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胡麻豆腐。

3年前の12月に 
おふくろが亡くなった。 

甘いものが好きなおふくろだったが 
その中でも胡麻豆腐は好物だった。 

おふくろが胡麻豆腐を好きになったきっかけは 
俺が産まれてから8年ほど経った頃の話だ。 

朝5時に起き、外に出る。 

まだ真っ黒い夜空を見つめて 
雨が降ってないことを念入りに確認する。 

カッパをたたみシートバックに入れ、 
パソコンで天気予報を見て、 
ジャケットを着て表に出る。 

そしたら雨が降っていた。 

今日の日帰りはヤメだ。 

宿泊ツーリングの行き帰りならいいが 
日帰りでは気乗らない。 

ジャージに着替え、二度寝する。 

10時に起きると雨はやんでいた。 
天気予報も好天に向うとのこと。 
タイムロスした分は、日東道で取り戻す。 

限られた時間内での日帰りだ。 
2時間経たなければ休憩してはいけない
ルールを決めた。 

今年はダムカード収集のため、
東北も相当走った。 
ナビがあってもほとんど見ずに走る。 

ちょうど3時間でそこに着く。 

山形にある修験道の修行の地、
出羽三山の一つ羽黒山。 
今も山伏姿の修験者が見られる。 



駐車場に停っていたCB1300SFの脇に
バイクを停めると 首から一眼レフを
下げた乗り手が汗だくでやってきた。

本堂まで、かなり険しいですよ。 



時間に余裕があれば本堂と五重塔を見たかったが 
今回は確かめたいことがあってここに来たので 
参拝はまた別の日にすることにした。 

バイクを停め何件かみやげ物屋を覗いてみる。

そのうちの1件にそれはあった。 



俺が8歳の時、おふくろに連れられて 
羽黒山に来た。 

山伏からほら貝を借りて吹いてみたが 
まったく鳴らなかった。 

長い石段を登り、樹齢300年の杉林の中で 
胡麻豆腐を食べた。 

ただなんで羽黒山に胡麻豆腐があったのか 
わからなかった。 

もしかして記憶が混乱して 
羽黒山で胡麻豆腐を食べたことになっただけで 
実際に羽黒山には胡麻豆腐は無いのかもしれない。 

そう思い立ち、羽黒に胡麻豆腐が本当にあるのか 
確かめに来た。 

お待たせしました 

あんのかかった胡麻豆腐は温かかった。 
スーパーに売ってる寒天のようなものと違い 
本当の手作りだ。 

思っていたほど甘くはなく、
口の中でとろける触感は 
今まで食べたことがない。 

なぜ羽黒山で胡麻豆腐を出すように
なったかとたずねると 
修行の地であることから、
精進料理の胡麻豆腐を 
名物として振舞うようになったのだそうだ。 

お客さん、胡麻豆腐は召し上がったことはありますか? 

はい。8歳の時に、ここで。


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