2月のまとめ:同時並行的語学学習

28日までの2月の勉強時間はこんな感じ。

フランス語:55時間44分(35%)
ドイツ語:50時間58分(32%)
ロシア語:24時間36分(15%)
英語:15時間25分(10%)
ポルトガル語:12時間19分(8%)

これは机に向かって勉強した時間の合計で、隙間時間にやってたことはカウントしていない。今月は初級にあるフランス語とドイツ語がメインで、その他の中級以上にある言語は現状維持に努める気持ちでいた。具体的には1週間を1セットとして

1日目:フランス語、ドイツ語
2日目:フランス語、ドイツ語
3日目:ロシア語、英語、ポルトガル語
4日目:ドイツ語、フランス語
5日目:ドイツ語、フランス語
6日目:ロシア語、英語、ポルトガル語
7日目:予備日

というふうに回した。ドイツ語とフランス語を同じくらい勉強し、ロシア語、英語、ポルトガル語がそれぞれその三分の一くらいと考えていた。フランス語とドイツ語は勉強する順番もなるべく均等にしたから、ほぼ1:1の感覚だったが、それ以外では、ロシア語の優先順位を高めに設定していたこともあって、結果的にロシア語はポルトガル語の倍くらい勉強してしまっている。

以下、各言語ごとにやっていたことをまとめながら、今月の反省や今後の課題を検討したい。

A フランス語

フランス語でやっていたのは主に3つ

  • 動画視聴ルーティン

  • Le Petit Prince の読書

  • 音声学習


1、動画視聴ルーティン


隙間時間とかに見つけたフランス語の動画をyoutubeのプレイリストに入れておき、毎日そのプレイリストから合計の動画の長さを1時間ほどになるように選んで視聴していた。内容は、フランス語の歌だったり、文法事項の聞き流しだったり、フランス語youtuberの字幕付き動画だったり、とさまざまだが、基準は「何度でも好んで見れる」ものにした。ルーティンなので何回見ても内容に集中できないとあまり意味はない。もちろん、プレイリストに入れてみたものの、イマイチのれなくて一回しか見てないものもある。その一方で毎日見ているものもある。語学学習において、「同じ教材を繰り返す」VS「新しいものをどんどん取り組む」という構図はしばしばあるが、個人的にはどちらもありと考えているので、毎日見るもののなかに時々新しいものを挟み込むような感じにプレイリストを構成していった。



毎回最初は「オー・シャンゼリゼ」を聞いてフランス語の勉強を始める。

ふら塾さんの動詞活用聞き流しはよくできていて、好んで聞いている。

フランス語youtuber Elisa さんの動画。「外国語を話しているときにいかに自分を出すか」について。

「働く」ことについての動画。スピードが速く、内容も難しいが、学習者用の動画ばかり見ていると「学習者用のフランス語」しか聞き取れなくなるので、フランス人用の動画も時々ルーティンに組み込む。

最近見つけた英語字幕付きのフランス語のミニストーリーを読んでくれる動画。音声が機械的であまり好きではないが、内容が簡単かつストーリーで覚えるというのは、教材としてのおすすめ度が高い。

2、Le Petit Prince の読書

「そろそろいいかな」「いやまだ早すぎるだろ」と内心迷いながら、「星の王子様」の原書を読み始めた。

フランス語の勉強としては王道ではないかと勝手に思っているのだが、それは「読みたい」というのを一番の目的にしているからかもしれない。フランス語を勉強し始めてまだ3カ月目だから、正直時期尚早ではあった。読めるは読めるのだが、細かいニュアンスまで読みとろうとすると、とたんに詰まるので、フランス語の本に慣れるという点ではよいのだが、読書的な満足感を得られるところまではいっていないのが現状だ。現在は第20章くらいにいるのだが、さらさらとここまで来てしまったので、もう少し精読の度合いを高めながらゆっくり丁寧に読み進めたいと思う。

