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爪と靴の14年戦争

おしゃれは足元から、なんて言うけど…。

私はヒールや可愛い靴が履けない。爪が痛くて、途中で歩けなくなるからだ。

皆さんは”陥入爪”という病気をご存知だろうか。

まず、足の親指の爪・両サイドが皮膚に食い込んで腫れる。そこから膿や血が出てくる。”肉芽”という非常にグロテスクなものが傷口から飛び出てくる(※画像検索しない方がいい)。

原因の多くは「生まれつきの足の形、爪の硬さ・幅」。ただし、足の爪をアーチ状に切りすぎて発症することもある(絶対にまっすぐ切るべし!)。

見た目だけでも最悪だが、一番つらいのは”鋭い痛み”。傷口に爪が刺さりっぱなしなので、少し親指を引っ掛けただけで激痛。血もなかなか止まらない。

非常にデリケートで「ストッキング・つま先を引っ張る靴下の刺激」「グロさ隠すための絆創膏による圧迫」すら耐えられない。

そんな足なので、重心がつま先に集中する上、つま先がキュッと細いヒールなんて絶対に無理。平たい靴でも「つま先が細いとダメ」なので、バレエシューズっぽいのもアウト。

女性にとって、それは絶望である。

爪 VS おしゃれな靴 

陥入爪を発症したのは、16歳のとき。高校生の象徴・ローファーによる「つま先の圧迫」がきっかけだった。

その後に花の大学デビューを飾るが、いつも可愛い靴が履けないことがネック。

女性靴の売り場を見てほしい。おしゃれな靴のほとんどはヒールか、つま先が細めだ。スニーカーすら、コンバースを代表とする可愛いものほど、つま先細め…。

どうやら、おしゃれ靴界隈では「シャープな先端が正義」らしい。

こうなってくると、ゴツめのスニーカーオープントゥのサンダルしか残らない。しかし、サンダルは夏しか履けない上、つま先が出るので「グロい指」が露出してしまう。

つまり、ゴツいの一択。

どんなにコーデが決まっても、足元で台無しに…。この悲しさ伝わりますよね、女性の皆さん。

しかし、普段はともかく場面によっては「どうしてもヒール」のときがある。就活、結婚式などフォーマルな服装をするとき。デートなど、どうしてもおしゃれがしたいとき。

攻略法はないので、根性で乗り切った。正真正銘、血みどろの戦い。

幸い、社会人になってからようやく専門の病院を見つけ、最新の治療法(ガター法という)を受けた。結果、症状は大幅に改善!

これで足元のおしゃれが楽しめる…はずだったが、知らされたのは残酷な事実だった。

爪の質は先天性。治った状態でも、つま先の細い靴を一日履けば爪が食い込み、再発してしまう。その際は病院で応急処置してもらったり、自分でテーピングをしたら治るのだが、いかんせん時間がかかる。

「ヒールを履かない。これが一番の治療法!」とのこと。

結局、治療してもおしゃれな靴は履けないのだ。それを知ったときは本当に落ち込んだ。女に生まれておしゃれを楽しめないなんて、悲しすぎる。

パートナーとの出会い

そこで、靴さがしの旅が始まった。条件は「一日中歩いても痛くなくて、コーディネートの邪魔をしない」「爪が悪化しない、足にやさしいデザイン」。

たまたま爪の治療中、ある本に紹介されていた靴が目に止まった。見たことのない不思議な形だが、つま先の幅が広い。皮っぽくてデニムにも合いそう。

それはダンスコというブランドの靴だった。

どこで売っているか調べたら、東京に直営店を発見。ちょうど旅行に行く予定だったので、勇気を出して行くことに。田舎者に「東京・青山」はおしゃコワ(注・おしゃれすぎて怖い)なので緊張した。

店員さんにフィッティングしてもらうと、「もしかして巻き爪ですか?」と聞かれた。陥入爪は巻き爪の一種。驚いたが、プロの目には”歩き方”でわかるらしい。

「巻き爪は、正しい歩き方を続ければ2ヶ月くらいで治るんです」

そう言いながら、店員さんは正しい歩き方を教えてくれた。かかとからまっすぐ下ろすようにして歩くお店の中で、時間をかけて何度も練習させてくれた。

当初、私が希望していたのは「プロフェッショナル」というダンスコの看板商品。

しかし、店員さんのおすすめは「サム」というストラップ付シューズだった。ストラップが足首を支えるので、つま先に負担が掛かりにくい。

冬でも履けるし、デニムにも合う。おまけに可愛い!フィッティングの結果、迷わず購入。

それ以降、歩き方にも気をつけて履いていたら、店員さんの言うとおり爪が快方に向かった。しかも一日まるっと歩いても、爪が無事どころか足が疲れない優秀さ

よし!今日から君は「この爪のパートナー」だ!

あの店員さんには、本当に感謝している。まさにプロフェッショナル!

爪と靴、和解する。

あの日から数年。

爪は徐々によくなっていき、滅多に発症しなくなった。大好きなデニムスタイルはもちろん、ダンスコの靴に合わせた別のスタイルも楽しめるようになった。

そして迎えた、30歳の誕生日。ついに「プロフェッショナル」を手に入れた。

しかも、彼氏からのプレゼント!

これが、無駄に出かけたくなるほど可愛い。歩きやすい。

彼と私の身長差があまりないので「彼の靴によっては、私の方が高くなる場合」があるが、気にしているのは彼だけなので問題なし!

かくして14年にわたる爪と靴の戦争は、ようやく収束を見せたのだった。

一番おしゃれがしたい年頃を、いつも「爪」が邪魔してきた。でも蓋を開けてみたら、ヒールじゃなくても素敵な靴はあるし、おしゃれも楽しめる。

しかも、「ヒールを履かないでほしい」という恋人と付き合い、靴をプレゼントしてもらうなんて、なんだか面白い偶然だ。

当然、これからも「この面倒くさい爪とデリケートなお付き合い」をする必要はある。でも、おそらく戦争にはならない。

ということで、爪さん。これからは仲良くしようね。


最後に…

陥入爪で悩んでいる人は、全国にたくさんいる。病院の待合室で、手術が3回目という人もいた。治療自体も痛くて、本当につらい。私もたくさんの病院を回ったし、色々な治療法を受けた。毎回、毎回、痛いだけで治らなくて泣いた。

足の形は一人ひとり、それぞれ違う。自分に合った治療法や、靴との出会いが大切だ。もちろん、正しい歩き方も!

そして、もっと「女性のヒール必須」が減るといい。仕事、就活、結婚式を「血を流しながら」歩くなんて、嫌だよね。

私たちにとっては人一倍、靴は大切なパートナー。爪に悩む誰もが、最高のパートナーに出会えますように。

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