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音のおこぼれ。

家の窓の先には、小さな田畑がある。
先日稲刈りをされ、黄金色の稲穂が消え去った。

稲穂があった頃は、風の音が聞こえるだけでなく、
  揺られる稲穂で風がみえていた。

蛙の鳴き声、鳥の声、虫の音、いろいろな音が聞こえてくる。
音から季節を感じることができる。

稲刈り跡を見て、少し寂しくなった。
音が聞けなくなることに、寂しさを感じていた。

翌朝、新しい音が聞こえた。

「チュン、チュン、チュン」

雀たちのさえずりが、雀たちの飛ぶ音が、聞こえてきた。
一変して、賑やか朝がやってきた。

いや、雀だけではなく、鳩たちもやってくる。
鳩が大勢でやってくると、雀は追われるように飛立つ。

鳩の飛ぶ音は、濁った音。
雀の飛ぶ音は、涼やかな音。

雀たちはどこに居たのかわからない。
雀たちはどこから来たのかわからないけれど、
  雀たちが朝から稲刈りのおこぼれをついばんでいる。

何だか、気持ちが楽しくなるようなダンスしているようにみえる。

仲間と踊っていたかと思えば、一人だけ離れて羽を休めている。
その一人を見つけては、別の誰かが寄ってくる。
そして飛立つ、一緒に。

雀の動きを見ていて、ふと羨ましくなった。


人に無関心になり、縄張り争いが激しい、
  人間世界にいるからかもしれない。

私たち人間が忘れてしまった日常の世界観が、雀たちの姿からみえた。

おこぼれをもらっていたのは、雀ではなく、私たち人間だった。
自然から、私たち人間はおこぼれをもらっていた。
いつからか、人は傲慢になり、人は自然を強奪するようになった。
そして、人に、自然に何かを与えていると思い上がるようになった。

耳を澄ませるだけで、傾けるだけで、日常を感じられる。

日常にあふれる音を聴くことで、
  人間界は自然界とともに生きていることを。

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