3、音声学習

1でやっている動画視聴は基本的に聞き流しなので「多聴」の側面が強い。これだけでもまあ勉強になるのだが、知らない語を調べたり、スクリプトなしで聞き取れるようにしたりと、訓練的な要素が足りないので、そこを補完する勉強もした。まず、スクリプトを確認しながら内容を理解していき、最終的には音声だけで理解できるところまで繰り返し聞いた。音源に対する接し方はいろいろあって、オーバーラッピングする、シャドーイングする、スロー再生する、字幕を表示しない、とさまざまな形式で同じ音声を聞くことで、音声を多面的に捉えるようにした。「同じ表現を異なる文脈(形式)で聞く」ことが音声に限らず非常に有効である。繰り返し聞くが、形を変える工夫を怠らない。10分以内の動画であれば、最初から最後までオーバーラッピングやシャドーイングをするのもいいかもしれない。また、新しく出てきた語彙やどうにも発音やリズムがつかめない表現は、YouGlish を使ってターゲットとなる語や表現を検索した。

youglish は検索した語が用いられてる動画の該当箇所を表示してくれるサイトで、音声コーパスのような機能を持つ。今勉強している動画で聞き取れなくても「同じ語を違う文脈で」何度も聞くことで不思議なほど聞き取れるようになる。また、ここでヒットする動画はすべて字幕つきなので、気に入った動画は動画視聴ルーティンに組み込むことも可能だ。

4、その他

今月は、16日から25日まで世界卓球がテレビで中継されていて、卓球部員だった私としては「見たい!けどがっつり時間持ってかれるな」という葛藤にあった。結果的に日本チームの試合はリアルタイムでほぼ全部見た。(女子の決勝はほんとすごかった。リアタイできてよかった。)その分勉強時間が侵食されたが、テレビのコマーシャル中に細切れでフランス語の勉強をした。隙間時間にやっていたのは、Conjuu という、ひたすら動詞活用の入力していくシンプルなアプリだ。本当に1分時間があれば勉強になるので、世界卓球の中継の合間という隙間時間にぴったりはまった。逆にこういう動詞の活用は、やらなければならないのは分かっているけど、それ単体でやるのは辛すぎるので、ちょうどよかった。昨今では、見逃し配信もあるからテレビのコマーシャルで暇をもてあますこと自体が少なくなってきているが、スポーツ中継という枠内ではまだまだこういう隙間時間がある。

ちなみに今回の世界卓球でのフランスの躍進はめざましく、男子2位、女子3位という結果だった(今思ったんだけど総合的な戦績は日本チームよりいい)。夏のパリ五輪が楽しみだ。フランスチームの選手のインタビューも動画にあげられていて、卓球におけるフランスの地位に注目が集まりつつある。


5、フランス語のまとめ

今月もフランス語が一番多く勉強したが、1月比べると20時間くらい少ない。先月より進歩した実感はないが、それは初級を突破した長いフラットゾーンに入ったからだろう。今まで音声に力を入れてきたが、インプット量を増やすという意味でも読む時間を増やすことを意識すべきかもしれない。具体的には今音声学習でやっていることをもっと文法面から追求したり、出てきた語法の知識を深めるなどしたい。また、今月は文法の勉強をしなかったので、今後は何か文法事項にフォーカスした勉強もするつもりでいる。

B ドイツ語

よく言えば息長く、悪く言えばダラダラと、いままで取り組んできたドイツ語だが、今月は初めてメインに学習する言語として向き合った。やっていたことは主に三つ

  • 動画視聴ルーティン

  • 『ドイツ語、もっと先へ!』

  • Extra で音声学習

1、動画視聴ルーティン

フランス語と同様に、youtube で見つけた動画をプレイリストに入れて
毎回聞いていた。フランス語に比べると、ドイツ語学習者にちょうどいい動画は少なく、「これ!」と思える動画になかなか巡り合わなかった。ただドイツ語は、日本のアニメのカバーが非常に上手いというのがある。例えば、SPY×FAMIlY の主題歌のカバーはこんな感じ。

https://www.youtube.com/watch?v=1EzhEtZsY2c&list=PLDoEncDPSSmPdi7Tss01OUrJIewy0ha2i&index=2

