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もう随分長い間、バイクに乗っています。バイクに乗って出会った出来事を投稿しています。た…

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もう随分長い間、バイクに乗っています。バイクに乗って出会った出来事を投稿しています。たまに自分の身の回りで起こったことも書いていますが、全てノンフィクション、実話になります。どうぞよろしくお願いします。

最近の記事

重複がんの疑いと診断されて

昨年の9月に前立腺がんが見つかってから、 半年が経ちました。 前立腺がんの発見当時、PSA55.8、グリソンスコア4+3=7、T3cN1M1、リンパと肺に転移がありステージ4と診断されました。 その後、ホルモン療法を行なったところ、 PSAは2.29まで下がりましたが、肺のがんは 縮小せず、かえって大きくなっていました。 その事から肺のがんは前立腺がんの転移ではなく、原発性の肺がんであろうという見立てとなり、3月3日のひなまつりは、急遽、呼吸器科の診断を受けることになっ

    • 胡麻豆腐。

      3年前の12月に おふくろが亡くなった。 甘いものが好きなおふくろだったが その中でも胡麻豆腐は好物だった。 おふくろが胡麻豆腐を好きになったきっかけは 俺が産まれてから8年ほど経った頃の話だ。 朝5時に起き、外に出る。 まだ真っ黒い夜空を見つめて 雨が降ってないことを念入りに確認する。 カッパをたたみシートバックに入れ、 パソコンで天気予報を見て、 ジャケットを着て表に出る。 そしたら雨が降っていた。 今日の日帰りはヤメだ。 宿泊

      • どん引きペットボトル。

        八ヶ岳から琵琶湖に向う。 気温はグングン上がり 息苦しいほどの暑さだ。 琵琶湖に着き、長浜で有料駐車場に停めたはいいが フェリー乗り場のある長浜港まで相当距離があり ボトボト汗を落としながら長浜城を歩く。 (ちゃんと地図見ておけばよかった) たどりついたエアコンの効いたフェリー待合室は まさにオアシスそのものだった。 宿で夕飯を食べながらニュースを見ると 今日走った岐阜の多治見で38度を記録したらしい。 最終日、今回の旅で一番長い距離を 一

        • かつて無用。

          長い付き合いのバイク屋がある。 ずいぶん前にそこでバイクを買い、 初めて任意保険に入った。 年を重ね、バイクがいくつも変わったが、 毎年その店で保険を更新していた。 ある年の春、いつもの年のように 保険の更新にその店に行った。 いつものようにコーヒーを飲みながら 店の女と談笑をして、契約書を書いていたら 店主が言った。 「フロストブルーさんも、かつては全国走り回ってませんでしたっけ!?」 「かつて」だと!? 俺にも探られたくない痛い腹はある

        重複がんの疑いと診断されて

          マサキと、マサオ。

          なぁマサキ。 元気にしてるか?お前、いくつになった? お前ごときに助けてもらおうとは思わないが、 今回ばかりは、俺もまいっちまったよ。 なぁ、マサキ。 もうずいぶん前のことだ。 その日の昼も、いつもように、いつもの喫茶店に 同僚の山崎と昼飯を食べに行った。 店員「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」 山崎「俺、カツカレーね」 俺「うーん、、あぁ。決まったら、呼びます」 山崎「珍しいね。メニュー迷ったことないのに」 俺「あぁ、寝不足でね」 山崎「ま

          マサキと、マサオ。

          ゼロヨン、セコイア、朽ちたベンチ

          「何やってんだお前は!」 その日、社長に怒鳴られた。 いや、正確には「その日も」だ。 新潟の学校を出てから俺は、埼玉にある伯父が経営する 会社に就職した。 いくらでも稼いで好きなものを買えばいいと、 いい話ばかりされてここに連れて来られたが、 蓋を開けてみると7万円の給与で 会社の3階に住み込み、昔でいう「丁稚」のようなものだった。 「もう一度得意先を回って来い!」 俺はパンフレットがどっさり入ったバッグと メットとカッパを鷲づかみにして、原付のキックを蹴り下

