行政評価関係の書籍紹介


(クレアレポート№373カナダ・オンタリオ州の自治体における業績測定)

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 行政評価の図書で取り上げられる海外事例は多くが、米国または英国ですが、こちらのレポートではカナダの事例が取り上げられています。
 学者目線ではなく、実際に地方行政に携わっている職員が自治体国際化協会に出向して作成した調査レポートという点でも独自のものがあると感じます。

1 オンタリオ州の業績測定の概要
 オンタリオ州では、2001年から「自治体業績測定プログラム(MPMP)」という州内の自治体の業績を統一的に測定する仕組みがあります。レポートの対象になっている2011年度時点で13分野の93指標を測定するよう定められています。

2 導入の背景
 オンタリオ州では2001年に自治体法が制定され、州から自治体へ権限が大幅に譲渡されました。それに伴い各自治体の業績を横断的に測定し、比較ができるようにするために導入されました。

3 指標の選定基準
・自治体の主要な支出を反映していること
・州・自治体が関心ある領域を反映していること
・一般の人々にとって高い関心があり価値があること
・比較的容易にデータを集められること
・自治体の権限のもとにあること
 2011年現在、予算ベースで自治体が提供するサービスの約8割をカバーしている。
 指標は、効率性に関するもの(サービスを提供の単位費用)、有効性に関するもの(目標に対する達成度)に大別されます。

4 情報公開
・各自治体は州へ報告したデータを住民へ公開する
・州全体のデータは自治体のみ閲覧可能、自治体が特定できない内容のレポートは一般公開される。

5 住民の反応
 レポートでは、州全体の担当者と2自治体の担当者に取材しているが、一般住民からの問い合わせはほとんどないということである。
※カナダでもシティーマネージャー制度が普及しているようなので、行政経営を専門とする幹部層が内部改善のために利用している割合が大きいのではないかと推測します。

6 感想
・海外における住民の実際の反応について学術書では触れているものを見たことがないので、これは自治体職員ならではの視点なのかもしれません。
・統一的な基準でのベンチマーキングは、日本では福井市の”比べジョーズ”や町田市の”行政サービス水準他市比較調査”といった取り組みがありましたが、現在は行われていなさそうです。
※MPMPも2015年を最後にデータが確認できないので、現在は中止されているようです。