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【ヤバイ】手塚治虫と藤子F不二雄の黒すぎる「女は怖い」短編作!巨匠が描くブラックなヤバイ世界!

今回は手塚ブラック短編として
「女は怖い」をテーマにした異色作をご紹介いたします。

これまでも手塚先生のブラックでアダルトな作品をご紹介してきましたが
今回は藤子F不二雄先生の作品も併せてご紹介したいと思います。

どちらも言わずと知れた国民的漫画家であり
大人が子供に勧めるマンガ家の日本代表のような巨匠のお二人ですが
そのお二方のブラックすぎる短編を堪能していただきたいと思います。

初めての方にはちょっと意外かもしれませんが
お二人とも今回ご紹介する作品以外にも、
非常に沢山のブラック短編を描いておられます。
1本、2本なんて量じゃなくこんなに描いてんの?ってくらい描いてます。
しかもそのどれもが気持ちいいくらいにトンがっているんです。

もう突き刺さってます(笑)。

手塚先生のブラック作品については
このチャンネルでは何度も紹介しておりますが
藤子F不二雄先生も負けず劣らずめちゃくちゃブラック作品を描いているので、その中で今回は「女は怖い」というテーマに絞って
チョイスしてみました。

「鉄腕アトム」と「ドラえもん」という良い子ちゃんの漫画家が
「こんな漫画描いているわけないだろ!」という側面をぜひ
今回は楽しんでもらえたらいいなと思っております。


それではブラック短編いってみましょう。


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それではまずは手塚先生の短編からいきましょう。


ご紹介する作品はこちら
「アポロはなぜ酔っ拂ったか」です。

あらすじは、46歳サラリーマン男性が水商売に夢中になり
ある時、夜のお店で魂を奪われるくらい魅力的な女性に出会います。

奥さんを亡くし5人の息子を抱える彼は
一生見られぬかも知れないその美貌に惚れこみ七日七晩、
彼女の面影が離れません。

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もうどうにも我慢できなくなり猛アタックの末
なんと結婚することになるんです。

しかし

結婚した途端に、本当は化粧の下にはとんでもないブサイクで
どうしようもないグズな女性だったことが分かります。

離婚することを決意すると彼女のお腹には彼の子供がいて
とんでもない手切れ金を要求されます。
そして離婚後に
あろうことか自分の息子が彼女に惚れ
別れた妻と息子が結婚することになるんです。

「あの女だけは絶対にやめとけ!」
「男として忠告するんだ」
アドバイスするも親の反対を押し切って息子は結婚…

なんと息子が元嫁と結婚しちゃうんです。


そして数日後には
「親父の言うとうりだ…別れるわ」と長男は離婚を決意します。

案の定、別れ際に莫大な手切れ金を要求され
離婚するんですが…


なんとなんと

今度は次男と結婚することになるんです。

当然、父と長男は「絶対にやめとけ!」と忠告するも
「親父と兄さんのねたみだ」と言って聞く耳を持ちません。

この後はもちろんブルータスお前もか…
の展開になるのですが

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次々と一家を破滅に導く性悪女…
さぁこのあとは一体どんな結末を迎えるのか?
というのが本編のあらすじとなっております。

男のアホさ加減と女性のしたたかさとでもいいましょうか。
なかなかにシュールな作品です。
「美しい花には棘がある」と言わんばかりの
女性の内に秘めた恐ろしさを皮肉った非常にブラックな作品です。

気になるラストは後半で!



続く藤子F不二雄先生の短編みてきましょう。

ご紹介する作品はこちら
「女には売るものがある」です。
名前からして何やら怪しげな雰囲気を醸し出しておりますが
早速あらすじをみていきましょう。

ある日の冴えないサラリーマン男性
帰宅途中にキレイなお姉さんに呼び止められ
何やら、コソコソ話をした後にそのままホテルへ行くことに。

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一緒にお風呂に入り、久しぶりのいい気分に男は大満足…。
そこへお風呂上がりの女性がベッドに入ろうとすると

男は「バカモノ!誰が金を払ってまでこんなことするか!」
と激怒
そのあと、
新聞持ってこい、お茶持ってこい、うちわで仰げ
など昭和の亭主関白丸出しの男性上位主義の横暴な振る舞いをするんです。

「女は男に従属奉仕するものだぞ」

言い放った次の瞬間に…


「チーン」と時間を告げる音がします。


すると女性の態度が一変し
「時間よ金払っておじさん、消えな」とすさまじい捨て台詞を放ちます。

どうやらこれはそういうシチュエーションプレイを楽しむサービスだったようで「あと10分せめてあと5分」と男は延長を申し出るのですが
その時、扉が開いて警官が入ってきます。

さぁこの衝撃のクライマックスを迎えるわけですけど
一体どんな展開が待っているのでしょうか。
というのが本編のあらすじになっております。


さぁいかがでしたでしょうか。
巨匠お二人のブラックな女性をテーマにした短編
ここからはネタバレしますので続きを知りたくない方は
ぜひ下記のアマゾンリンクをポチって本編をお楽しみください。
ネタバレしてもいいという方はこのままスクロールしてご覧ください。


それではネタバレいきます。


まず手塚先生の方は
本作のナレーションでこの親父の先生にあたる人物だと思うんですが
奈良森先生と言う著名な学者さんのアドバイスが
要所要所に挟まれています。
女に惚れたときはこうしたほうがいいよとか
離婚は良くある失敗だから仕方ありませんとか

