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【手塚治虫漫画全集】全巻紹介 第16弾!337巻~351巻編

手塚治虫と言えば
ギネスブックにも載るほど膨大な数の作品を残している作家であります。
だから「名前は知っているけど何を読んでいいのか分からない」と言う方も多いと思いますし、ファンの方でも全部読んでいる方は少ないと思います。
そこでこの【note】では講談社発行の手塚治虫漫画全集をベースに
手塚作品をガイド的に紹介しています。

手塚治虫漫画全集は全400巻あり、今回はその第16弾!

337巻~351巻までのご紹介となります。
それでは本編をお楽しみください。


「ルードウィヒ・B」


この作品は『グリンゴ』『ネオ・ファウスト』と共に手塚先生の絶筆になった作品の一つです。
ボクが絶筆の中でも最も続きが読みたい絶筆の作品のひとつ。
手塚先生が病床で手が震えながら描いたとも言われ
気力を振り絞った最後の最後に描かれた作品のため
鬼気迫る筆圧にほんと胸が締め付けられます。
こんなん普通ベッドの上で描けませんよ。

この作品は手塚先生最後の作品というだけでなく
手塚先生の大好きな音楽がテーマというだけで読みごたえがあります。

ストーリーは
あのベートーヴェンの物語。
タイトルは本名ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンからきています。

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モーツァルトなど実在の人物も登場し
架空の人物を添え手塚色を織り交ぜながらベートーヴェンの幼少時代から描いており重厚感あふれるドラマとなっております。
ここら辺の描き方はもはや熟練の技ですね、
面白くないわけがありません。

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ストーリーもさることながら
本作の注目すべき点はやはり平面で表される「音楽」ですね。
「音楽を絵で表現」するという技。
これまで沢山の音楽マンガがありましたが
この作品をもっと注目されてもいいんですけどね。
ブロックを積むように音楽を立体的に表現したり
文学的表現の「音」の存在感はまさに秀逸。

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滑らかな曲線の手塚タッチがより一層、
音楽の旋律を引き立立てせくれます。

音に魂を込めるベートーヴェンの指さばきからは
本当に音楽が聞こえてきそうな凄まじさがありますね。

このあとベートーヴェンの名曲がどのようにして生まれたのか
第九のオーケストラを作中でどのように2次元で表現するのか?
今となっては見ることが叶わなくなったのが本当に残念です。

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病床にあって資料云々はほとんど用意できなかったにも関わらず
ここまで描けるのは脳ミソに保管されている膨大な知識に裏打ちされたもの
それは決して締め切りに追われて描いた義務感ではなく
好きすぎて溢れ出る衝動を抑えられないペン捌きが感じられます。

手塚先生と言えば
仕事中ずっとクラシックを大音量で流しており、ピアノの腕前もプロ級
音楽へのこだわりというか、その愛し方はマンガを愛する事にも
匹敵するこだわりで変態的。音楽というものを単なる趣味や余韻で楽しむというものではなく、もはや生活の一部として密着しており
日常生活においての重要な要素、手塚治虫の根底に宿る魂のような存在になっています。


『ジャングル大帝』の時も、オーケストラを結成して交響曲を録音したこともありますし作中でも動物たちがオーケストラを歌うシーンもあります。

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「虹のプレリュード」「雨のコンダクター」と音楽を題材にしたマンガも残していますし、ほんと心から音楽が好きなんだなと痛感するとともに
漫画家としてのスケールの大きと、深さ、表現力、こだわり、愛情が人並み外れているなと改めて脱帽してしまいます。

クラシックが大好きなんだけども精神はパンクかロック
音楽にまみれた、そんな手塚先生の音楽をテーマにした未完の絶筆ぜひご一読されてみてください。


「七色いんこ」


1981年作
演劇がメインのお話です。
代役専門の天才的舞台役者にして
裏の顔は観客から金品を盗み取る泥棒という異色の主人公

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1話完結型の物語で
ブラックジャックをイメージをしてもらえれば解りやすいと思います。

ブラックジャックもそうですけど
ほんと決められたページ数での構成力は流石。
1話に凝縮された圧縮感は見事です。

そして本作はなにより
演劇通の手塚先生ならではの演劇をモチーフにした作品が多く登場します。
演劇通でもあり大の映画ファンでもある手塚先生
タイトルのほとんどが実在する演劇からとられているんですけど
題材がわかりません(笑)

