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暗黒期

今ちょっときつい 米株の下げが強すぎて ど
こまで下がるかわからない 資産があっという
間にしぼんで行く恐怖 大人の恐怖

平成初期は自分にとっては結構な暗黒期だっ
た と言っても辛酸舐子という訳ではない な
んだか 一番大切な時にくすぶってしまったと
言う感じで

一度付き合った人と別れてしばらくしてまたつ
き合うことになった その日 再会をして 食事
をした後 彼女がトイレに立った時 一人で あ
なんとなくうまくいかないかも と思った こちら
もそれ以降彼女を引きずっていたので嬉しか
ったはずだったのだが その時どういう訳か
自分の中で何かが冷めた そしてしばらくして
同じようなトラブルがあって連絡をやめた 公衆
電話で長く話したが 小銭が無くなってしまった
そこで もう連絡をやめようと思った 連絡して
も仲直りしてまたけんかになる そのやりとり
を繰り返すのに嫌気がさしてしまった

それ以降は同人誌も予定通り10号で廃刊に
なり もともと人から誘われるのままの活動だ
ったので そのまま書き物の方は内側にとじて
いった 何を書けばいいのか全く分からなくな
った 書き物に関しては

赤い 2ドアのサンルーフのついた車に乗って
いた マニュアルシフトで スポイラーが付いて
いた 休みの日は当てもなく車を走らせた 川
の方とか 蘆の生えた沼べりの道だとか 人の
いないところに一人で出かけた 夜には旧街道
を流して ビデオ屋でビデオを借りたり 時には
買ったりもした たしか 当時フランチャイズで
ビデオ安売り王 と言うのが流行っていて そ
こでオリジナルビデオを買った記憶がある 陰
惨な事件の実録もので のちに国民的歌手と
なるデュオの片方が主演級で出ていた その
ころ 暇にあかせて映画をかなり見た 恋愛
映画は見なかったが エロビデオよりそちらの
方が借りるのに恥ずかしい

それから 自分の中では第三次釣りブームが
きていた 夕方から夜にかけて 江戸川によく
出かけた みんなが狙わない汽水域の海の 
魚を主に狙った 具体的にはスズキの幼魚               セイゴという さほど大きくもないきれいな銀色
の魚だった                             

この魚は動く餌を食べる習性
があるため 水中で餌が動くように針の近くに
玉ウキを付けて水の中で踊るように細工した
すると 一時間に一尾くらい釣れた バケツに
入れて置いたら何匹か死なせてしまった 江戸
川にいる海の魚はセイゴにしろハゼにしろ口
から鰓がスカスカですぐに鰓が開いてしまう 

それを二夏ほど続けたろうか 釣れれば楽しく
もあったが そもそもそれほど熱狂的に釣りが
好きという訳でもない 夜半まで釣りをして 坂
の途中にぼっとついている灯の手洗い場に車
を止めて 夜中に一人で手を洗っている徒労と
虚ろの混ざった気持ちが あの頃のすべてに
通底する基調音になっている気がする

何をしても虚ろ 友人も結婚していき よりを戻
すに至らなかった別の 古くに短く付き合った
人も結婚し 私は小難しそうな本を少し読み
それでいてパチンコにはまって数百万溶かし
サンルーフを開けては座席を倒して空と木の
枝をぼんやり見ていた 面白い事ではなかっ
た 焦燥感が停滞している そんな矛盾した
心境となげやりな気持ちが入り交ざっていつも
なにをしても燻っているようだった


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