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突然ですが、この「紅紫色のじゅうたん」、何の野菜でしょう??ヒントは…よく、お刺身のそばにいます。

こんにちは。全農広報部note編集部員Nです。
さて、今回は野菜クイズから始めてみます。

この紅紫色の小さな葉っぱたち。皆さん、何の野菜かわかりますか?

角度をかえて見てみると…。







正解は こちら! 👇

よくお刺身に添えられている小さな紅いやつ、「紅たで」です。
そのまま食べるとピリリと辛みがありますが、お刺身と一緒に食べると辛みがやわらぎ、葉っぱの食感がちょっとクセになる…。実はひそかにお気に入りです。

紅たでは「タデ」の若芽を収穫したもの。そう、「蓼(タデ)食う虫も好き好き」のタデです。
タデは日本や中国が原産で、河川などの水辺や湿地に生える背丈の高い植物。鎌倉時代の文献に登場するなど日本では馴染みが古く、中国でも解毒や虫除けなどの漢方民間薬、ヨーロッパでは利尿剤や下痢止めに使われるなど、世界各地で薬用として使われていました。
食用に用いられるのは柳の葉に似た「ヤナギタデ(ホンタデ)」で、発芽したばかりの新芽を収穫します。

紅たでの生産量全国1位は福岡県で、全国シェアの8割を占めます(令和2年産地域特産野菜生産状況調査より)。
産地の福岡県朝倉市で紅たでの栽培が始まったのは1982(昭和57)年。当時は、タデの栽培に関する情報もなく、国の試験場などに協力してもらいながら、生産者の皆さんは試行錯誤したそう。今では品質の良さが評判となり、JA筑前あさくらの紅たでは「博多 本たで『四季紅』」「プリティナ※」という名前で店頭に並びます(※プリティナは「プリティな菜」から名付けられたそう!)。
 
――と、物知り顔で話していますが、実は先日、JA筑前あさくらの生産者さんに教えてもらいました。

というわけで、今回は「紅たで」の生産現場を紹介したいと思います。実は私も紅たでの圃場(ほじょう。畑のこと)を見るのは初めて。一体どんなふうに栽培されているのでしょう。わくわく…。

私的初見参!紅たでの畑にお邪魔しました

というわけで、JA筑前あさくらの営農指導員・深見 修平さんとJA全農ふくれんの野菜担当・浜口 敏さんに連れられ、やってきたのはJA筑前あさくら紅たで部会の鳥居豊広部会長の畑です。
紅たではビニールハウスで育てられているんですね。ハウスの中に入ると…。

「ベッド」と呼ばれる、1m20cm幅の播種(はしゅ)床に紅紫色の紅たでがびっしり。レッドカーペットならぬ、紅紫色の紅たでカーペットが広がります。

ジョリジョリジョリジョリ…

と、心地よい音が聞こえます。ビニールハウスの中では、紅たで部会長の鳥居さんがちょうど収穫作業をしていました。紅たでの色が一番いい午後に収穫するそう。

紅たでは種をまいてから、双葉が出て1cmほどの大きさになったら収穫です。刃を寝かせた状態で紅たでに当て、丁寧に、かつ素早く、刈り取ります。

収穫には専用の包丁を使います。小さく繊細な紅たでを素早く刈り取るため、切れ味抜群。手入れが行き届いています。
収穫後、作業場で2回水洗いをして、紅たでに付いた土や小さな葉っぱ、種がらなどを洗い落とします。

収穫された紅たでが旅立つまで

収穫した次の日の午前中、作業場では紅たでの選別、パック詰め作業が行われていました。

紅たでの中に緑色の葉っぱや色の悪いもの、枝などが紛れていたらピンセットではじきます。皆さん、手慣れた様子でサクサクと作業していましたが、なんて細かい…。目がチカチカしてきます。

パックに詰めたら、輪ゴムで止めて、いざ!旅立ちです。

JA筑前あさくら紅たで部会は、部会長の鳥居さんはじめ、総勢8軒。
メンバーの皆さんは各々の作業場でそれぞれパック詰めした紅たでを、午前10時までにJA筑前あさくらの集荷場へ持ち込みます。

