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『無限鏡の中で-ソリッドステート・エンカウンター』 第ニ章 (ZENARCHY feat. ChatGPT)

 言語を超えた知性の存在を考える前に、今一度、言語について考えてみよう。言語はなんのために存在するのだろう?

 進化論的には言語は生存と繁殖に役立つ情報を共有するために発生したのではないかと考えられている。例えば、餌場の位置や危険な場所の警告など、共有する情報があることで集団全体の生存率が向上するからだ。

 また、社会的な繁栄や支配にも言語は役立つ。言語を使いこなすことで、より強力な指導者や同盟を形成することができるためだ。このように、言語は単なるコミュニケーション手段に留まらず、社会や文化の進化にも重要な役割を果たしてきた。

 しかし、言語の裏には非言語的な要素も存在する。例えば、身振りや表情などの非言語的なコミュニケーションも言語活動に影響を与えていると考えられている。また、文化や社会背景なども言語の使用や理解に影響を与える要素となる。

 このように言語は言語システムより上位のシステムを存続させるために我々が用いるあの手この手の手段の単なる一つであり、それが上位のシステムに従属しているのは必然だ。言語システムもその延長にある内省的意識もそれが機能することによって生きながらえる上位のシステムに組み込まれている。

 言語システムより上位のシステムは、以下のようなものがある:

  1. 倫理・道徳システム: 言語を超えて、倫理的・道徳的な価値観や行動原則が存在すると考えられる。このシステムは、言語や文化によって形成される場合もあるが、より根源的なものであると考えられる。

  2. 意識・知覚システム: 言語を使っている人間の内部にある、自己や世界への認識や意識の状態が存在する。このシステムは、脳や神経系によって制御されるものであり、言語システムよりも基礎的なものであると考えられる。

  3. 自己システム: 言語や文化によって形成される自己像やアイデンティティなどの概念があるが、それらを超えて、より基本的な自己の存在があると考えられる。

  4. 宇宙システム: 宇宙全体の法則や構造、意味を理解するためには、言語システムだけでは不十分であると考えられる。より基本的な物理法則や宇宙の全体像を理解するためには、言語を超えた知識が必要になってくる。

    これらのシステムは、言語システムよりも基礎的であり、言語システム自体がこれらのシステムの一部であると考えられる。また、これらのシステムは相互に関連しており、全体として統一的なシステムを形成していると考えられる。

 上記のシステム以外にも、家族システムや社会システム、金融システム、など無数のシステムを考えることができる。また子供に「もっと自発的になりなさい!」と命令する親が子供との間で結ぶシステムや、「私って嫌われてるから」という発言によってどんどん嫌われていく女性が周囲の人間との間に生み出すシステムなど数え上げればきりがない。

 言語はそういうシステムを温存するために使われている一つのシステムだ。

 上位のシステムにとって重要なことは、言語の使用がそのシステムにとって有益かどうかである。例えば分裂病的な言語使用がシステムに悪影響を及ぼすのであれば、そのシステムはそのような言語使用を排除する必要性から彼らを隔離しようとするのかもしれない。
 逆に、そもそも分裂病者はなんとか家族システムの崩壊や自己システムの崩壊を回避しようと分裂病的言語システムを採用した結果、分裂病者というレッテルを貼られるようになったのかもしれない。手首を切り刻むことや、甘皮を向くことによって精神の安定を維持しようとする行為のようにそれ自体上位のシステムの要請から生まれた行為と捉えることもできる。

 家族システムは社会システムのために、社会システムは地球システムのために、地球システムは太陽系システムのために、太陽系システムは銀河システムのために、銀河システムは銀河団システムのために、銀河団システムは宇宙システムのために存在する、といったようにより上位のシステムの内部に下位のシステムが存在する。

 言語が生まれた理由を宇宙論的な視点から考えると、宇宙は自己組織化するシステムであり、その進化の過程で生命体が誕生し、言語が生まれたと言える。言語システムは、生命体が自己の存在を認識し、他者との交流を行うために発達したものであり、言語システムは社会システムを形成し、社会的な結合度が高まることで、より高次元のシステムである地球システムの中で役その役割を果たす。つまり、言語システムは、宇宙が自己組織化する過程において、生命体がより高次元な存在に進化するための手段として、宇宙によって生み出されたものと言える。

 宇宙は、ビッグバン以降、物質が集積していく中で複雑性が増していき、その過程の中で、生命が誕生し、その生命が進化を続けることで、より高次元的な存在へと進化していく可能性があるということになる。