 個人的に、この作品の世界観は東西分裂時代のドイツではないかと思っているので、SPY×FAMILY はドイツ語がよく似合う。実際にドイツ語圏でこのアニメが配信されているかは分からないが、もしドイツ語版があるならぜひ見たい。
昔からドイツはカバーが上手いというイメージあって、原曲の雰囲気を残しつつも、アレンジには斬新さが効いている。この異文化を上手く受容するセンスは、ドイツが多様性に寛容な国であることと関係がある気がしないでもない。

また、今まであまりドイツ語の発音をちゃんとやってなかったので、本格的な発音矯正も動画を見ながらやっていた。ドイツ語の発音を詳しくやるなら、Mikako 先生の動画が大変参考になる。

https://www.youtube.com/watch?v=Naz8q-h8wv4&list=PLDoEncDPSSmPdi7Tss01OUrJIewy0ha2i&index=16

発音ばかりは、日本人の癖を把握しているという点で日本人が教えているものから入った方がいい。

ドイツ語の youtuber のなかでは、検証系の動画を出している Joseph DeChangeman の動画を見ていた。 

語学系の youtuber では、Deutsch mit Rieke の動画が気に入っている。

Rieke 先生の動画は内容が高度で、今の自分のドイツ語の実力では手にあまるのだが、中級以上のレベルの動画が豊富にあるのでかなり有効活用できそう。

こちらは「facebook はもうオワコンなのか」を解説する動画。内容はまだ難しいがちゃんと字幕があるのがありがたい。

2、『ドイツ語、もっと先へ!』

昔に買ったドイツ語の教材を勉強に使っていた。渡辺 克義 アンドレアス・マイアー 共著『ドイツ語、もっと先へ!』だ。

テキストを読みながら、その都度文法事項も復習していくという初級文法を終えた人向けで、中級へのステップアップにちょうどいい教材だ。ただし、テキストの内容はちょっと他にはない感じで、弁論大会のスピーチ原稿や落語の内容がそのままテキストになっている。人によっては難ありと言える。現在26課あるテキストのうちの17課まで終了した。後半は演習問題として実際の大学入試の和訳問題などが掲載されているので、訳読するのにちょうどよさそうだ。

3、Extra で音声学習

Extra というドイツ語学習者に向けて作られたコメディがある。このシリーズはドイツ語字幕がすべてついているので、登場人物のセリフを覚えて、同じリズムで言えるようになるまで、繰り返し聞いて音の練習をしていた。

このシリーズはだいぶ古く、パソコンでEメールを送ったりしていて、90年代後半くらいの雰囲気が出てる。内容は平易で、出て来る語彙も易しく実践的なものを意図的に入れているように思われる。しかし、発音のスピードは普通に早く、字幕なしで聞き取ろうとするとけっこう難しい。ちなみにこのシリーズは英語やフランス語でもあるようだ。

4、その他


直接ではないもののドイツ語に関係する本も読んだ。例えば、野矢茂樹『ウィトゲンシュタイン 『哲学探究』という戦い』

20世紀を代表する哲学者、ウィトゲンシュタインの著作『哲学探究』を著者なりの視点で解説(というか闘争)した本。ウィトゲンシュタインの言葉に「言葉の意味とはその使用である」というのがあって、外国語を勉強しているときに起きる「言葉の意味の理解」を説明してくれている気がする。ウィトゲンシュタインの哲学自体にはあまりピンとこないのだが、彼の言語に対する見方は外国語を勉強するときにヒントを与えてくれるという直観があって、ウィトゲンシュタインには常に興味をもっている。ウィトゲンシュタインはオーストリア出身で、『哲学探究』はドイツ語で書かれている。『ウィトゲンシュタイン 『哲学探究』という戦い』の中でも当然『哲学探究』からの引用があるので、そのオリジナルのドイツ語を原典から探したりしていた。今のドイツ語のレベルでは分からないに決まってるんだけども、雰囲気だけでも味わえた。ドイツ語を10年くらいやれば原典を読めるかなとか思いつつ、ウィトゲンシュタインはいつまでもあこがれのままである。