おや?皆さんが持ち込んだ紅たでが机の上に並べられ、何やらチェック表のようなものが…。

まん丸い葉っぱの「丸葉」。主に関西へ出荷されています。

1パックあたりの容量は適正か。しっかり洗われているか。紅色の葉の中に緑色の葉っぱなどが混じっていないか――。

紅たで部会のメンバー全員で、各々が出荷した紅たでの品質をチェックします。

紅たでは福岡県内をはじめ、東京や大阪など全国各地の市場へ出荷しています。その日出荷された紅たでの品質や葉っぱの大きさを確認し、各市場のニーズに合わせて割り振ります。

ちなみに、JA筑前あさくらの「博多本たで」は葉っぱの色で「四季紅(紅たで)」と「青たで」に分けられます。「青たで」も紅たで同様、独特の辛みと風味があります。

品質チェックを終えたら、旅立ちの準備に取り掛かります。鮮度を保つため、発砲スチロールの箱に筒状に凍らせた氷と一緒に詰めます。

同時に次の出荷に備えて筒状の氷を準備します。筒状の袋に水を入れ、冷凍させます。

発砲スチロールのふたをしたら、出荷先ごとに必要な数をまとめて、宛名をペタリ。

トラックへ積み込み、いざ出発です。いってらっしゃ~い!

以前、小ねぎ記念日の投稿で、「博多万能ねぎは福岡・朝倉の大地から東京へ、毎日飛行機でお届け」と紹介しましたが、東京へは紅たでも一緒に飛行機で運ばれているんですよ。少しでも鮮度を保ったまま届けたいという生産者の皆さんの思いが込められています。もしかしたら、私が乗った飛行機に一緒に乗っていたのかも??

葉っぱがちょっと細めの「細葉」

さて。お刺身に添えられることの多い紅たでですが、それは彩のためだけではありません。

タデは古くから解毒や虫除けに使われていたように、傷みやすい生魚の毒素を消し、生臭さをとる働きもあるからで、理にかなっているわけですね。また、ピリリとした辛みはタデオールという成分を含んでいるから。タデオールは味覚神経を刺激して食欲を増し、消化を助ける働きがあるそうです。
紅たでは小さな葉っぱですが、福岡県農業試験場の分析によると、ビタミンCやビタミンK、マグネシウムなどを豊富に含むとか。その機能性に注目し、JA筑前あさくらが福岡県農業総合試験場ら関係機関と共同研究を実施したところ、アントシアニンの一種・イデインやカロテノイドの一種・ルテインなどの含有量が高いことも明らかになりました。これらは血糖降下や肝機能の改善、血液サラサラ効果が期待できる成分が含まれているそう。
紅たでは機能性成分を多く含んだ香辛野菜なのです。

ちなみに「細葉」「丸葉」「青たで」と登場しましたが、その違いは??と思いましたところ、鳥居部会長によると
・丸葉 葉は丸みを帯びていて、細葉に比べて大きい。色目は細葉と変わらない
・青たで  葉の形状は細葉と同じで緑色。細葉よりピリッとした辛味が増す
という特徴があります。
また、地域性があって関東や九州地区では細葉、関西地区では丸葉が好まれるとか。青たでは赤身魚と合わせて提供されるケースが多く、夏場は清涼感を演出する場面にも重宝されています。旅館や飲食店のお客さんの好みによって使い分けられているそうです。
「細葉、丸葉、青たでは色形や食味に違いがありますが、含まれる成分は変わらず、機能性が高いと言われています」と鳥居部会長。
なるほど〜!今、私が住んでいる関東では細葉がスーパーに並んでいましたが、関西では丸葉と出合えるかも!??お料理に添えられて登場する「たで」にも注目したいと思います。