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ストーリーとか題材は公式サイトに詳しく記載されているので
リンクを貼っておきますのでご覧になってください
きっとその知識量の深さに感嘆しますよ


そして実は手塚先生は
大阪の劇団に3年ほど在籍していたそうで、根っからの演劇オタク
なのに
単純に「お芝居が好きだから描いたらしい」と思われていることについて
手塚先生は完全に否定しています。

むしろ大好きでその影響をモロに受けている証拠がかのスターシステム

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スターシステムとは手塚キャラをひとりの俳優として考え、
作品によって出演しているという考え方です。
手塚劇団の俳優には、ロック、ヒゲオヤジ、ハムエッグ、ランプなどたくさんいますがこれらのキャラは
キャラクターが作品によって違うキャラクターを演じているというわけ。

だから手塚作品のキャラは良く死ぬんです。とも言っています。
その作品でキャラクターは死んでいるが実際は死んでいないと…。
俳優として生きているというわけです。

これらの考え方は劇団員のときに思いついたそうで
その経験が活きたとも語っております。


手塚治虫の描くキャラクターはマンガ作品の登場人物ではなく
手塚治虫座長の属する劇団の劇団員という位置づけなんですね。
だからマンガの中で死んでも
そのマンガが終わっても常にキャラクターは生き続けているんです。

そんな演劇をこよなく愛した手塚先生の描く
演劇を題材にしたマンガ、ぜひご一読されてみてください。

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「プライムローズ」


1982年作
手塚先生がSFを意識せずに描いたという大河ロマンのはずが
しっちゃかめっちゃかのSFマンガになっています。
SFを意識せずに描いたSFマンガというだけでもうこの作品の爆裂さが理解できるかと思います(笑)

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もう構想段階から凄まじいですよ。いきますよ。

手塚先生いわく…
二つの部族、二つの国の対立、小競り合い、暴動、革命
当時のソ連とポーランドみたいな関係を描いたと。
そしてこの部族のモデルはイースター島で
それと「風と共に去りぬ」みたいに運命にどういうふうに流されるか描きたいと語っています。

この時点でも結構難しい設定なんですが(まだ続きます)
超能力を持つ少女が支配国の人間だけど実際は被支配国で育っているとか
モーゼの「十戒」のイメージとか
核戦争で文明が滅びて、また中世に戻って
文明がまた進んで、また滅びて砂漠になる。未来とも過去ともわからないここら辺をボカした形でやりたいとも言っています。

もうこの時点でついていけません(笑)

地殻変動現象も描きたいし、これらを当時の時代背景にあてはめ
一種の宇宙進化論的な形に持っていこうかな、とも言っているんですね。

それをSFっぽくせずにしたいというSF作品なんです。
もうなんだか分けわかりません。

実際作品もわけわかりません(笑)

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1982年当時の時代背景と言えば
漫画界はロリコンブームまたラブコメブームで
「うる星やつら」のラムちゃんみたいにヒロインのちょっとお色気が
少年漫画のニーズが多かったんですね。

狙ったのかは定かではないですが(多分狙ってる)本作のコスチュームは
ラブコメやロリコンマンガに対する対抗心が垣間見れます。
というより手塚先生なら間違いなく意識していたでしょうね。
半裸や全裸の描写も出てきますしね

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スターウォーズの影響も感じられます。
エミヤの石化もハンソロの冷凍か石化の影響を受けてるでしょう。
SFでありながら時代劇のチャンバラありスターウォーズっぽさが随所に見えます(笑)
このように晩年の大御所が色んなチャレンジをしながらも
編集さんがそれに逆らえず段々と尻すぼみになっていく作品(笑)

まぁ鍋になんでも入れちゃえって、入れたはいいけど
結局これ「なに鍋なの?」ってマンガになっちゃった感じですかね。

個人的には駄作のひとつに挙げられる作品です
先生…これは解読不能な作品でした。


「ゴブリン公爵」

晩年の傑作と言えば「アドルフに告ぐ」「ネオファウスト」「ルードウィヒB」などが思い浮かびますがこの「ゴブリン公爵」はその中でも異質なくらい面白くないです(笑)


今回はここまで

次回はいよいよ最後のご紹介


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