また、ニーチェの『ツァラトゥストラ』を日本語で読んだ。

正直この作品は理解するのが難しかったが、アフォリズムのような文章は、将来的にドイツ語の教材としていいかもしれない。次は『善悪の彼岸』を読むかな。『ツァラトゥストラ』に関しては、ドイツ語で内容を要約した動画がある。人形で物語を再現しており、なかなかおもしろい。

鷲と蛇の再現が何とも…

「神は死んだ」は Gott ist tot となるようだが、Gott に定冠詞がつかないのはなんで?とか、ist が現在形なのはなぜ?(「神は死んでいる」とはならないのか)、みたいにまだまだドイツ語の疑問が噴出してしまうあたり、ニーチェが読めるようになるのも10年は先だと感じる。

5、ドイツ語のまとめ

ドイツ語に関しては、これまでこの密度で勉強したことがなかったので、2月だけでレベルアップしたとは感じているが、全体的には不満が残っている。かっちりした語順の規則や系統の違う語彙のせいで、思うようには伸びないなというのが本当のところ。文法にしても語彙にしてももう少し集中的にやる必要がありそうで、ひたすらマテリアルに触れて場数を踏むというのが現在の最適解ではなさそうだ。ドイツ語で読んでみたい本もたくさんあるが、今やっても挫折必至なので、今しばらくは我慢して基礎を積み上げるしかないのかもしれない。網羅系の文法書を1回通読するのもありか。また、フランス語と同様、音にこだわりすぎているので、もう少し読む方にコミットしたい。

C ロシア語

先月はメインだったロシア語を今月は優先順位を落とした。3日に1回という頻度での勉強になってしまったため、そんなに勉強できたという感じはしない。やっていたことは主に三つ

  • 『ロシア語一日一善』で訳読

  • 『罪と罰』を読む

  • ドラマで音声学習

1、『ロシア語一日一善』で訳読

東洋書店から出ている『ロシア語一日一善』を自分で訳読していった。2月は第295編~第301編を訳した。

この取り組みも3カ月くらいやっているが、自分で訳文を作って訳注と比べてみると大抵一か所くらいは誤訳していて、完全に理解してなかったのだと思い知らされる。(例えば上の記事では ложно の解釈の仕方が致命的だった)逆に言えば、じっくり日本語にせずに読んでいる外国語の文をどれだけ誤解しているかと考えると、なかなか恐ろしい。その文を理解していることがその文を日本語にできるということを必ずしも意味しないが、その文を日本語にできないということはその文を理解していないという証拠になる。なんとなくでも理解できるレベルにある外国語の勉強において、自分が理解したつもりになっていないかの点検として訳読という勉強法は役に立つ。『ロシア語一日一善』は全部で500篇あるので、あと何年かかけてやりたい。

2、『罪と罰』を読む

去年の12月から読み始めたドストエフスキー『罪と罰』だが、ついに読了した。詳しくは別の記事に書いた。

ひとまず目的を達成できて今はほっとしている。

3、ドラマで音声学習

先月に引き続き、音声面での勉強としてロシアのドラマ Универ Новая Общага を一話ずつ見ている。2月は第20話~第25話を視聴した。

今月見たなかでは、第21話が飛びぬけておもしろかった。少し場面を解説してみたい。
新しいテレビのチャンネルを回していたクージャ(男)は偶然にもポルノ番組のところでリモコンが動かなくなってしまい、必死にチャンネルを変えようとボタンを連打する。その様子を後ろから目撃してしまったクリスチーナ(女)はクージャが共用スペースで自分を慰めているのだと勘違いする。これが発端。

クリスチーナは共有スペースでそのような行為をすることを止めるようクージャを説得にかかるが、鈍いクージャは意味が分からず、誤解は解けない。テーマがテーマだけにクリスチーナも遠まわしにしか言えず、さらなる誤解を生む展開になる。