出荷時期:周年
出荷先:京浜・関西・九州地区と全国各地にお届け

「お刺身のつま」以外でも紅たでを楽しむ

小さな葉っぱに大きなパワーを秘めた紅たでを刺身のツマとしてだけ食べるのはもったいない。ということで、鳥居部会長に紅たでを使った料理を教えてもらいました。
 
「サーモンの紅たであえ」(左)
紅たでの風味と食感がアクセントに。レタスとも合います。

【材料】(4人分)
サーモンの刺身 300~350g
いりゴマ(白) 大さじ3
紅たで 適量
レタス 適量 ←大葉でも可
調味料(A)日本酒 大さじ2、しょうゆ(刺身用)大さじ4、ゴマ油 小さじ1、みりん 大さじ2

(1)いりゴマ(白)をすり鉢でよくすり、(A)を加えて混ぜ合わせる。
(2)サーモンの刺身を(1)に1時間ほど漬けこみ、食べる直前にレタス(もしくは大葉)を敷いた器に盛る。
 
「キャベツのもみ漬け」(右)
紅たでをはじめ、ミョウガや大葉など、ふんだんに使われた薬味のマリアージュがクセになります。
 
【材料】
キャベツ 500g
塩 大さじ1
紅たで 大さじ5
ミョウガ 3個
青じそ(大葉) 1束
シラス干し 大さじ5

(1)キャベツを1cm幅のざく切りにする。塩をふりかけて混ぜ、水分が出るまで手でもむ。水が出たら固く絞ってボウルにとる。絞り汁はとっておく。
※キャベツをもんでも水が出ない場合は、材料に対して塩が少ない。塩が多くてしょっぱい場合は水洗いして絞る。
(2)ミョウガと青ジソは千切りにし、キャベツの絞り汁に入れて軽くもむ。
(3)キャベツに水気を絞ったミョウガと青じそ、紅たで、シラス干しを入れて混ぜる。

お刺身に添えられるということは、やはり魚介類との相性ばっちりでしょう。というわけで、ホタテのカルパッチョにパラリ…。紅たでの紅紫色でお皿も華やかになって、おうち飲みもちょっとリッチな気分で楽しめます。

以前、全農広報部公式Xでも紹介した「紅たでonカブのペペロンチーノ」。紅たでは火を通すと辛みを感じなくなるので、最後にのせます。シンプルなパスタに、紅たでの辛みがピリリとききます。

紅たでで一品…となるとちょっとハードルがあがってしまうので、いつものおかずに“ちょい足し”してみました。

①ポテサラに混ぜ混ぜ。
②蒸しタコをオリーブオイルで炒めたところに、塩コショウと共にパラリ。
③トマトと豆腐のサラダにのせて。もちろん、冷ややっこトッピングも◎
④さっとゆでた薄切りレンコンにあえて。味付けは塩とゴマ油。
 
紅たではピリッとした辛みと葉っぱの食感が楽しいので、いつもとちょっと違った風味をプラスしたいときにちょい足ししても面白いです。納豆やとろろにトッピングするのもいいかも。今度、挑戦してみようと思います。
 
福岡クッキングアンバサダーの皆さんも紅たでを使ったレシピを紹介しています。「紅たで」で検索してみてくださいね。
https://www.recipe-blog.jp/sp/top_post/7378#tab
 
とはいえ、スーパーで紅たでと出合う機会は少ないかもしれません。そこで朗報です!

JA筑前あさくらの紅たでが、3月7日からサラダを中心とした総菜を販売する「RF1(アール・エフ・ワン)」のメニューに登場しました!お近くにお越しの際は、チェックしてみてくださいね。
 
メニュー名:風味愉(たの)しむ 湯葉とちりめん山椒のサラダ
販売期間:2024年3月7日(木)~5月8日(水)
販売店舗:全国のRF1店舗で販売予定(一部、取り扱いのない店舗や期間があります)

小さな葉っぱがひしめき合っていて…かわいい。

今回は紅たでの生産現場をご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
私も初めて訪問しましたが、生産者の皆さんの細やかな管理と厳しいチェックのもと、出荷されていることがわかりました。お刺身に添えられた紅たでも好きですが、いろいろな料理で紅たでを楽しみたいと思います。
ほかにも全国各地でさまざまな農畜産物が生産されています。これからは産地の様子も伝えていきたいと思っています。