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夏の自転車

夏の自転車

無職の移動手段と言えばなんと言っても自転車だろう。

私の場合はすこし狡をして電動アシストだが、江戸川を国道六号線から河口へと下り、篠崎のあたりまで行って戻ってきた。

行きは千葉県、帰りは東京都。

行きの千葉県は以前の無職の時や若い頃仕事の鬱屈を抱えて走った道より、随分と整備され、あぜ道のようだったのがきちんと舗装されていた。河川敷のゴルフ場があり、暑い中何組かゴルフをしている年輩者がいた。白いポロシャツに褐色の手足や顔が伸びていた。ゴルフ三昧なのだろうか。山梨の方の涼しいコースで三昧するほどの財力はないと見た。

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しばらく行くと上水機場がある。ここで釣りをしたり、結婚前の挨拶で妻が私の実家にくる前に「ああ、緊張する」とボタンダウンにキュロットスカートの姿でやきもきした場所だ。勝手に釣りの桟橋が造られて、いつも何人かのへらぶな師達が竿を振っていた。それらはすべてなくなり、整備とは反対に葉の広い草が生い茂るままに放置されていた。変わったのは上水機の水門と施設だけだ。モトクロスのバイクもよくでこぼこを走っていたが今はすべて繁茂した草の下に埋もれていた。

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ここからしばらく行くと、私がホームとしていた釣りのポイントに至る。震災以降、通り過ぎることはあっても足を止めることはなかった。陽ざしは強く、じっとりと腕は汗ばみ、木々は深緑に雲と丸い盛り上がりを競っていた。不要不急の外出を控えよ、という酷暑の河原は、川風のせいで涼しくも、自転車の走行に抵抗を感じさせる具合の強い風だった。

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しばらく行くと市川橋をわたる。

そこからは河川敷は野球場やサッカー場、グランドゴルフ、ただの広場など見渡しのいい空間が広がる。だれも釣りをしていない。水深が深いという注意看板がいくつも立っている。ところどころ、体を陽に焼いている人が寝そべっている。ときおりむく、と起きて自転車にまたがった私を見る。お互いに、この暑いのに、とおそらく思い合っている。

今回、私は安く落札したリコーGX200の試し撮りという目的があった。しかし、何も熱中症注意の炎天下に出かける必要はない。やはり、物好きだ。電動自転車の、最初、70%あった電池残量はどんどん減って、40%までになっている。短い下草や水はけに入れた砂土の上を走行すると電池消費が早い。ほとんど日陰になるところがない。腕がじりじり焼かれているのがわかる。色が白いというより青白い私の顔や手が赤く火照る。目には川面の細かい波頭がまぶしい。水は河口から上流に遡っているように見える。台風から何日か経つが、その影響があってか無くてか、すこし泥の色がかった流れの色に見える。

つづく


新シリーズの前にたぶんおととしに書いた自転車散歩の記事をインターバルで2日続けます




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