そして最後に親父と息子ともども
あの女にズタボロにされた一家が残され
親父が「なぜ先生は一言もお答えいただけないのですか」と思っていると

なんと本物の奈良森先生が
その一家の前に姿を現すのです。

そして

なんとあの奈良森先生もあの女にズタボロにされていたのだった…

というオチになっております。

皮肉たっぷりのブラックユーモア作
どんな優秀な学者であっても魅力的な女性の前には腑抜けになる
男なんて所詮アホな生き物
女の手のひらで転がされているに過ぎないといったところでしょうか(笑)



続く藤子F先生のオチなんですが
警官が入ってきて男は女警官にこっぴどく怒られます。
「家内には内緒で…」とお願いする男に
「家内は差別語です。主人とおっしゃい!」とめちゃくちゃ怒られます。

サービスを提供していた女も捕まり
「おまえなんか全女性の敵なんだよ」と罵詈雑言を浴びせられます。


おや?ですよね。
そうなんです。この時代は女性上位の時代
女が男よりも社会的地位が高い時代なんですね。

そんな地位の高い女が低俗な男なんかに
快楽をサービスするなんて言語道断
女性上位の地位を勝ち取るまでの女性の苦闘の歴史を
踏みにじったとして逮捕されていくというオチなのであります。

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すんごいですよね
女性が男性よりも上位であるという権利を売ったということが違法
とされ逮捕であります。
シュールすぎ。

まぁシンプルに今でいう売春ですね
女性はお金を受け取って男性とチョメチョメしちゃダメよという風刺です

これね、
どちらの作品も女性が上位であるという設定というのがミソなんですよ

これらの作品をより楽しむために掲載された年代の社会情勢を見てみると
よりこの作品が異質であったのかが分かると思います。


手塚先生の作品は1969年
藤子F先生の方は1976年
当時の社会情勢はと言いますと
夫婦の役割分担として「夫は外で働き妻は家庭を守る」という考え方が
約8割を占めていた時代
男性と女性の立ち位置がはっきりと分かれていた時代です。

女性差別とかそういったものではなく
社会システムがそれで機能していた時代であります。

この後に1985年に男女雇用機会均等法の制定を経て女性の社会進出、
女性の社会的地位が一般的になっていくわけですが
この2作品はその前の時代に描かれた作品だということです。

そのような時代背景を鑑みてみると
明らかに本作が異質な設定であるということが分かります。
時代を先取りしていると言うより
当時の社会情勢を皮肉っているという解釈の方が正しいでしょうね。

昔の作品を見てみると基本的に手塚作品に出てくる男は
女性をぶん殴っている描写が多いです(笑)
もう容赦なくひっぱたいています。
「ばるぼら」でもぶん殴っているシーン出てきますからね。


今では完全にアウト描写ですけど
当時はそれが当たり前とは言いませんが
そういう時代背景にあったということです。
そのような時代だからこそ
こういう設定が活きてくる、面白い設定だったということですね。


そして鉄腕アトム、ドラえもんといった国民的マンガを描いている巨匠たちがこのようなブラックな風刺を利かせたマンガを描き残してきた事がまた面白いのであります。
ほんとね、
手塚先生も藤子F先生もまだまだブラックな作品が唸るようにあります。
今読んだら相当ヤバイものもありますし、本当に面白いです。
できればまたご紹介したいと思います。


最後にこの2作品のタイトルについて見ていきます

手塚先生の「アポロはなぜ酔っ拂ったか」というタイトルは
作中でちょうどその時アポロ12号が月面着陸し
何もすることがなくバカバカしくなって乗組員が酒を飲んで酔っ払っている映像を見て自分たちもバカらしくなって酔っ払ってやるという意味が込められています。

そして月には何もない事が分かっているのに人類は月を目指す
つまり得るものが何もないと分かっていても月へ飛び続けること、と
無用の長物と分かっていても男はいつも女を追いかけ続けていること
がかかっているヒネリの利いたタイトルになっているんですね。


一方藤子F先生の
「女には売るものがある」ですが
売るものは決して体やサービスじゃなく
手に入れた権利を売っているという最高にひねりの利いたタイトルになっていますね。

どちらも一見すると意味不明のタイトルですけど
オチまで読むと「あぁなるほど」というシュールなネーミング
どちらも短い短編ながらやはりマンガとしての完成度は高いです。
社会風刺のお手本と言える短編であります。


今回ご紹介した作品はこちら
手塚先生の「アポロはなぜ酔っ拂ったか」は
講談社漫画全集では雑巾と宝石 (手塚治虫漫画全集)

キンドル版もあります

そして手塚治虫文庫全集の「フースケ 」にも収録されております



こちらは以前にもご紹介したド変態短編がたっぷりと収録されております。
女性の性欲が暴走した短編など強烈な大人短編ですのでぜひご覧になってみてください。
おすすめです。


そして藤子F先生の
「女には売るものがある」
藤子・F・不二雄[異色短編集] パラレル同窓会: 4 に収録されております。

パラレル同窓会: 藤子・F・不二雄[異色短編集] 4 

この藤子F先生の異色短編集もブラック作品がてんこ盛りで最高に面白いのでぜひご覧になってみてください。
藤子不二雄先生ってA先生の方がブラックのイメージ強いですけど
このF先生のブラックはなかなかに強烈ですよ。おすすめです。


というわけで今回は手塚治虫先生と藤子F不二雄先生の異色短編のご紹介でした。

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