          ゼロヨン、セコイア、朽ちたベンチ

          その楽器は音が出ない

          「え!?」 「何やってんだよ、いったい。。」 高1の春のことだ。 俺はあちこちの親戚からもらった入学祝いを 銀行に預けに行った。 窓口で渡された記帳済みの通帳には さっき預けた金額しか残高がなかった。 幼稚園の時から全く使わずに貯めに貯めた 数十万のお年玉は 1円残らず引き出されていた。 この通帳の印鑑は、おふくろが持っていた。 「あんたの時もしてあげるから」 銀行からぶっ飛んで家に戻り おふくろに詰め寄ると 洗い物をしながらおふくろは背中でこう言った。

          その楽器は音が出ない

          発煙筒。

          出張から帰ると 新潟はまるで熱帯のように暑くジメついた夜だった。 明日はついに雨らしい。空梅雨も終わりだ。 降らないからと見て見ぬふりをしていたワイパーの不具合を ディーラーに修理に持って行った。 ディーラー「発炎筒、消費期限のため交換しておきました。法律なもんでして。すみません」 俺「ああ、いいよ。大事なものだから。」 そう、 発炎筒、 大事なもの。 たしか、あの夜も、今日と同じ蒸し暑い夜だった。 父方の爺さんは菓子屋だった。 新

          発煙筒。

          バイクの神様。

          今日は各地でバイクのイベントが開催され さぞかしバイクの神様も大忙しだったろう。 俺もいつもの休みの朝と同じく 天領にむかう。 朝方はメッシュの上下がやけに涼しい季節になった。 寺泊は金山のT字を曲がった後 けたたましい轟音がした。 単車のようで単車の音でない。 前のプリウスがコーナーで視界からずれると 平べったいそいつがいた。 エンブレムはLamborghini テールからムルシエラゴだとわかった。 イタ車はイタ車にまかせとけ。 ム

          バイクの神様。

          秋田五城目鍛治。

          「ちょっと待ってな。おめさんにやるがね」 木でできた古い道具箱を漁る男は 限定解除の試験場で知り合った。 大工を職業にしていたその男は どこかの家の納屋を建て替える時 出てきた鉈(ナタ)をもらってきた。 野宿を始めたばかりの俺に その鉈をくれるらしい。 「あったあった!今、刃付けてくるわ」 まっ赤に錆びたその鉈に刃を付けるため グラインダーを回す。 グラインダーからドラゴン花火のような 火花が散らかる。 荒削りに付けられた刃だけが ピ

          秋田五城目鍛治。

          いつもここから、この海から。

          「うおっっっ!!」 夜10時ちょっと前 このクソ重く熱いズンドウに山盛りになった鶏ガラを ぶっ壊れて半分ヒビの入ったゴミバケツにあける。 もうもうと湯気の上がるゴミバケツの傍らで 夜空を見上げながらタバコに火をつける。 地元に帰ったまではよかったが、事故で複雑骨折をしてしまい 知り合いがせっかく口を聞いてくれた カメラマンのアシスタントも辞めるハメになった。 足を引きずってハロワに行き、 収穫ないまま高校の時にバイトしてた食堂に顔を出す。 おか

          いつもここから、この海から。

          名瀑。

          休日に近所の八百屋に行くと、規格外でハネられたミカンが 破格で売っていた。 八百屋「こっちが広島。こっちが和歌山ね」 カゴに盛られたミカンは産地が違っていた。 八百屋「どちらにします?」 俺「ああ、和歌山のほうを」 八百屋「和歌山のミカン、お好きですか?」 俺「あ、いや、和歌山に、思い入れがあるんだ」 亡くなったおふくろは滝を見るのが好きだった。 名瀑と言われる美しく壮大な滝を見るのが好きだった。 俺もドライブがてら、宮城県の秋保大滝に

          ブーメラン。

          夏が来ると思い出す。 頭のイカれたバイク屋とその客の物語。 行き着けのバイク屋の店主は少しアタマがイカれていた。 毎年夏になると祭を始める。 これがまた、イカれた祭なんだ。 9:00。 バイク屋の客がポロポロと集まりだす。 スタッフがオドメーターの距離を書き写す。 それぞれ準備体操をしたり、地図を読んだりしながら 「その時」を待つ。 10:00。 そいつらは一斉にスタートする。 ある者は関越へ、ある者は北陸道へ。 そして新潟バイパスに

          ブーメラン。