クージャ:А о чём?(で何?)
クリスチーナ:О том, что ты одинок, но здесь живёшь не один, поэтому нужно как-то держать себя в руках.(あなたは今一人だけど、ここに住んでるのはあなただけじゃないの、だからどうにか、держать себя в руках してよね)
クリスチーナ:Блин, ну не в прямом, а в переносном смысле.(ちがう、そのままの意味じゃなくて、比喩的な意味でよ)
クージャ:Блин, я что-то очень не врубаюсь.(よく分かんないけど)

держать себя в руках がここでのミソで、これは「自制する」などの慣用表現なのだが、そのまま訳すと「自分自身を手のなかで押さえる」という意味になってしまい、クージャに例の行為を推奨しているようにも取れてしまう。だから、その後に не в прямом (直接的な意味じゃなくて)а в переносном смысле(比喩的な意味で)とクリスチーナは答えている。言うなれば「言葉の綾」といったところか。

この後も二人の勘違いは続いていって最後は誤解が解ける。コメディには時々ロシア語の表現を巧みに使った勘違いが出て来るから、内容はくだらないのにおもしろく思ってしまう。ドラマはドラマで毎回知らない表現ばかり出て来るから勉強になっている反面、ナンセンスすぎて教材としてどうかなと思うこともある。ロシア人の教師が聞いたら、こんな低俗なものを見るんじゃないと怒られそうだが、ドストエフスキーのような古典文学だけがロシア語でもないだろう。

4、その他

2月には未読だったドストエフスキーの長編小説『ステパンテコヴォ村とその住民たち』を読んだ。

ペテルブルグに住む語り部のところに故郷の叔父から手紙が届く。弁の立つ居候が家での権力を掌握し、傍若無人の限りを尽くしていると言う。急いでステパンチコヴォ村にもどった語り部は、陰謀渦巻く実家のゴタゴタに巻きこまれる。

『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』のように深遠な主題のある作品ではないが、極端すぎる登場人物を対決させて、奇想天外な会話を展開させるところがドストエフスキーらしい。相変わらず変人しか登場しないなと思いつつも、「いるよなこういう人」と思わせるのは流石というしかない。「そちらの悲劇はこちらの喜劇」という感じのユーモアが終始漂う。訳注が充実していて、ドストエフスキーが獄中で採取したロシアの民衆の言い回しや慣用句を書きとめた「シベリアノート」を踏まえた表現が参照してあって、ロシア語をやっている身からすると興味深かった。
『ステパンチコヴォ村とその住民たち』は、作品を朗読しているロシア人の youtuber がいて、これがとってもありがたかった。日本語で読んだ後に、ロシア語の朗読の方を再生して、原文の表現をぱぱっと確認したり、寝る前に日本語を読んで、眠くなってきたら原文の朗読を聞きながら就寝したりしていた。

5、ロシア語のまとめ

ロシア語は念願だった『罪と罰』が読破できたので、一応の目的は達成した。大げさでもなんでもなく「死ぬ前に読めてよかった」。これからロシア語の勉強していくかはちょっと分からない。今後そんなに時間が取れないかもしれないし、『罪と罰』ほど読みたい作品があるわけでもない。『ロシア語一日一善』や Универ については、ロシア語の勉強としては非常に充実しているので、それだけでも続けていこうかとは思っている。次に読むとしたらやっぱりドストエフスキーかな。今はほとんど引きこもり状態だし、『地下室の手記』とか原書で読んでみるといいかもしれない。

https://www.youtube.com/watch?v=zylPrGP2ce0

 

D 英語

英語は先月と変わらず3日に1回の頻度で勉強していて、やっていることも先月からの続きである『現代英文法講義』の写経と”Homo Zeus"の読書だった。"Homo Zeus" は途中で読み終わったので、今は David Graeber ”Bullshit Jobs: A Theory” を読んでいる。

1、現代英文法講義

『現代英文法講義』は第10章がちょうど終わったところ。今月のなかでは、過去完了形についての説明がおもしろかった。
例えば、p148に挙げている例文で

I saw him before he had seen me. 

