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【異修羅】『強い』が読めるライトノベル!この関係が好き!!

全員が最強
全員が英雄
一人だけが、勇者。

それは最強と最強がぶつかり合う、魔王が殺された後の世界
無数の常軌を逸した『修羅』たちが、本物の勇者の座を懸けて争う物語。

https://dengekibunko.jp/special/ishura/

というわけで、電撃新文芸から発売されているカクヨム発の異世界ファンタジーバトルラノベ『異修羅』の感想・紹介です!

最新三巻までのネタバレを一部含んでいますので、
気にされる方はその辺り気を付けてお読みください。
なお、私はWeb版には目を通していないので、その辺もね!

『異修羅』って?

おおむねは序文で説明した通りですね!

世界に恐怖をまき散らしていた本物の魔王が死に、けれどそれを為したであろう本物の勇者が不明なままの、歴史の転換点を迎えたファンタジー世界。

魔王後の世界が復興へと向けて進む中、魔王の時代を生き残る為にいくつかの国が統合され生まれた大国『黄都』は、これからの世界の覇権をより確実なものとすべく政略を進めていた。

その一環として開催されるのが、この物語の中心となる修羅同士の戦い。
『本物の勇者』を決定すべく行われる上覧試合、『六合上覧』

戦いに参加するのは、魔王すら倒せるとされる実力を持つ、常軌を逸した無双の英雄たち。一人一人が最強と呼ぶに相応しい力を備えた彼らは、それぞれの目的を叶えるため、勇者の座を懸けて相争う。

我々の世界に近い異世界『彼方』からの転移者や、あらゆるダンジョンを踏破するワイバーン。世界の理を味方につけた少女に、不可視の天使に守られた始末屋や、音すら置き去りにする神速のスケルトン。

彼らを始めとする勇者候補たちは、『最強である』という一点以外は何もかもが別物で、多種多様だ。

果たして勝ち上がるのは誰か?
本物の勇者はこの中にいるのか?
戦後の世を掌握しようとする黄都。
それに抗する小国や組織とのせめぎ合い。
そして……本物の魔王とは、果たして何だったのか?

謎と政略と因縁が、『六合上覧』に収束していく。

全員が最強、
全員が英雄、
一人だけが、勇者。

混沌と恐怖が過ぎ去った筈の世界は何処へ向かうのか。


『異修羅』とは、そういうお話です。


バトルと駆け引きが面白い!

お話の要点は前項で挙げた通り。
つまりめっちゃ強い奴とめっちゃ強い奴がぶつかり合う部分と、クソデカ国家内の勢力争い部分大国と小国・組織との政治含む軍事的な争い部分の三つが主な構成要素と言っても良いでしょう、多分!

で、このバトルと駆け引きがめっちゃ……良いんですね……

作中には、『修羅』とか『英雄』とかそういった言葉で称される常識外れの強者ゴロゴロいるんですよ。いわゆる異世界転移を果たして、現代知識やら異世界の戦闘技能やらで無双する人たちもいれば、この世界における魔法の類で天才と呼べる域に立った人たち、そもそも種族として強い生物に、修練の結果として達人になった者、強力なアイテムを複数使って戦える者とか、そういう特徴をいくつか兼ね備えたやつ。

一人でもいたら環境ぶっ壊れのハイスペック能力者たちなのに、そういう常識はずれが少なくない数存在しているせいで却ってバランスが取れている。いや、んなわけあるか。そんなわけはない。そんなわけはないので、相応の処置をしないといけないよね……というごく自然な発想が生まれてもいる。

話は少しズレましたけど、そんな修羅同士がぶつかり合うので、戦いの規模というか、次元が高いんですよね。

この修羅はこういう特徴を持っており、強い。
対する修羅はこういう特徴を持っており、強い。

両者の格をしっかりと描写して持ち上げた上で、決着はさらりと鮮やかに。
ド王道な描き方が心地よくて、決着の時に「ふぅ」と息を吐きそうになる。

で、こういう特徴や強みの描き方は、バトルだけでなく政治的・或いは戦略的駆け引きの場面においても活かされていて、各々が何故そう動くのか、理由をきちんと描写した上で、持っている情報や取った手段の差によって状況が変化していく。要点が理解しやすい内容でまとめられているから、『何が凄いのか』が頭に入りやすくて、楽しい。

すごく優秀なキャラクターたちが己の優秀さを存分に発揮する物語が好きなら、読んでおいて損はない……と思います。本当に。

でも、私が『異修羅』の中で特に気に入ってる部分は別にあってね……?

