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無縁

私の書くものくらい 苦しみと無縁でいたい
私の書くものくらい 悲しみと無縁でいたい
慈悲もなく 慰めもない

不穏と正気
あなたの書く静かな世界はどことなく不穏だ
と言われたい
眼鏡忘れた
早く
眼鏡

雨が止んだ後 風が強くなってきた
電車は東京駅を出て ベッドタウンへと戻る
時間
時間が止まる なんてことはない
逸れていくこともない

苦しみから生まれる苦しみに苦しんで
悲しみから生まれる悲しみを悲しんだ
良しそこまで
もうわかった

刺し違えてばかりいるような
かかわりをなぞらえて
書かれたものは
嘘っぽい

何も言わないよ
残酷なんて知らないよ

胸が躍る諍いの見物と
長い竿と
青い旗

切った人たちをそうするしかなかったと
困った顔して
苦笑する

不穏と狂気
狂気と平穏
剣呑と暢気
眼鏡よ眼鏡

思わせぶりなことばかりが起こる
曇り空を思い出した

あなたの書く静かな世界はどことなく不穏だ
と言われたよ
哀れみとは無縁だ



(擬現代詩時折シリーズ)

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