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Inner green eye

眼科にもかかっておいた方がいいとの医師の
指導で 折を見て近くの眼科へ ここは私が
まだ二十歳ぐらいの頃に何度か何かでかかっ
た医院だがその医院の真裏にマンションが建ち
その一階でおそらく代替わりして夫婦なのか
兄妹なのか 内科 眼科の二診療であらたに
開業されていた

6年ほど もちろんコロナ渦中にもメンタル以外
の医者にかかっていなかったのでこれが通常
なのかよくわからないけれどとんでもなく混んで
いる 眼科などと言えば目がしばらくおかしい
時にふらっと行って小一時間で医院を出る と
いった認識だったので患者の多さに思わずた
じろぐ そもそも眼科と内科で医師が分かれて
いるとは思わなかった 昔の医者は何でもちょ
こっと見てくれた で 不安なら大きな病院へ
という流れ

思えば多くの人が集まっている場所にいるとい
うのをしばらくしていなかった 医者の待合とい
えば老人ばかり という古いイメージとは私には
少し違って見え どちらかと言えば私ぐらいから
少し上 初老程度の男性とそれよりやや若い
女性の患者が割合的に多く見えた 健康に
自信は以前から無かったものの 医者にやたら
とかかるという事はなかった しかし病名がつ
いた以上 これからは定期的に通院となる 退屈
なので他人の様子を盗み見ながら あれこれ
思いを巡らせてみる

検査フルコース 五つほどの検査を診療を交え
ながらこなしていく 眼底 視野 特に視野の
検査というのは初めてした 様々な場所で強弱
のある光が点滅し ついたところでボタンを押す
機械自体ががくがくいうので それに合わせて
ボタンを押せば成績はいいのだろうと考え そ
れでは意味がないと思いなおして視野の限界
にある薄いオレンジの点滅にボタンの早押し
を合わせている

どこかのお母さんが抱っこしている赤ちゃんと
仲良くなった という一方的な感情 手持ちぶさ
たに持った扇子で顔を見え隠れさせていると
もう笑える生まれ月なのか目を細く垂らして笑っ
てくれた こういう柄ではないのは承知だが
このところ何故か子供が愛しい 自分の生活を
将来的に担ってくれるからだろうか それも
当てにならないと言えばならない時代と言われ
つつ ならば今まで払い続けた膨大な年金は
いかように とも思う 今は子供がうるさいとうと
まれる時代かもしれないけどどこへ行ってもみなさん
良くして頂いて とお母さんが話していた お母
さん それはあなたの感じがいいからですよ と
胸裏で呟いた ひととき和ませてもらった

それで敢え無く緑内障 神経が弱って視野が
欠けている 緑内障は症状がなく突然視野が
欠けて その時は病状が進行してしまっている
のだそうだ 知識としておぼろげに知っていても
身に降りかかるまではどこかメルヘン 検査で
赤い屋根の上に浮かんだ気球がぼやけたり
はっきりしていた 目薬を処方され 薬局でひと
りはらしき ひとりは陽性が出た というコロナ
患者に居合わせた 改めて私 ハイリスクグル
ープと認識し冗談じゃねえな とやさぐれて

神経症状 自律神経の乱れなのだろう日向の
道を帰途 水をかぶせられたほどの汗をかき
拭わないまま泣きながら歩いているみたいな
目がしみて 風に含まれた熱気はほんの少
しだけ盛夏より割り引かれているように感じた
思えば私小説のテーマとして老い病いは王道
ではないかと考えるも今の還暦と昔の還暦と
では余生に対する感覚も大概違ったものだろう
と ふと路地が気にかかり そこの空き地をの
ぞいてみると背の高いブタクサに囲まれて家屋
は覆い隠されていた

その目薬には 差すとまつげが伸びる副作用が
あるそうだ

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