キャラクター同士の相関が好き

これよ。もう……これよ。
『異修羅』はその性質上、登場人物がとても多い話なんだけど、少なくとも修羅の面々においては埋もれたりキャラ立ちしてない人は全然いないと思える。その理由がキャラクター同士の相関。どのキャラクターも、色々なバックボーンを抱えて他のキャラに感情を向けたり、向けられたりしている。

その最たる部分が、『星馳せアルス』『静寂なるハルゲント』の関係性だろうか。

『星馳せアルス』ワイバーンの冒険家。
数多のダンジョンを踏破する力を持った彼は、生まれ付いて生えていた三つ目の腕を以て魔具を操る。ダンジョンのレアアイテムをガンガン使えるし、その力で更に別のダンジョンをクリアしてレアアイテムを確保できる。やりたい放題。知名度もかなり高くて、勇者候補の中でも最強格の一角では、と言われていたりもする文字通りの英雄。でも興味の対象はお宝だけで、大概の他者には興味がない、冷めたように見える性格。ただ一人の例外を除いて。……その例外が、『静寂なるハルゲント』だ。

『静寂なるハルゲント』黄都第六将の無能。
地位はあるけどぶっちゃけ能力は全然ない。異修羅レギュラーキャラの中で珍しい、そしてダントツの無能。じゃあなんでそんな出世出来てるんだって話だけど、人類の天敵であるワイバーンを懸命に討伐し続けてたから。大事なことなんだけどね。ついたあだ名が『羽根毟り』。およそ他者から尊敬されることのない残念な中年男性なんだけど、そんな彼をただ一体だけ心から尊敬しているヤツがいる。……『星馳せアルス』だ。

アルスはハルゲントを尊敬している。
能力が云々じゃなくて、その心からの強欲さに敬意を抱いている。
大した実力もないのに仕事の数をひたすら熟して出世して、無能だから地位も危ぶまれるわけだけど、だったらと奮起して更に功績を立てようとして失敗して、被害も増やして、周りから失笑されて、それでも「自分を裏切ることは悪だ」と己の無能に苦しみながらも立ち上がり、前へ進もうとする。
アルスはそんなハルゲントの強欲さにこそ救われて、誰もが知る驚異的な存在にまでなったのだ。具体的な話は第三巻に書かれているんだけど、ハルゲントがいなければアルスは弱い卑小なワイバーンに過ぎなかっただろう。

ハルゲントは、己とアルスの間にある差を理解している。
アルスの尊敬はハルゲントにとって重すぎる。けれどハルゲントはだからこそ、アルスをライバルだと強弁し、彼を超えようと、討ち取ろうと努力する。……結果として彼は、アルスを倒し『最強を連れてきた』と豪語するためだけに、ある存在を引っ張ってくることになるわけだけど。無能だから仕方ないね。どうするんだろうねあれ……

とまぁ、アルスとハルゲントとの、己の存在の根幹に食い込むライバル関係も美味しいんですが、アルスと言えば第一巻に登場する『夕暉の翼レグネジィ』との関係性も美味しい。

『夕暉の翼レグネジィ』は、ワイバーンの司令官。
黄都に加わらず新公国を名乗る小国に所属する。人とは相容れないとされるワイバーンたちを、彼だけが統制し、危ういながらも共存させることが出来る。けれどその実態は……。高い知性と指揮能力で、レグネジィはアルスに肉薄する。実のところ彼とアルスは同じ群れで生まれた存在であり、レグネジィはアルスを「群れから逃げた無能のグズ」と強弁する。

