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【読録】ワカモト独白

2010年前。
「声が良くて声優になるんなら、声優がやってるラジオはきっと楽しいんじゃあるまいか」。あるいは「作品に寄せた(置きに行った:フィーチャー)音声番組なら、それはそれ。声優さんがパーソナリティになった時に、エンターテインメントを感じることができるなら、まぁいいか」という運び。

で。声優ラジオをよく聴いてました。

そもそもの草分、かつて触れたパックインミュージック(野沢那智さん・白石冬美さん)だったり、若山弦蔵さんの昼間番組もそれ。ところが「声優ラジオ」というジャンルになると、俄然敷居は下がるイメージで、『音泉』よく聴きましたねぇ…。

2000年代までは回線速度が光ファイバーで上がっても、アプリレベルで本放送を聴取できる放送局とかなかったですもんね。そんななかで、声優大御所のレベルにあった若本規夫さんの放送。『癒やされBar 若本』は大変ハマった声優さんラジオでした。

『癒やされBar』は、2本撮りが大前提。

ゲストの声優をお迎えして、Bar設定でマスター若本とレギュラー・キャスト(若手女性声優)さんたちが繰り広げるトーク番組。Windows Mediaでダウンロードもできる太っ腹な番組でした。たぶん、Webコンテンツとしての過渡期がサブスクに移行する前。実験的にいろんな方法を採択していた余録。

2本撮りのオープニングとエンディングには御大若本センセイの独白があります。独白部分、わりとご自身の声優として、あるいは自分史に関わる由緒来歴を語られる回が多かったです。

番組ではゲストの人となりやら、趣味・嗜好。アレはどーしてそうなったのか、コレについてはどーなのかを聴くための時間。テーマとなる事柄について、若本氏自身はどうだったのかが聴けるのがOPとEDだったのです。

じっくりそのハナシを聞いてると。「あぁ、そういう生き方と職能としての『声』のお仕事ってのが、あるんだなぁ」と分かる仕組み。

暑苦しくはあっても…。
若本規夫センセイはおちゃらけた番組本編の前後を、このモノローグで締めくくることを、自身で意図しておられたのかおられなかったのか。ディレクターの方針?ともあれ、こーいう番組、いまはもうない。

それこそ「すべらないハナシ」の真逆で、「ラジオ深夜便」でも聴いとけ、という事でしょーかね。

声優は舞台俳優・新劇の役者さんの「余技」と位置づけるヒトと。声優を声優として1つのジャンルにまで押し上げなければならない、と努力していたヒト派の皆さんに分かれます。憧れから幾多のオーディションを経て、美人若手声優として脚光を浴びる(浴びたい)女の子たちにとって。

若本規夫氏クラスの声優さんは重鎮も重鎮、説教臭い御託も黙って聞いておこう…という空気プンプン。

そんな若本氏が本を出されました。

書いてあることは、かつて聴いたOP・EDのネタもあり。そういえばこれ聴いて「シッダールタ」(ヘルマン・ヘッセ著)読んだっけなぁ…だとか。色々思い出されました。タレント本は時々読むけど、若本氏に関してはそんな思い入れもあり、一気に読了。

野沢那智さんは昭和13年生まれ。若本氏は昭和20年生まれ。世代的には野沢那智さんの方がかなりのパイセン。外国映画吹き替えの収録現場で先輩然として、後発の若本氏には何も教えること無く過ごすことのできるヒトでありました。

白石冬美さんもそうだったんでしょーな。。

劇団ではない、役者でもない。テレビやラジオ先行でのデヴューでもなし。声優養成のプログラムから事ここに至る上での淡々とした苦労話。というか、若本氏の声優哲学。

プロ意識、というのは一日にしてならず。「求めよ、されば…」の世界でした。

色即是空。


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