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エッセイ:大ちゃんは○○である66

「大門さん、資格はお持ちになってます?」
「いえ、それが持ってないんです。
実はここに相談に来る前に何件か電話で問い合わせをしたんですけど、
無資格だってことを伝えるとどこも断られちゃったんですよ。」
僕は素直に答えた。
そんな僕の答えを聞き、
小村は『それはそうでしょうな』といったような表情を浮かべると、ゆっくりと話し始めた。
「まあ、現実はそういったところが多いでしょうね。
職業訓練に応募してみたらどうですか?
三ヶ月でヘルパー2級の資格を取得できますし、
その間は失業保険も出ますよ。」
「えっ、職業訓練?そんなのがあるんですか?
三ヶ月でとれるなら是非やってみたいです。
あっ、でも失業保険が出るっておっしゃいましたけど、資格取得にかかる費用っていうのはどれくらいなんでしょうか?」
失業保険が出たとしても、資格取得に費用がかかるとするなら正直厳しい。
すると小村は、僕の不安を払拭するような笑顔で
「かかりません、かかりません。
本来なら10万円前後の費用がかかりますけど、職業訓練で取得すれば無料で受講できますよ。」
と言ってくれた。
「是非受けさせて下さい!
申し込みはどうすればいいんですか?
締め切りは?どこに行けばいいんでしょうか?」
矢継ぎ早に質問を投げかける僕に、小村は両手を前に出し僕を制すように
「分かりました分かりました。
ゆっくり説明しますから、ちょっと待って下さいね。資料をとってきますから。」
と言って席を立った。
失業保険を受け取りながら、無料で資格が取得できる。
その時の僕にとっては夢のような話だった。

つづく

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