ワイバーンは本来なら群れで生活する種族で、確かにアルスはそこから外れた存在だ。けれどレグネジィがアルスに抱く感情は、ただ群れから逃走しただけの個体に投げかけるには強烈過ぎる。……実のところ、レグネジィは「誰かが群れを統率しなければならない」「それは逃れ得ぬ義務だ」と考えていた。……その義務から外れ自由に飛び回るアルスに対し、彼が感じていた感情は……怒りか、嫉妬か、憧れか、その全てか。
統率者であらんとするレグネジィは、ある種道を違えた。義務に対し真面目に向き合い、逃げる事が出来ない性格だったが故に彼は歪みを抱き、歪みはアルスへの暗い感情へと変質した。レグネジィがアルスへと向ける感情の刺々しさと哀しさが、実のところ私が異修羅を好きになった一番の理由でもある。

そんな苛烈な精神状態で生きるレグネジィにも、心を許せる相手が一人だけいた。それは目の見えない少女『晴天のカーテ』。人類の天敵たるワイバーンに対し、その姿を知らない少女は言う。「レグネジィが天使だったらいいのに」。


……と。まぁ。
一例をあげるだけでも長くなってしまったけれど、単体でも強く、強烈なキャラを持っている登場人物たちは、その強さや立場故に他のキャラクターとも深い関わりを持ち、感情を向け合う。

その感情の性質が、こう……趣味に合う。
特にレグネジィ周りは本当に好きなんだけど、アルス周りでも『おぞましきトロア』関連も好きだし、そんなトロアと相対することになった『無尽無流のサイアノプ』のバックボーンも好きだし。『戒心のクウロ』周りは個人の話としても好きだけど、その後のクウロ周りの動きも楽しいし。

まぁもちろん、登場キャラクターが多いと、関係性を大して構築していないキャラクターとかもいる。『冬のルクノカ』さんなんかは他者への特別な感情は一切抱いていないんだけど、だからこそ、その恐ろしさや厄介さが強調されるキャラクターだ。一番最初に登場する『柳の剣のソウジロウ』はその精神性故に、戦いのみに興味を抱き関係性の面ではあまり広がりを見せない。……ただ、そんなソウジロウに対しては、最も近くで行動を共にする少女が明確な殺意を秘めていたり、個々人への強い興味を持たないソウジロウの口からある人物の名前が出てきた時などは、一種のゾッとする感じを味わえる。

『不言のウハク』というキャラクターの話で他のキャラクターの名前が自然に登場し、後に当人がウハクに関して言及するなど、緩やかな繋がりが描写されていくのもまた楽しい。

キャラクターが多いと持て余してしまうのでは、と思う所ではあるけれど、少なくとも『異修羅』においてそんなことは無いのだ。登場人物はそれぞれの良さを高め合い、物語上不要になったら退場する。一時的にしろ永続にしろ、賑やかしで無用なキャラクターが描写されつづける事はないので、安心してほしい。好きなキャラクターが退場する気配を感じたら? ……祈っておいてください。


とにかく読もう

『異修羅』の大まかな魅力はこれで伝えられたと信じる。
まぁまぁ、個別のキャラに関しては全然語り足りないところもあるのだけれど、そこはそれ。上記の内容で興味を持った方は、ぜひ一度読んでみてほしい。各巻試し読みもあるので、まずはそこからというのも一つの手だ。

https://dengekibunko.jp/special/ishura/

カクヨムではWeb版が今でも無料で読めるのだけれど、書籍版はWeb版に大きく加筆修正を加えているようなので、その辺り折り込んで好きな方から手に取るのもアリかも。私はWeb版に手を出してないので、そちらがどうだこうだとは言えないのですけれども。


ちなみに、私が好きな修羅は今のところ、
『夕暉の翼レグネジィ』『音斬りシャルク』
『戒心のクウロ』『おぞましきトロア』『星馳せアルス』
あたりが好みです。人外多いな。好みがわかりやすい。
お読みになった方は、好きな修羅について教えてね!


それでは、この辺で紹介を終わります。
お読みいただきありがとうございました!

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