という文があるのだが、I saw him 「私は彼を見た」という事態が before 「前に」とあるのだから、he had seen me 「彼が私を見た」という事態の方が先に起こっているはずではないかという疑問に対して説明がされている。このような節にある「had+過去分詞」を見ると「あ、大過去だな、主節よりも前に従属節の事態が起こったのだな」と考えてしまいがちだが、必ずしもそうではない。この例文のhad+過去分詞は「完了」の意味で基準となる視点が過去にあると考える必要がある。before he had seen me というのは「彼が私を見てしまう前に」という完了の意味で捉えなければならず、大過去ではない。だから全体の意味としては「彼が私を見るか見ないかのうちに私は彼を見た」のようになる。著者は過去完了形にはテンスとしての意味(こっちが大過去)とアスペクトの意味(完了の観念を強調)の二つの用法があると結論付ける。

深入りすると長くなってしまうのでこれ以上はやめとくが、自分が高校生のときにはたしてこの過去完了形というものをちゃんと理解していたのか不安になってくる。この本で英文法を学べば学ぶほど、実は適当な推論で今まで英語を読んできたのではないか、と思わずにはいられない。

2、Bullshit Jobs: A Theory

今月から読み始めた Bullshit Jobs: A Theory は『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』の原書だ。

この本は邦訳で一年くらい前に読んだのだが、抜群におもしろくて、今まで自分が仕事で悩んでいたことの本質が書かれているようにすら思えた。「意味のない仕事」というのは確実に存在する、存在するのにそれを「意味がない」と言うことができない構造になっている。意味のない仕事を意味があるかのように振る舞うのがもはや「仕事」ではないかとすら感じる。具体的な話をしよう。私はコロナ禍の際に飲食店で働いていたのだが、世の中がパンデミックになるやいなや業務がひとつ増えた。「30分ごとに指定の場所を消毒すること。消毒したら指定のチェックシートに〇をつける」消毒すべき場所は20か所くらいあり、営業時間を仮に18時間とすると1日に720回消毒する場所が増えたことになる。これに対してシフトの人数が増えたかといえばもちろんそんなことはない(生産性に直結しないところに人数を増やせるわけがない)。私は店を閉める時間の方に勤務することが多かったので、その日の営業を終えてこのチェックシートを確認すると見事に真っ白で、だれも気を留めた形跡がない。そもそも、人数を増やさずに業務だけ増やせばこうなるのは火を見るよりも明らかなのだが、「消毒できませんでした」というふうには絶対にできない。このチェックシートは絶対に然るべきところに〇がついていないといけない(抜き打ちでお偉いさんがこの手の書類のチェックに来る)。実際に消毒したかどうかはもはや問題ではない(それこそが問題のはずだが)。そして〇を書くのは店を閉める者の仕事。〇を書くだけなら5分くらいでできるのだが、そのたびになんともやるせない気になったものだ。このことをマネージャーレベルで問題にすると、「各時間帯の責任者が帰る前に書類をチェックしましょう」ということになった(そしてなかなか改善されなかった)のだが、ただの〇をつける行為にしかなっていないこの仕事の無意味さはだれも指摘しない。現場としては感染対策というちゃんとした理由になるが、こういうことを指令する上層部は「感染対策ちゃんとしてますよ」というイメージを世間に対して作ることが大事で、実際に感染対策をしているかどうかは二の次。そして人を増やさないで1日に720回の消毒を追加するという始めから無理でしかない仕事を現場はどうやったらこれができるのかをあたかも重大な問題でもあるかのようにミーティングの議題にしたりしている。もはやギャグだ(ただしツッコミはできない)。これがブルシット・ジョブのひとつで、書類穴埋め人(ボックス・ティッカー)と呼ばれる。ブルシット・ジョブという言葉を知らなかったら「仕事だから必要だ」「仕事だからやるんだ」「それが仕事ってもんだ」というふうに思考停止していた部分を「よくよく考えてみたらなくてもよくね?むしろないほうがいいんじゃね?」ということをこの本は主張している。考えてたら仕事というものはできないと常々思っていたが、その原因を提示されたように思った。
邦訳を読んだときはかなり難解に感じたのだが、原書の英語はそんなに難しいとも思わない。この一年、ブルシット・ジョブについて自分なりに考える機会も多かったので、テキストが読みやすくなっただけかもしれない。