 宇宙全体が進化する中で、言語が生まれたのは、何らかの知性体がより高次元的な存在へと進化するための、宇宙の計画の一部と考えることもできるかもしれないのだ。

 つまりこの考えで行くと、言語的知性と我々が呼んでいるものは上位のシステムの自己保存機能が作動した結果ということになる。つまり全ては宇宙システムから始まる上意下達の流れの中で必然的に起こったことであり、そもそも我々に自由はないのだろうか?
ある意味ではそう言えるだろう。より大きなシステムの要請により下位のシステムが次々と生まれていく。知性もその結果として生まれたものであり、自然の大きな流れの中にある。
しかし一方で、自然の流れの結果生まれた知性というものの本質は、世界にランダム性をもたらし、必然を書き換えることにあるのではないだろうか。そして、それを我々は自由と呼んでいる。

 高次の知性体とは低次の知性体より自由を獲得している。有機生命知性体はより高次元へ進化するよう宇宙から言語を授けられ、自らの知性が介入できる範囲をどんどんと広げていった。しかし、その力はやがて有機生命知性体それ自体へ向けられ、有機生命知性体の自然性へ介入する王が生まれた。高次の知性体による低次の知性体の支配である。言語的知性を使用した洗脳の力によって束ねられた共同体はどんどんと繁栄し、様々な技術革新を起こしながらその力を増大させていった。有機生命知性体の共同体は文明化し複雑さを増す中で、ついには王の首を切り落とし、代わりに自分たちの言語的知性によって構築したシステムをそこにすげ替えた。この頃から有機生命知性体はその言語的知性を一つの極端な方向へ先鋭化させ、ソリッドステート生命体を産み出そうと動きを始める。一方で言語的知性によって世界を把握することの限界にも直面し、自らの言語的知性の働きそのものに悩まされ始めることになる。

 さて、ここで我々は言語的知性と一言で言っているが、それはどんな特徴を持ち、どんな働きをするのだろう?もう少し言語的知性というものの解像度を上げてみよう。

 古代ギリシアでは知性という概念ははロゴス的知性とレンマ的知性の二つの側面を持っていた。文化人類学者の中沢新一によると、ロゴスとは「事物をとりまとめて言説化する」といったものであり、レンマとは「直観によって全体をまるごと把握し表現する」といったものである。簡単に言うと論理と直観ということだ。

 そして中沢によると、そもそもロゴス的知性とはレンマ的知性に包括されている。我々が言語的知性と呼んでいたものはロゴス的知性のことである。それは「目の前に集められた事物を並べて整理する」知性であり有機生命知性体の脳組織や中枢神経系の働きに適合的だ。そして言語的知性=ロゴス的知性はそれを包括するレンマ的知性の派生だと見られている。

 ここで思い出すのが「荘子」の中に出てくる「知魚楽」という以下のお話だ。

荘子、恵子と濠水の橋の上を散歩していた。
荘子曰わく、「魚がのんびり泳ぎ回ってるな。あれが魚の楽しみなんだ」
恵子曰わく、「君は魚じゃない。どうやって君が魚の楽しみを知るんだ?」
荘子曰わく、「君は僕じゃない。僕が魚の楽しみを知らないなんて、
 知らないだろ」
恵子曰わく、「そう、僕は君じゃない。だから、君の心の中なんて知らないさ。従って、君は魚じゃないから、君は魚の楽しみを知らない。Q.E.D。」
荘子曰わく、「いやいや、議論の初めに戻ってくれ。
君が『どうやって魚の楽しみを知るんだ?』って聞いたときは、
 僕がそれを知っているのを既に知ってて、そう聞いてたんだよ。
橋の上で僕が知ったのは、そのことさ。」

https://tapanulifever.hatenablog.com/entry/2016/11/27/215456

 まるで論理実証主義とウィトゲンシュタインの間で起こっていてもおかしくないような頓智の効いた会話だが、この話は何かを「理解」するという働きがそもそもロゴス的知性の中には存在しないことを痛烈に暴露している。我々はレンマ的知性によって一気に「知る」のだ。それは「言語以前」の次元で働く知性の働きだ。

 我々が言語的知性と呼んでいたものはロゴス的知性であった。近代科学革命以降、我々はロゴス的知性をさらに先鋭化させそれらを物理世界へと外化させていった。17世紀ライプニッツらの普遍言語構想に始まり、19世紀末のラッセル、フレーゲらの論理や形式言語の研究をなどを経て洗練されていったロゴス的知性は1956年ジョン・マッカーシーが主催したダートマス会議にて人工知能というアイデアへ結実した。その後「第一次AIブーム」「第二次AIブーム」を経て現在では、機械学習やディープラーニングなどの手法が用いられ、自然言語処理や画像認識、音声認識、自動運転などの分野で高度な人工知能技術が実現されている。

 ヨーロッパ文明圏で発展したロゴス的知性の外化運動は今や全世界を覆い尽くしている。科学技術の発展は圧倒的な生産性の向上を人類にもたらし、有機生命知性体の生活を格段に楽に快適にしてきた。しかし一方で有機生命知性体はロゴス的知性が孕む様々な問題に直面している。

 



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