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なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない(書評)

タイトルだけで即買いしたのだけれど、買ってみたら前に何度か本を読んで好きだった東畑開人さんの本だった。

こんなにも豊かになった社会なのに、たくさんの人が「こころ」を見失っている。

私自身、産業医としてたくさんの働く人と関わらせていただいているけれど、生き生きと自分らしく働いている人になかなか出会ったことがない。

「大人にできなくてはならないものとは何か」というようなことを問われたときに、フロイトは、「働くことと愛すること」と答えました。もう百年近く前のことです。
(中略)
特に現代では、僕らはついつい「働くこと」のやり方を「愛すること」に持ち込んでしまう。「愛すること」が「働くこと」に飲み込まれてしまう。

愛することは、何かをすることではなく、誰かといることだとも書かれていたが、それはまさにWell-Beingだ。

友達と遊ぶ意味、誰かとご飯に行く意味、映画を見る意味、〇〇する意味。

ありとあらゆるものに意味を見出そうとしてしまうのだけれど、愛することというのは、「Doing」とは違って「Being」なのだと改めて気づかされた。

愛そうとおもって愛するのではなく、自然とそうなっている状態が愛することなのだと。

さらには、愛することは、誰かを頼ること。甘えること。とも書かれていた。相手を愛しているから甘えられる。働くとは、仕事上の関係で、何かを提供して初めて存在を認めてもらえる、言わばギブ&テイクな関係なのだろう。

今の社会は、東畑先生も言われるように、働くことが愛することを飲み込んでいる。

でもやっぱり大事なのは愛することなのだと思う。

もちろん、資本主義経済の中にいるので、生産性を上げなければいけないという命題からは逃れにくいかもしれないけれど、その中に少しでも愛することを取り入れてほしい。

最近流行りの「心理的安全性」は、厳しいことを言い合っても壊れることのない信頼関係で結ばれたチームであるが、単に生産性が高いだけではなく、その強固な人間関係は「愛すること」に裏打ちされているような気がしている。

単に表面上に丁寧な言葉を話して、表面上相手の意見に同意すればいいわけではなく、普段から一人一人のことを尊重し、大切にしあっている関係が必要なのだと思う。

働くことが愛することを飲み込んでいる社会において、もっともっと人を愛することを大切にしてほしい。

働く人が皆、自分を愛し、相手を愛し、チームのことを愛せるようになれば、こころを見失う人は減っていくに違いない。

ささやかながら、そんな社会になるようにサポートしていきたいな。



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