E ポルトガル語

今月は一番勉強ができなかったポルトガル語だが、実感としては満足している。カジュアルな感じで気長に続けていけたらいいと思っているので3日に1回くらいがちょうどいいように思う。やっていたことは二つ

1、Fala Portugal でニュース読解

Fala Portugal というyoutubeのチャンネルがあり、ポルトガル国内のニュースを数分で流しているので、これを前々から教材にしている。今月は人工知能を使った詐欺が増えてるとか、賃上げデモなどのニュースを教材にした。

日本では「オレオレ詐欺」という名称でかつて呼ばれていたが、ポルトガルでは、Olá pai, Olá mãe と呼ばれているらしい(父さん母さん詐欺?)。最近は音声の加工もやりやすくなって詐欺のレベルも上がってきているとのこと。

公務員の抗議活動のニュース。ヨーロッパでは普通のことなのだろうが日本人からするとちょっと考えられない。このインタビューの中で、2 euros é uma vergonha という表現がちょっときに気にかかっていて、「(賃上げの額が)2ユーロというのは uma vergonha だ」と言っている。vergonha は「恥、恥辱」という意味なんだけど、不定冠詞の uma が付いてるのが気になる。「たった2ユーロの賃上げ額なんて恥だ」というのはちょっと文脈に合わないし、英語の shame に相当する語だと考えれば「残念だ」という意味にもなりそうだけど、なんかこうもっと「業腹だ」という雰囲気が伝わってくる。なかなかこういうところまでニュアンスをつかめないのが口惜しい。

2、Os Nossos Dias 

Os Nossos Dias はポルトガルの国営放送RTPが制作したドラマで、リスボンで日常生活を送る人々の交流を描く。1話40分程度の構成。

物語自体は何か起きそうで何も起きないことが多く、本当に日常を取っているみたいに思えるときがある。登場人物がかなり多く、老若男女にスポットがあたるので、どの世代の人にも楽しんでもらえるような意図がありそう。個人的には、ファドハウスを経営する一家の周りの話がおもしろい。音楽も洗練されていてどこか郷愁を誘うポルトガルの雰囲気とよくマッチしている。合間合間に映るリスボンの街並みを見ながら、「私が最後にポルトガルにいてからもう4年も経つのか」などと感傷に浸ることもあった。

F まとめ

2月は合計で150時間くらい勉強していて、1月よりけっこう少なくなってしまった。主に世界卓球のせいだが、親戚の家庭教師にも週3で行っていたのでそこで少し取られたかもしれない。12月の最初に左腕を骨折してからほとんど家にいる生活だったが、先日病院に行ったら一応骨はくっついて「完治」したらしい。実感としてはまだ重い物とかあまり持てない気がするのだが、3月はちょっと意識的にリハビリしようかと思う。どんなふうにこれから働こうかというのは悩んでいて、この間のリゾバみたいにがっつり住み込み系のバイトは左腕が完全に治ったと思うまでは遠慮して、単発のバイトをちょこちょこやるのがいいかなと考えている。3月も150時間くらいは語学に当てれたらいいなとは思うが、仕事を始めると厳しいかな。フランス語とドイツ語の基礎がようやく固まってきたので、なんとか継続したいと思っているが、そのためにはロシア語と英語とポルトガル語のどれかを休止するほかなさそうだ。取捨選択に迷う。働きだしたら note はまず書かない(働いてなくてもたいして書いてない)ので、働きだす前に note にしたいなと思っていたことを3月始めにやりたい。 



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