので、戦前の事柄をリアルタイムで伺わされる世代としては「おじーちゃん」「おばーちゃん」世代の方々だったのでしょうか。

いずれにしても「戦前」に関して踏まえておくべき経緯と事象。上手にまとめてあったので、たいへん興味深く最後まで「さらっ」と読めました。

右・左関係なく為になるオハナシかなぁ…と思います。

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