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節電

しみじみ涼しい 新しいエアコンが壁に付いた
朝一番で工事に来てくれたので助かった 工事
あとの時間が使える それでこうして書いている
取付工事に伴う部屋の片付けもほとんど狂気の
ようなありさまで 何しろ子供らが幼稚園の頃か
らの積み重ねが棚に無造作に突っ込まれ 細か
なおもちゃの数々 ノートや教科書 雑多な書類
およそ十五年分のなにかにを整理して分け捨て
久しぶりに見た棚裏の壁にはどことなく湿った
コンセントの口が見つかった テレビはその口
から電源が取られていた 何がどこに電源をと
られているか絡み合ってわからない ピンクフロ
イドのスタジオのようだ

無職生活が一年過ぎた頃 急な不安に襲われ
もう金をまた稼ぐしかないか と仕事サイトをあち
こちと見て 一番稼げそうなのがエアコンの取り
付けだった しばらくエアコンの取り付け手順を
研修したうえで 初めは見習いとして人に付き
ゆくゆくは一人で作業に回るという たしか 半年
で200万円ほど稼げるとあって 夏の繁忙期だ
け働く という人もいるとあった バンドマンなんか
にはいいかもしれない 上を向く力仕事というの
は普通よりきつい といってそんな仕事をしたこと
はほとんどない 天井の壁紙がおかしくなって
少しいじって音を上げた

エアコンの取り付けは人力からロボットにとって
かわられたりするのだろうか 出来ないこともな
さそうだが人の方が手っ取り早そうだ 機械や
電子にとってかわられない仕事は何だろう クリ
エイターなどと言うつもりはない 早晩とってかわ
られるだろう 頭で思って書くというのはクリエイ
ターと広い意味では言うのかもしれないが自称
するものではないだろう 詩人 を自称する程度
には尻がむずがゆい なんにしても 誰からも
頼まれずに 金銭も絡まない表現は楽だ だから
誰もが何度も言っているようなことを平気でな
ぞったりする といって 人が言わないようなことを
言おうとして単に無知なだけで恥ずかしく空振り
で大振りな

一日に最大6件の取り付けをした人がいるらしい
一軒の時間が一時間半として 最後の家は夜の
取り付けになってしまう 実家にいた頃 町の
電気屋氏が夜の十一時ごろ来て驚いたことが
あったが 面倒見がいいのでそこで家電を買って
いた 睡眠を削って働いてその人は早死にして
しまった 町のお祭りの電飾を仕切っていたから
町内会で困ったと皆口々にその人を惜しんだ
もうしばらく経つのにその人よりも随分年上の
母はいまだに〇〇さんがいてくれたらねぇ と
言いながら仕方なしに量販店に店を変えた
ところでこんな話に文学的要素は含まれている
のだろうか 一応身辺をできるだけそのままとい
う体で写しているつもりだども

本当に久しぶりに床面が広い 四畳程度床面
がある 娘と話をしていたら でも置くところが
ないから と言われ 私室を用意できなかったと
少し落ち込んでしまった いつか個室を設えて
やろうと思って娘は大人になってしまった しかし
そのおかげで3LDKにエアコン一台で済んでいる
今度のエアコンはコンマ五度刻みで室温を調整
できる コンマ五度でどれだけの節電になるの
だろう

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