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トラックドライバー怪談10『憑き纏う者(4)』

[4、指跡]
顔のない女は、毎日俺の前に現れる訳ではなかった。
忘れた頃に、存在をアピールするかのように突然現れる。
積地のフォークマンが奇妙な事を言ってきた夏の日から半年ほどが過ぎていた。
時期は冬の真っ只中。
荷物が立て込み、慌ただしい日が続いていたある日。
俺は、大阪行きの荷物を背負って中京のある巨大PAで夜営することにした。
早めに駐車枠を確保しないと、仮眠すら取れなくなるぐらい、年末は、荷物を運ぶトラックが増量する。
俺は運良く、駐車枠を確保することができた。
このPAには温泉施設があり、肉体労働者であるトラックドライバーには憩いの場所だった。
俺は洗面用具と着替えを持って、温泉施設に入った。
脱衣所のロッカー前で、服を脱ごうとしたら、何故か右の二の腕に変な痛みが走った。

「ぁ…痛っ…!」

思わず独り言を口にする。
まるで打撲した時のような、鈍痛から鋭くなる痛み。
とりあえず、服を脱いで湯船に向かおうとして…先程痛みが走った腕を見てみる。

それを目にして、俺は驚愕する。

そこには、はっきりと、人の指輪の跡が赤く着いていたのだ。

「……な、なんで?…何これ…??」

もちろん、何処かにぶつけた覚えもなく、誰かに掴まれた覚えもない。
何故こんな場所に指の跡が着いていたのか、俺にはさっぱりわからない。

とりあえず、風呂に入って、体を洗ってるうちに、その指の跡は跡形もなく消えてしまった。

風呂を出て、トラックに戻る。

当時、俺には付き合ってる彼女がいた。
風呂を出ると、彼女に電話するのは日課だった。
長距離トラックドライバーという仕事柄、毎日が遠距離恋愛で、年下の彼女と寝る間際に連絡を取るのはいつものこと。

「さっきさ、風呂入ろうと思ったら、腕に指の跡付いててさ…びっくりしたよ」

俺がそう言うと彼女は驚いて言う。

「うそ?なにそれ?ほんとに指のあと?」

「指の跡にしか見えなかったかな…細い指の跡」

「えぇ…それ、女の指みたいじゃん…
女のコにひどいことばっかしてきたから、恨まれてるんだよ…」

「してないよそんなことww」

いつもの通り、他愛もない会話をする。
その時、ふと、彼女が不審そうに俺に問いかけてきた。

「ね…今、近くに誰かいる?」

「いないよ、だってトラックのキャビンだし」

「え…今…だって今…」

彼女の声が少し怯える。

「女の声がしたよ……なんか、何言ってるかわからないけど…女の声…」

「え……?」

この辺から頻繁に、彼女と電話してるとこんなことを言われることが増えいった。
もちろん、トラックに女性を連れ込んだりしないし、浮気もしてない…
その声は一体誰の声だったのか…

<ToBeContinue>






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