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自転車にでも乗る週末

先般日帰りタナゴ旅 というほどの遠出でもな
いけれど 夢のような半日を過ごしたおかげで
また竿づくりへの情熱が再燃し 一尺 30センチ
の あの水場に適した竿を作ろうと竹の切れ端
を選り 接ぎ穂を巻いて継差ししながら数日を
過ごした むしろ釣りよりもそのような設えの
いじくりが楽しくもあり 小物釣りはある種ミニア
チュールの愉しみでもあるのでいかに道具を
小さく仕上げ それを胸ポケットに入る程度の
小箱に合切する そんな微細化ヘの欲求のひ
とつの表現としてこの釣りに入れ込んでいて
釣れる釣れないというところは無論つれれば
それに越したこともないけれど手製のちまちまし
た道具を水場に広げるその陳列において既に
気が済んでしまっている部分もある

と言った日々で実際に釣り場にも出ず雨がふっ
たり頭痛がしたりで一週間が過ぎる中 にわか
に米国相場が盛り返してその前に下手なヘッジ
売り つまり相場が下がる時の保険のような
手当をしたために大きく儲けそこなって
しまった 損をするのは慣れている しかし 損
をするよりも儲けそこなう方が何だか悔しい
実際には損どころかプラスになっているというの
に そのポジションを解消しながら過ごした週で
もあった 久しぶりに買い物がてら自転車にで
も乗る週末

週末というのは土曜か 土曜と日曜か 日曜は
確か週の始まりだったなどと思いながら長い坂
を登って丘の上のスーパーに着くとちょっとした
賑わいでおそらくここは丘の下とは別の客層
のような気がする こういうそこはかとないアウェ
ー感というのが決して嫌いではない 一つのジャ
ックから音を二つに分けるアダプタが売っている
のが近所の百均ではここだけで あてもなくまた
二個も買ってしまう 今日は本当は竿袋に使う
端切れと布用ボンドを買いに来た 本来なら
和柄の染め抜き木綿などがいいのだがコンセ
プトとしては出来るだけ金銭をかけないフェイク
江戸前なので臙脂無地の厚手の布と革にもつ
かえる布用ボンドをセルフレジの赤い光線に
次々ととおしていった 駐車場を縫って自転車
を進めていると誘導員が赤い棒を振り子して口
々にありがとうございました と それほどの買
い物でもないのにこそばゆい 私が赤い棒を
振っていても全く不思議はないけれどしなくても
済んでいるので今のところしない

丘の上から坂を横に抜けているのかなだらか
な起伏のために降りていると感じないのか二車線
の大通りを川の方に向かいながらとある詩人の
妻がSNSで あなたの食べている料理の写真で
傷ついた とコメントがあったと書いていたのを
思い出した 極論するならあなたの存在で傷つ
いています ということか ネットトラブルってつま
りそういうことだよな おそらく私なら食事の写真
のアップ頻度を怒涛のように増やすだろう しか
しその人は無理して読んでくださらなくても と困惑
気味に怒りを感じさせないように注意して記事を
書いていた それでとりどりのエスニックの写真
をアップしていた

ここのところ精巧に出来た入れ子細工のような
緻密な文章とかスタイリッシュなモダニズムめい
た文章 そういう文学作品が全く読めなくなって
しまった 若い頃に目指したのはそういう傾向の
物だったけれどいつか何も書かないような文章
に好感を覚えてそんな試しをしているうちに何も
無いところにどうしてか滲んでくるその人くささ
というのか 滲み出るサムシングの中に何か
本当に言いたいことが含有されているのではな
いかと思い始めた でもそれはおそらく自分が
見聞きしたり 読んだりしている様々な情報から
そのように感じさせられているのではないかとも
思えている 自分の書いたものをまとめて読み返し
てみたらそういう風に流されていると感じた

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